テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「居候はいつから?」
『明日からだ』
……どうしてこの人がやることは、いつもとうとつで突拍子もないんだろう。
『家に帰ったら荷物の支度しておけよ。運送屋には頼んでおいたから。
白井さんに渡す手土産も買っておいた』
「そこまで手回ししてるんなら、まず息子に話せよ」
『いきなり言わないと、皐月はいじけるだろう。急で悪いが、これからすぐ行かなきゃならないんだ』
「……いじけるって、俺もう子供じゃないんだけど」
『大人は子供じゃない、だなんて言わないぞ』
その正論を打ち負かす次の言葉を探っている間に、信号が青に変わった。
信号を渡ろうと、足を前へ動かす。
『皐月』
「なに」
『いや、居候先のことなんだが、実は、お前と同い年のおん……』
と、父親がそこまで言いかけたところで、俺の足は止まった。
「……………?」
右足に何かがつかまっている。
なんだ、と思って見てみると。
「…………」
「…………」
ガキ、がいた。
この近くにいる幼稚園の制服を着た男の子が、なぜか俺の制服のズボンをつかんでいる。