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???「さてと、ここにこの資料を入れて……よし。これで良いはず。」???「助かったわ。橙。アタシ一人じゃこの山のような資料片付けできなかったし。」


ここは、冥府。資料室で話し合っているのは、「不山橙」と「桃時」である。


桃時「ジャン負けで全部押し付けてきやがって……あの同僚共……」

橙「まぁまぁ、ジャンケンなら仕方ないですよ。」

桃時「でも普通もっと遠慮するでしょ!!あいつら限度っていうのを分かってない!!」


二人は談笑しながら、資料室を出て行く。

すると……


???「なぁお前ら!雨花知らないか?」


目の前にいるのは「化茶」だった。


桃時「何勝手に入ってきてんのよ。部外者は立ち入り禁止よ!」

化茶「うるせぇよ。桃女」

桃時「ちょっと誰が桃女よ!」

橙「雨花さんは今会議中です。分かったら早く帰って下さい。さぁ早く!」


二人の対応の仕方に化茶は腹が立った。そして「ある事」を思いつく。

その「ある事」によって大きな悲劇を生むことになるとは、この二人はまだ知らなかった。


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化茶「まぁまぁそう言わず〜アタイ良いもの持ってきたんだ〜それをあげるからさ!ね?」

橙「本当に大丈夫なんですか?」

桃時「何する気よ」

化茶「はい!では行ってらっしゃい!トォーッ!」


化茶は丸い何かを床に叩きつけた。そして、そこから煙が出ている。


桃時「何な……の……なんか頭がクラクラする……」

橙「私も……です……化茶……さん……あなた……なに……したんです?」

化茶「それは帰ってきたら教えてあげる〜♡」


化茶が撒いた煙玉はもくもくと広がり、二人を包んで行った。


化茶「へっざまぁ」


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橙「…………ん?ここは……?」

桃時「……何なの……ここ?」


二人がいる場所は、真っ暗だった。向こう側には壁、そしてベッドが置かれていた。


橙「あの壁……」

桃時「段々とここがどこなのか分かってきたわ。」


その壁には一面「わたしはクズすぎるクズ」と書かれた紙が貼ってあった。


橙「あの筆跡は間違いなく雨花さんです……!」

桃時「あいつの煙玉。何なのか具体的には分からないけど、ここはきっと……」


「「雨花の心の中だと想うわ」」


橙「雨花さんの心の中……ベッドとこの壁。雨花さんにとって大切なものなのでしょうか?」

桃時「色々確かめるために、物のある方に行きたいけど、透明の板みたいなものがあってあっちへ行けないわ。」

橙「ん?何か物音と声がしますよ?」


透明の壁の向こう側から声と音がする。その正体は……


橙「雨花さん……!」


雨花は、中学生くらいの見た目になった。それから立って俯いている。女性の声で、ずっと雨花の存在や人格を否定する声がする。そして……


「「お前さえいなければあいつと関わらずに済む」」


橙・桃時「…………」


二人はしばらく黙る。


桃時「この声はきっと雨花の母親ね」

橙「「あいつ」って……きっと雨花さんの父親のことですね。前に兎白さんから雨花さんのご両親は不仲だったと聴いたことがあります。」


今度は、ベッドではなく、丸い机があって、机の後ろにテレビが置かれた場面になった。そして何やら言い争っている声が聴こえる。


橙「雨花さんずっと俯いている……」

桃時「父親と母親が言い争っているのね。それがどれだけ子供の負担になるか……しかも、雨花の進路のことで。父親は雨花の進路を全否定してるわね。しかも父親が全部決めようとしてるじゃない。……雨花の進路なのに。」


また変わり、雨花は高校生の姿になった。そして、父親と電話している。その内容は雨花が留年して高校を続けるか、辞めるかという話になった。そして、精神科に入院していたため、留年してしまったということになったということが分かった。雨花は、最初は答えていた。「もう勉強をできる状態じゃないこと」「高校には行こうとしたけど肩や頭が重くなって行けないこと」など精神的に既にとっくの昔から参っていたこと。それらを言った。しかし、父親はそれらを否定する。もう既に暗かった目がますます暗くなっていく。そして、電話を母親に渡し、父親はこう言った。


