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もろもろが落ち着いた頃。
屋敷の中は静かで、さっきまでの賑やかさが嘘みたいだった。
今は岩本さんと二人きり。
深澤は、少し迷ってから口を開く。
💜「……岩本さん」
💛「ん?」
💜「ここって、どういう組織なんですか?」
岩本は考えるように視線を外してから、穏やかに笑った。
💛「んー……まだ、知らなくていいかな」
💛「そのうち、ちゃんと知るときが来るから」
💜「……そうですか」
💜(……知らないほうが、いいこともあるよな)
沈黙を破るように、岩本が続けた。
💛「外に出るときは、薬を持ち歩くこと」
💛「必ず、ここの誰かと一緒に出かけること」
💜「……え?」
💛「この身体だとさ」
💛「いつ、誰に狙われてもおかしくないだろ?」
💜「……実際、襲われたしね…」
自嘲気味に言うと、岩本の表情が一瞬だけ曇る。
💛「……だから約束な」
💛「それと」
💛「身体、苦しくなったら……すぐ呼んで」
💜「……はい」
💛「ここでは、もう無理しなくていい」
そう言って、
岩本はそっと、深澤の頭に手を置いた。
優しく。
💜(……なに、これ)
俺は正直、これから
ひどい命令をされると思っていた。
こんなふうに触れられることも、
心配されることも――今まで、なかった。
戸惑いが、胸いっぱいに広がる。
💜(……調子、狂うんだけど)
その手を振り払うことはできなかった。
──────────────
ある日の夜中。
屋敷は静まり返っていた。
深澤は、布団の中で浅く息を繰り返す。
💜(やばいっ……苦しい……)
胸が締めつけられるようで、呼吸がうまくできない。
どうやら、薬が切れてしまったらしい。
今日は一段と症状が酷く、自分で起き上がることができない。
💜「はぁ…はぁ…」
💜(…岩本さん……)
迷う余裕はなかった。
身体は寝たまま、震える手で連絡を入れる。
ほどなくして、足音が近づいた。
💛「深澤!」
扉が開き、岩本が駆け込んでくる。
💛「大丈夫か!?……無理しなくていい、ほら」
落ち着いた声でそう言いながら、
岩本は手際よく薬と水を用意する。
💛「ゆっくりでいい。呼吸、俺に合わせて」
深澤は言われるまま、必死に息を整える。
💜(……ちゃんと、来てくれた)
しばらくして、胸の苦しさが少しずつ引いていく。
💛「……どうだ?」
💜「……はい」
💜「助かりました……」
力が抜け、そう答えると、
岩本はほっとしたように息をついた。
──────────────
しばらく岩本は俺のそばにいてくれた。
沈黙の中、深澤はぽつりと口を開く。
💜「……俺」
💜「今までの人生、正直……いいものじゃなかったです」
岩本は何も言わず、ただ聞いている。
💜「この身体のせいで、…」
💜「社会人になっても、仕事に支障が出て……」
💜「……そろそろ、限界でした」
言葉が震える。
💜「だから……」
💜「あなた達は、ある意味……救世主なのかもしれません」
岩本は、遮らなかった。否定もしなかった。
ただ、静かに隣に座っている。
💛「……ここにいれば、、」
低い、優しい声。
💛「美味しいものも、毎日食える」
💛「風呂も快適だし、一人部屋もある」
💛「……安心していい」
その言葉に、胸の奥がじんわり温かくなる。
💜(……安心、していいのか)
💜「ありがとう…ございます…」
次第に深澤の目は閉じていく。
その夜、
岩本は、深澤が眠るまでずっとそばで見守っていた。
つづく。