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眠狂四郎
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Lulu
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ruruha
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第8話、読み終えたよ! 海良ちゃんが「帰りたい」って一瞬思っちゃうところ、すごくリアルで胸がぎゅっとなった…。でも緋奈ちゃんの絵、めっちゃ良かったな。自分のこと描いてもらうのって、しかも「綺麗」って言ってもらえるのって、人生で初めての特別な体験だよね。二人の距離がゆっくり縮まってく感じが、すごく温かくて、読んでてこっちまでほっこりした☺️
学校に行った日、友達ができた。まだちゃんと自己紹介もしていない女の子と、保健室で出会った。
あの子はきっと、勇気を出して言ってくれた。だから、今度は私が答える番。
「もう学校には行かないとか言うと思ってた」
「待ってくれる人ができたの」
今日はバイト三昧の鶴に学校まで送ってもらう。その道中、何やらニヤニヤしながら鶴がそう言ってきた。
「待ってくれる人って…まさか男か」
「んなわけないでしょ。同じ保健室登校の女の子」
「へー」
全く興味がなさそうだ。自分から聞いておいて、鶴はこういう所がよくある。
「じゃ、帰りは絵里と一緒なんだろ?」
「うん」
「なら心配はないな。いってらっしゃい」
「いってきます」
校門で鶴と別れて、私は保健室へ向かった。
「おはようございます」
返事はない。保健室の先生ー松村先生ーはどこかへ行っているようだ。あの女の子の姿もない。
一瞬。本当に一瞬だ。でも、確実に私は思ってしまった。
帰りたい。
「がんばる、がんばる…」
「あっ、あああ…あの!」
「ヒィッ!?」
後ろから声をかけられて驚き、声の主を見やる。すると、昨日の女の子だった。
「お、ぉはよ…」
「おはよう…」
「藤原さんおはよう。今日も来てくれたのね」
「あっ、松村先生…」
松村先生と少し雑談、という名の現状把握をする。よく眠れたか、ご飯は食べたか、調子はどうか。そんなテンプレートが右から左へと流れていく。
「じゃあ、こっちの部屋で過ごしててね」
「あ、はい」
案内された部屋へ入ると、既に女の子がノートを広げていた。いつもはここで自習をしているようだ。でも、ノートは真っ白で、ペンを持つ手は脱力しきっている。
「えっと…」
「な、名前…!私は朝野緋奈。あ、あぁあ…あなたの名前っは?」
途切れ途切れの喋り方に違和感を覚えながらも、私は応えた。
「私は藤原海良。海が良いで、海良」
「海良、素敵な名前だねっ」
堂々とそう言われたのは初めてだった。親以外に、私の名前を褒めてくれるような人はいなかった。
「緋奈もいい名前だよ。かっこいいし、可愛い」
「かっこいいし可愛い…?ぜ、全然違う、種類だよ?」
「緋奈って、たぶん漢字は緋色に奈良の奈だよね?」
緋奈が広げていたノートに、緋奈のペンを借りて書く。私の字を見て緋奈は頷いた。それを見て私は続けた。
「ほら、ひなは可愛いけど緋奈はかっこいい。両方あっていい名前だよ」
「すごい…すごいすごいっ!」
緋奈は目を輝かせてノートの字と私を見た。よっぽどすごいと思ったのか、しばらくの間字を見つめて頬を緩ませていた。
「海良の字、すっごく綺麗」
「え、私の字?」
「うん。ま、真っ直ぐで、揃ってて、でもなんだろ、ただ上手い、んじゃなくて…味があるって…いう、か?」
後半からモゴモゴとした緋奈はノートにうずくまっていた。何を言っているのかよくわからなくなったらしい。
「ありがとう。そんなふうに言ってくれるの、親以外いなかった」
「そ、そそ…っ、そうなんだ」
少しの沈黙。気まずいと思った。何か話題を繋げたい。
ふと、緋奈を見るとノートに何やら書き込んでいた。猫背になって、ノートを食べてしまいそうな距離で、ペンを走らせていた。
夢中になっている様子だったので、声はかけないことにした。今聞こえる音は、緋奈のペンがノートを走る音だけ。全く気まずくない。
時間が経って、緋奈は何かを書き終えたのか、丸めていた背筋を伸ばした。私は少し悩み、覗いていいか聞く。緋奈は快く首を縦に振る。
「これ…」
「えぇっと…その、海良を、描きたくなって…」
真っ白だった緋奈のノートには、さっき私が書いた『ひな』と『緋奈』、その隣に女の子が付け足されていた。ノートいっぱいに大きく描いて、存在感が増す。線の1本1本が綺麗で力強い。でも、どこか繊細さも感じる。そんな緋奈の絵に私は惹かれた。
「すごい…私こんな綺麗じゃないよ」
「ううん。すっごく、綺麗」
真っ直ぐ私を見た緋奈は、これだけは譲れないと言うように目線を一切ずらさなかった。
こんなふうに誰かに絵を描いてもらうのも、名前や容姿について褒めてもらえるのも、友達の中で初めてだ。それに、親に絵を描いてもらったことはない。これは、正真正銘、人生で初めてのことだ。
「すっごくうれしい。ありがとう」
「ど、どういたし…まして」
英会話の例文のような会話。それは、私たちだけの特別なものなのかもしれない。