「「あいつが死んだら責任を取る」」


その瞬間、雨花の目には何も映らなくなった。


橙「あめ……か……さん」

桃時「……ちっ…………もうなんなの……あの父親」


雨花さんは、

雨花は、


ずっとこの息継ぎができない環境で生きてきたんだ。


相変わらずあの壁はここに置かれ続ける。


橙「雨花さんにとってあの壁は支えだったのかもしれません。」

桃時「どういうこと?」


橙は一呼吸入れると、話し始めた。


橙「あの文字によって自分を罰することができている。つまり、この世界で過ごすことが許される最後の柱だったんです。だからどの場面でもあの壁だけはなくならない。」

桃時「なるほど……」


今度は、壁と……学校の机、そして椅子が置かれた場面になった。その椅子に座っているのは雨花だった。


橙「あ、雨花さんの子供の姿……!」

桃時「小学二年生くらいかしら?」


二人がみている雨花は、学校の椅子に座った。そして、足を椅子から出している。


桃時「あれ何してるの?」

橙「おそらくあれは、足を引っ掛けようとしているみたいですね。」

桃時「前に兎白が言ってた奴ね。」


雨花以外は誰もみえないが、雨花は確かに足を引っ掛けようとしている。その他にも人をずっとくすぐって泣かせてしまったり、頭を強く叩いたりするなど、人として最低なことをいくつもやっている姿が見受けられた。


桃時「こういうことをし続けて、後悔して、自分を適度に責めたらもう終わり……で、もう充分だと想うけど?」

橙「えぇ。あんな壁にしてしまうぐらい自分を責めたんです。充分すぎるくらいだと想います。」


次は、また学校の机と椅子が出てきており、少し成長して、制服を着た中学生の雨花が出てきた。そして楽しそうに誰か人をずっと変なあだ名で呼んでいる。


桃時「これもきっと嫌がられたんじゃない?」

橙「はい……おそらく……」


場面が変わり、今度はずっと変なあだ名である子を呼び続けていたことを怒られてしまった場面に変わった。


橙「あの雨花さん……とても動揺してますね……」

桃時「あの子、その子のことを傷つけてしまったことで頭がいっぱいになって泣き出しそうね。」


そして、案の定、雨花は泣いた。


橙・桃時「…………」


そして、雨花は何かを書き始めている。

遠いはずなのに二人はその文字を読むことが出来た。その内容は……


『わたしは人を殺そうと想ったことがある。こんなわたしでも友達でいてくれる?』


橙「え」

桃時「…………」


その瞬間、透明な壁の向こう側が崩壊していく。雨花もドロドロになって消えていく。それと同時に、二人は上の方に引っ張られ、意識を失った。


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橙「…………はっ!」

桃時「頭いったっ……!!」

化茶「おかえり〜どうだった?」

桃時「ちょっとあんたどういうこと?」


桃時は化茶の胸ぐらを掴む。


桃時「アタシたちはあの子の口から過去を話して欲しかった!!!!何でこんなことするのよ!!!!せっかく約束したのに……!!これじゃああの子は……」

橙「雨花さんの秘密。隠したかったこと。こんな風に知りたく……なかった……」


パサパサパサパサ


橙・桃時「!」


資料を落とした音の方向には、「紫雲雨花」がいた。


雨花「どういう……こと……何で…………秘密って……二人はもう知ってるの……?」

橙・桃時「…………」

雨花「……はは。……あはははは!!!!そっかぁ知られちゃったかぁ!!!!じゃあ……」


「「これで邪魔者がいなくなったね」」


橙「雨花さん……!待っ……」


雨花は瞬間移動で消えてしまった。


橙「私は雨花さんを追いかけます。桃時さんはそのバカ猫を懲らしめてて下さい!!!!」

桃時「分かったわ」

化茶「お前らがいけないんだよ〜アタイを邪険に扱うから〜」

桃時「じゃあアタシたちだけ攻撃すれば良かったじゃない。どうして……どうして……何の関係もない雨花が傷つかないといけないのよ!!!!」

化茶「そんなのアタイのひ〜まつ〜ぶし〜」

桃時「……最後に一つきくわ。アタシたちに使ったあの煙玉は何?」

化茶「あれか?あれは彼岸道具の一つで、「真の実り煙天」(まことのみのりえんてん)って奴で、対象の者が一番知りたがってることを暴いてくれる代物なんだにゃあ〜段階に分けて知られても良いことから始まって一番知られたくないことが最後に来る。もちろん暴かれる本人の意思に関係なく〜」

桃時「そう。もういいわ。」


桃時「橙直伝・弾丸パンチプラス妖術!」


化茶「ぐはっ!な、何だ何だ!」

桃時「あんたはアタシの大切な人をどん底に突き落とした。落とし前付けさせてもらうわよ。」

化茶「も、もしかして……また……アタイ怒らせちゃいけない人怒らせた……?」

桃時「覚悟してもらうわよ」

化茶「ひ、ひぃにゃあ〜〜!!!!」


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橙「(あれだけ動揺してるならそこまで遠くにはいけてないはず……あ!)」


