TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

愛しのフェイクディスタンス

一覧ページ

「愛しのフェイクディスタンス」のメインビジュアル

愛しのフェイクディスタンス

42 - 第42話*描くもの*3

♥

17

2025年06月08日

シェアするシェアする
報告する



***





「やー、お前さぁいいの?」


優奈を残し、車へ向かう途中唐突に琥太郎が言った。


「あ?」

「なぁにが、その気にならないぞ。だよ。いやいや、疲れて帰ってよ、あんな可愛い子が家にいたら無理じゃね? 俺ならそっこーでヤるけど」

「地獄耳か」


文句をつけたが、牽制の意を込めて聞かせたのだから当たり前だ。

琥太郎はいい友人だが、優奈にとっての”いい男”にはならない。


「……お前、脳内で不埒に妄想した優奈をすぐに忘れろ」

「怖……、つーか俺、お前の女にガッつくほど困ってねぇから」

「誰が俺の女だ、そんなものと同じにするな。いいか? あいつを軽々しく話題にするなよ。次は殺してやる」

「やだぁ、怖い、まーくん」

「気持ちの悪い呼び方をするな」


琥太郎のおもちゃになっている場合ではない。

雅人は琥太郎が運転して来た社用車へと乗り込んだ。

そのまま深く座り座席のシートを倒す。緩めていたネクタイを締め直していると。


「なんつーか、歴史が根深そうだけどよ。あんなに調べ尽くしてどーゆうつもり」

「……は?」

「いや、聞きゃ素直に答えてくれそうじゃん、あの子」

「優奈と話す前に、どう行動するか考えたかったんだ」


(の、わりに、冷静じゃなかったけどな)


「んで、結果どーしたいわけ?」


琥太郎がエンジンをかけつつ、雅人へと投げかけた疑問。

何も答えなかったら答えなかったで、面白おかしく話題にされるのならそっちの方が気分が悪い。そう判断した雅人は、正直に、しかし深くは言葉にせずに返す。


「見ないフリして後悔するんなら我慢比べで勝ってやろうと思ってるだけだ」

「何だそりゃ」

「優奈に害のない確かな男、それとなく近づけるかな……言っておくがお前はないぞ」


自分が発した言葉が、首をギリギリと締め付けていくのがわかる。わかったところで、価値観を変えることなど今更できはしないのに。


「へー、見物しといてやるよ」


そう言って鼻で笑った琥太郎がようやく車を発進させ、空高くにある太陽の光がこれでもかと雅人を照らす。


眩く焦がれても、決して手の届かないもの。

触れることのできないもの。

優奈こそが、そうであればよかったのに。


愛しのフェイクディスタンス

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

17

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