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昨日の勇斗くんとのやり取りがずっと頭から離れない。
目を閉じても、会話の断片ばかりが浮かんでくる。
自分が言った言葉も、勇斗くんの表情も、嫌という程はっきり思い出せるのに。
どこで間違えたかだけが、分からなかった。
何気ない言葉、いつものやり取りだったはずなのに、気が付いた頃には空気が冷えていた。
ただ、確実に怒らせてしまった。
それだけは、分かっていた。
謝罪文を送ったあとも、何度も何度も画面を確認した。
通知が来る度期待して、違う物だと分かると気分が底まで沈んでった。
既読もつかないままだった。
あの日の自分のことを思い出す。
久しぶりに話せて、舞い上がっていた。
自分が気付かないところで、勇斗くんの気に障ることをしてしまったのかもしれない。
今までみたいに隣に立てて、顔を見れて嬉しかったのに。
文化祭後の忙しなさで、何となく距離が出来てしまったけれど、
前みたいにふざけ合って、からかって欲しかった。
そう思ってたのに、勇斗くんは違ったのかもしれない。
楽しかった思い出も、全部自分の勘違いだったのだろうか。
実際に、閉会式の時だって女の子と見ていた。
最初は勇斗くんを見つけられて、意図せず口角が上がってしまった。
でも、女の子達に挟まれていることを認識して、心がチクッとした。
あの時からもう、違ったのかもしれない。
そんな思いと共に、スマホを握りしめたまま夜に溶けていった。
カーテンの隙間から、憎たらしい程明るい光が差し込んでくる。
朝になっても、返信はなかった。
画面を見ないふりをして、鞄にしまう。
何事も無かったかのように装って、家を出た。
教室に入っても、現実感がない。
友達の笑い声も、先生の話も、全てが遠くに聞こえた。
気が付けば授業が終わっていて、手元のノートは真っ白だった。
一日がやけに長くて、だけど一瞬で。
いつの間にか放課後になっていた。
帰る支度をしようと鞄に手を伸ばした時、後ろから声をかけられる。
「………大丈夫?」
振り返ると、眉尻を下げて心配そうな顔をした太ちゃんと目が合った。
「だい、……ちゃん……」
「今日ずっと元気なかった。なんかあった?俺で良ければ話聞くで。」
誤魔化そうとして、平気な顔をしようとする。
でも、上手く笑えなかった。
もう、一人で抱えるのはしんどかった。
太ちゃんになら話してもいいかもしれない。そう思った。
「……勇斗くんと、………喧嘩しちゃって……」
「えっ……なんで?」
そう聞かれて、言葉が詰まる。
理由を説明しようにも、何が悪かったのか分からない。
思い出せるのは、怒った顔と勇斗くんの背中だけ。
「なんか……怒らせちゃって………」
曖昧な言葉しか出てこない。
「謝ったんだけど…………返信、無くて……」
視線を落としたまま、話し続ける。
「何がダメだったのか……分からなくて………でも、でもっ……」
少し間が空いて、心をぐちゃぐちゃにしていたものが、涙と共にぽろっと零れた。
「……………このままっ、疎遠になるのだけは……いや、なんだ……」
『好きだから。』そんな言葉も喉から出かかってしまう。
ただの同級生の一人でも構わない。勇斗くんにだけは、どうしても嫌われたくなかった。
太ちゃんは少しだけ黙ってから、小さく頷く。
そして、ぱん、と手を叩いた。
「じゃあさ、直接謝りに行こ。」
真っ直ぐな目で言われて、体が硬直する。
勇斗くんに会いたい。ちゃんと話したい。
でも、もしまた怒らせてしまったら。
もう会いたくないと思われてしまったら。
そんなの絶対に、生きていけない。
悪い事ばかり考えてしまい、足が鉛のように重くなる。
勇気が出ず、ズボンをぎゅっと握りしめたまま深く俯いてしまった。
「……今はっ……むり、……」
「ダメ。」
俺の言葉を遮るように、太ちゃんは即答した。
次の瞬間、腕を掴まれる。
「こういうのは、一秒でも早い方がいいの!」
抵抗する間もなく立たされて、教室の外へ引っ張られる。
「今逃げたら絶対後悔するって。授業終わったばっかだから、勇斗まだ教室いるはず。」
半ば強引に廊下へ連れ出され、心臓がはち切れそうな程脈打っていた。
怖いくせに、少しだけ安心している自分もいた。
だって、一人じゃ絶対行けなかったから。
太ちゃんに引きずられながら、勇斗くんのクラスに到着する。
ドアの隙間から、勇斗くんの姿が見えた。
逃げ出してしまいそうになり、思わず後ろへ下がってしまいそうになる。
しかし、太ちゃんに強く掴まれた腕がそれを許してくれなかった。
「逃げたらあかんで。今、呼んできてあげるから。」
止める間もなく、太ちゃんは教室へと入って行く。
やっと腕が解放されたのに、逃げることができない。
胸が苦しくて、唇を噛んだまま、また下を向いてしまった。
「呼んできたよ。」
太ちゃんの声で我に返る。
ゆっくりと顔を上げると、そこには見慣れたはずの姿があった。
目があった瞬間、いつもの 優しくて柔らかい表情じゃないことに気付いた。
冷たい視線が、向けられていた。
「………話って何?」
気まずい沈黙を破ったのは、勇斗くんの方だった。
周りにはまだ沢山生徒がいて、ここで話すことは出来ない。
「ここじゃ……話せないからさ、」
躊躇いながらも、そっと口を開く。
「………どっか、行こ。」
コメント
4件
早く続きが見たいです😭