走っていく雨花の姿を確認した。


橙「ショートカットしよう。この道から回れば先回りできるはず……!」


そして橙は、雨花の前に現れることができた。

雨花が後ろに戻ろうとしたので、腕を掴みとる。


橙「あ、雨花さん!私!」

雨花「ごめん。もういいや、もういいから。」

橙「話を聴いて下さい!お願いですから!」


雨花は橙の腕を薙ぎ払う。


雨花「分かってるよ。橙ちゃん。気まずいとか引いてるとかじゃなくて、橙ちゃんたちは単に驚いただけで、わたしのこともまだちゃんと大切に想ってくれてるって。でもね……ごめん。無理なんだ。わたしは”このこと”を受け入れて貰えるっていう事実が堪らなく嫌なの。受け止めてもらっても。わたしがしたことが間違いなのは変わらなくて、その間違いを受け止めて貰えたら「間違えた」ってことの証明になる。分かってるんだよ。自業自得だって。そんなことをしたわたしが一番悪いんだって。でも、わたしはわたし自身を作るものが間違いだって想いたく……なくて……少しで良いから正しいものが欲しくて……今までもこれからも自分が間違いだって想いたくなくて、考えたくなくて、……私は……自分を……」


「「責められたくない正当化したいだけの何にも無い奴なんだよ!!!!」」


雨花「それに……それに……!わたしは自分が受け入れてもらえてる……その優しさが……そんな優しさを貰ってる自分が……堪らなく許せない……」


「「ダメなんだ……もう……こんなクズにすらなれない奴……無理なんだ」」


橙「雨花さん……」

雨花「だから……ごめん……受け止めてもらわなくても大丈夫なんだ。本当に……ごめん。」

橙「あ、あめ……か……さん」



「「雨花さん!!!!」」



雨花は走っていった。


橙「(追いかけなくちゃ!……って頭では分かっていても……一体どんな言葉をかけたら良いんでしょうか……)」


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橙「…………」

桃時「あんた……雨花はいないの?」


冥府内のベンチに項垂れていたのは橙だった。そこへ化茶をしばき回した後、桃時が来た。


橙「雨花さん。今までの自分が全て間違いで、正しいものなんてないって言ってて……」

桃時「まためんどくさいこと言ってるのね……はぁ……」

橙「桃時さんなら何て言うのが正解なのか分かりましたか?」

桃時「はぁ…………あのね。橙。」

橙「は、はい」


桃時は深呼吸すると、大声でこう言い放った。


「「ばっっっっっっっっかじゃないの!!!!」」


橙「!」


桃時はぜぇぜぇ言いながら、橙に話し始める。


桃時「あのねぇ!正しいとか間違いとかそんなもんにこだわってちゃ自分がもったいないわよ!!生き方に正しいも間違いもない!!!!自分が「良いな」「気になるな」って想ったものを選択すれば良いの!!もしそれで人を傷つけてしまったなら傷つけた想い出ごと抱きしめて、それも自分を構成する上で必要なものとして受け入れて良いの。傷つけて自責するんじゃなくて。だって傷つけた想い出があったからもっと大切な人を大切にしたいっていう気持ちに気づけることもあるじゃない!!あいつもったいない……生き方がクソ真面目すぎる。それにもし正しいか間違いか決めなくちゃいけないなら自分の選んだものでしょ?それがあいつにとってのその時々の”今”の最適解だって想ったんでしょ?自分が正しいと想ったからそれを選んだんじゃないの?自分にとっての「最適解」で良いじゃない。どんな選択を取ったって絶対後悔はするわ。それに自分が本来選ぶはずなのに他の人に選択権を取られることだってある。でも自分が選んだ「最適解」なら後悔は少しは少なくなる。自分の選んだ選択を後悔して、また選んで、後悔して、それを繰り返していけば良いのよ。それが人生の基本筋なんじゃないかとアタシは想うわよ。雨花が人を傷つけてしまった。そして雨花はそれを後悔してる。ちゃんと真っ当な生き方してるじゃないの。あいつの今までの人生は至極真っ当だと想う。アタシは。」


「だ〜か〜ら〜」と橙に詰め寄って、ほっぺを引っ掴む。


桃時「あんたが「正しい」とか「間違い」とかそんなくだらないものにこだわってたら、雨花はどんどん堕ちていく。アタシたちがしっかりしないと!!!!」

橙「ひょっとひょうじふぁんいふぁいでふ(ちょっと桃時さん痛いです)」


桃時は橙の頬から手を離すと、代わりにこう言った。


桃時「アタシたちは目的が一緒でしょ?忘れちゃった?」

橙「!、いえ!忘れてません!!一緒に雨花さんと話しましょう!」


果たして、橙と桃時は雨花を見つけ出し、雨花を────

                                                                   【続く】

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