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榎本くもり
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コメント
1件
うわ、重い展開ですね……。 「犯罪者の皆さん」って歓迎されたあの瞬間、背筋が凍るようでした。防犯カメラの映像で丸裸にされて、逃げようとした人が即座に連れ去られる——逃げ場のなさが徹底的に描かれていて、息が詰まりました。特に「家族構成も」「勤務先も」「学校も」「すべて」の畳みかけが怖い。 でも、そんな絶望のなかで42番の女の子が**腕時計の裏側に刻んだ『7・03』**を見せてきた。あれ、間違いなく脱出の鍵になる数字ですよね。彼女がまだ諦めていない——その一点が、この回に希望の灯を残してくれました。次が気になって仕方ないです。
「歓迎します」
「犯罪者の皆さん」
男の声が工場中に響いた。
誰も動かない。
俺も。
身体が固まっていた。
犯罪者?
何を言ってる。
俺は何もしてない。
ただ荷物を運んで。
見張りをして。
言われた通り動いただけだ。
男は俺たちを見下ろしたまま笑う。
「自分は無実だと思っている人もいるでしょう」
その一言に。
全員が息をのんだ。
まるで心を読まれたみたいだった。
「では、見せましょう」
男が指を鳴らす。
モニターが点灯した。
映し出されたのは防犯カメラの映像だった。
駅前。
住宅街。
コインロッカー。
今まで俺たちがいた場所ばかり。
映像が切り替わる。
俺がロッカーから紙袋を取り出している。
別の映像。
住宅街で家を見張っている。
別の映像。
倉庫へ入る姿。
全部。
全部撮られていた。
「これらの映像は、すでに複数の場所へ保管されています」
男は淡々と言う。
「警察が見れば、皆さんはどう見えるでしょう」
誰も答えない。
答えなんて分かっていた。
「闇バイトの実行犯」
その言葉が胸に突き刺さる。
俺は何も言い返せなかった。
男は続ける。
「もちろん、皆さんの本名も住所も把握しています」
「家族構成も」
「勤務先も」
「学校も」
「すべて」
俺は母さんの顔を思い浮かべた。
逃げられない。
そういうことか。
「ですが」
男は少しだけ笑った。
「安心してください」
またその言葉だ。
安心なんて一つもできない。
「ルールを守る限り、皆さんの日常は守られます」
その時だった。
一人の参加者が叫んだ。
「ふざけるな!」
二十歳くらいの男だった。
「俺は帰る!」
男は出口へ向かって走り出す。
あと数メートル。
出口に手が届く。
その瞬間。
外から数人の男が入ってきた。
黒い服。
無言。
逃げた参加者を取り囲む。
「離せ!」
男は暴れる。
しかし、相手は何も言わない。
抵抗する男はそのまま外へ連れ出された。
工場の中は静まり返る。
数秒後。
外から車のドアが閉まる音だけが聞こえた。
それ以外は何もない。
男がどうなったのか。
誰にも分からない。
二階の男は静かに口を開く。
「質問はありますか」
誰も手を挙げない。
誰も声を出さない。
恐怖だけがその場を支配していた。
その時だった。
俺の視界の端で。
42番の女の子が。
ほんの一瞬だけ。
自分の腕時計を見せた。
文字盤の裏側。
そこに小さく刻まれていた数字。
**『7・03』**
意味は分からない。
でも。
女の子は確かに俺だけに見せた。
何かの合図だ。
俺は確信した。
この人は。
まだ諦めていない。
(第二十話へ続く)