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守近が、帳《とばり》の内へ消えたとたん、皆の頬を、冷えた空気が伝って行った。


そして、ゆらりと、房《へや》が揺れ、見える景気が様変わりし始め、守恵子《もりえこ》の、房へと戻った。


「ちょっと、結局、お二人の、馴れ初めを見せたかったってこと?!」


上野が、晴康《はるやす》に食ってかかる。


「いえ、そうゆう事では、なんと言いますか、行き掛かり上。徳子《なりこ》様が、あの様になられて……」


「そうだわ!母上!」


「ああ、そうだ!晴康!母上は!」


「あ!そうでした!私、様子を伺って参ります!」


立ち上がる上野を、晴康が、制した。


「上野様、お忘れですか?あなた様の衣に染み付いた香りのせいで、徳子様は……」


「あーー!で、でも、私は、何も!」


「上野、お前が悪いんじゃない。むしろ、よくやってくれたよ」


泣きそうになりながら、慌てる上野に、守満《もりみつ》が、労いの言葉をかけた。とたんに、上野は、ポロポロと涙を流し、わーんと、声をあげて泣き出した。


「晴康?!」


本来の、事情を知らない常春《つねはる》が、何事かと、晴康に責めよった。


「あら、今度は、晴康様が、悪者扱い?ふふふ、あら、ふふふふ、ん?ふふふふふ」


守恵子《もりえこ》が、不自然に、笑いだす。しかし、自身でそれに気がついているようで、どうにかしてくれと、皆に、訴えるような視線を送っている。


「……そういえば、守恵子様も、上野様の、衣を……」


「そうだった!守恵子も、匂う、匂わないと。挙げ句の果てに、袖に、鼻を近づけて……」


「お待ちください!私も、その時、妹に、近づきましたが、何事も起こっておりません!」


確かに。常春《つねはる》も、上野に、近づいていた。ただ……。


「常春は、上野の衣は、嗅いでいないだろ?近づいただけだ」


守満が、続ける。


「あの時、上野の匂いに気がついたのは、母上だ。それに、のせられ、守恵子は、上野の袖に鼻を近づけた。母上は、香りに敏感だから、近づかなくとも、気づいた時点で、なのだろう。守恵子は、鼻を近づけている訳だから、しっかりと、匂いを嗅いでいる。そして……」


言って、守満は、房《へや》の片隅に目をやった。


「ほら、タマも、上野の、袖にしがみついていた……。結局、あの、ざま、だ。」


「あら、やだ、ふふふふふ、ふふふふ、タマ、ふふふふ」


守恵子は、袖で、口元を押さえ、必死に、不自然な笑いを止めようといている。


タマは、ブースかと大きな寝息を立てながら、上向きに腹を見せた姿で、転がっていた。


「なっ?常春、上野の衣を嗅いだものしか、こうなりえないんだよ」


「えー、じゃあ、やっぱり、私が!!」


上野は、さらに、大泣きした。


「あー、ということは、妹は、着替えた方が良いということになりますね」


「ふふふ、下手に動くと、その匂いが、ふふふふ広がってふふふふふふ、皆が、おかしくなっちゃいそうね!ふふふふ!」


あー、止めてください!と、守恵子は、自身のおかしな口調に困惑している。


「あーーん!ならば、私、どうすればー!」


上野の涙は止まらない。


「しばらく、縁に座っていなさい。風通しの良いところにいれば、その程度の匂いなら、すぐ消えますよ」


鈴を転がした様な、いつもの徳子《なりこ》の声がした。

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