真梨奈とそんなことがあった、翌日の夜──
突然に政宗医師に呼び出されて、
「今夜、私の部屋に泊まりなさい」
診療ルーム内で、そう命令するかのように告げられた。
「……お断りします」
首を振って立ち尽くす私を見つめ、
「ほぉ~……」
と、政宗医師が口角を引き上げ、薄笑いを作る。
「あなたに、断る権利などがあると思われているのですか?」
またしても脅すように聞こえる台詞に、
「それなら辞めさせるとでも、また言うんですか」
かつてのことを思い出し、苛立ちにまかせて訊き返した。
「……言いませんよ、そんなことは……」
彼がじりじりと革靴の爪先で間を詰めるようにして、至近距離にまで私に迫ると、
「君は、私を欲しくはないのですか?」
ストレートにも誘いかけてきた。
「……欲しいわけなんか……」
「……ないのですか?」
私の声に被せるようにも言い、唇が今にも触れそうな程近くに顔を寄せ、
「私に抱かれたいとも、思わないと……?」
付けている香水が混じるような、甘やかな吐息を吹きかけると、
「私のものには、なりたくないのですか?」
政宗医師は言葉を重ね、畳みかけるように囁きかけた──。
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