あれから…2ヶ月もうすぐ夏だ。嬉しいことに今日もまた、客で賑わっている。
領地は少しづつ発展していっている。きっかけのほとんどはここ。喫茶店では相談所でもあるのでその相談内容を元に領地を発展させている。
「環境を変えることで領民達の雰囲気も変わったな」
「そうですね」
「…本当は店の為じゃないだろう」
「どうしてですか。利益は大事ですよ」
「特大なサービスがあるのにな」
「まぁ…残っている領民のほとんどが広場より下 の方で過ごしています。環境は最悪でした。家はボロボロで瘴気があります。ですが、ここは清潔感があるので環境がいいです。ちょっとしたおまけですよ。」
「そうか…」
「何ニヤついているのですか」
「なんでもない」
私は、自分の為にやったのだからそこまでニヤつく必要もないだろう
「ですが、まだ問題と改善すべき事が多いです」
「やはり…食料か」
「そうですね…今のところ改善したので何とかなるようです」
「そういえば、畑が増えていたな」
「えぇ作物のことで相談されたので」
「ここでは作物が実りにくい…だが作物が枯れずに生きてるのはなぜだ」
「領地だけではなく…土自体に瘴気が宿っていました。なのでそれを取ることによって元の土に戻りました」
「瘴気をとるだけでそこまでのことが」
「まぁ…元々土の品質が良かったですからね」
「…特産品もか」
(ムッ…やりすぎたか)
東の方には使われてない土地がある。元々は大きな畑があったのだが、苗や実は実にならずそのまま放棄された場所だ。なので、そこを農作物地区とした。そこの土を調べたら瘴気が宿っていた。まるで、生き物のように纏わりついており取るのには時間がかかった。瘴気を取ればただの土だ。そこに、苗や種を持ってきたのでそれを植えた。鍛冶道具をうまく変えれば畑仕事の道具へと変わる。
だが、このまま残り物でやっていたら底を尽きてしまう。だからこそ、奥の手として一度芽がつくと枯れることのない実それどころか気をつけなければ大量に繁殖する種がある。これは、遠い南の地にある赤くとても辛い実の種を改良した物だ。改良した結果、ピンク色の甘い実がなる。植えて力を使えば一晩で木になり実がつく。また、この実は他のことにも使える。
これを食料にし皆に分けて行くことで食料問題を変えることができる。それだけではなく…
「これをここの特産品にします」
「これをですか」
「はい」
「畑仕事を任せるうえでアゲルさん貴方を農業部門へと命じます。」
「俺をですか」
「はい。日頃からあなたがたを見て誰がふさわしいのかを確認した結果です。お願いします」
「わかりました」
「今まで、畑仕事をしていた人も手伝ってください」
「わかりました」
「やりましょう」
「ありがとうございます」
「あの…この果物の名前は何ですか」
皆の視線が一気に集まった。これは、名付けに期待している。
「えっ…と…ポノです…」
「ポノ…わかりました」
「皆行くぞ」
「…頑張ってください」
皆が取り組んでくれるのでこのまま、他の苗も実が付けば問題はない。これで、特産品や食料問題は解決だ。後は、この地域でできないことを何とかする必要がある。この地域は森に面しており、野菜・果物・薬・は何とかなる。だが服を作るための布や物を作るうえで必要な職人達がいない。昔は居たが皆この地を去ってしまったようだ。
(まぁこんな場所商売にもならないし…)
店も薬屋・喫茶店・宿・八百屋しかない。これでは、他の地域からきた人にとっては発展遅れの場所と認識され人が来なくなる。街を作るとしても畑を増やすとしても人手がいる。住民を移動させる際にこの首都にいる住民が何人いるかを調べ、戸籍も曖昧だったので作り直した。結果…この地域にいるのは20人程度だ。このままでは領民が少なすぎるので領地没収だ。
(商人がいるな…後は…)
一度、隣の領地と王都にいく必要があるな。特産品を売り名を上げ…問題である人手不足を解決する。
「フェムル様明日主様に会わせてください」
「どうした急に」
「やるべきことがまとまりました。会って相談がしたいのです」
「…わかった」
次の日、店を閉めて引きこもり主様に会いに行った。相変わらず、仮面をかぶった状態だ。
「…で何を企んでいる」
「隣の領地と王都に行く必要があるので許可を頂きたく」
「領地発展はもう辞めたのか」
「違います…主様この地を発展するのに大事なのはなんでしょう」
「…人」
「そうです。まず住民がいないとできませんよね」
「住民ならいるだろう」
「居ますけどこの人数では足りません…後、これからはお金がいります」
「金は何に使う」
「商売を始めます」
「…喫茶店は辞めたのか」
「辞めてません。私は喫茶店の店主でありながら主様の書類担当ですよ。その上でこれから、商人との交流が始まります」
「この地には商人は来ない…来る価値のない場所と思われているからな」
「…そうですね」
(気づいてはいるんだ)
「それに売るものがないだろう」
「この地の価値を気づいてもらうためにまず隣の領地に特産品やここでしかない物を売ります」
ニッコリ
「特産品…」
やはり、この地に特産品ができたこと私は鞄から特産品になったポノを出した。
「これは…」
「これはあまい果実ポノです」
「変な名だな…」
(ギク!…聞かれて咄嗟に答えちゃたからな)
「ぜひ、食べてみてください。フェムル様も」
「頂こう…ん」
「…!」
「「あまい」」
好評価のようで良かった。
「甘くて食べやすいのでスイーツ作りにもできますよ」
「確かにこれなら売れるだろうな…品は足りているのか」
「はい。十分な量があります」
畑の一部はポノの木専門場所になっている。
次に、手のひらサイズの丸い木でできた入れ物を取り出した。
「後はこちらです」
「これは…」
「ポノの実は保湿クリームを作る際に使います。完成品がこちらです」
「保湿クリームはこの国にもある。売れないのではないか」
「これは肌荒れにもよく効ききます。それだけではなく水に濡れても落ちにくく、他の物と混じりにくい物です。なので他には無い商品です」
「売れるのか…」
「売れます」
これは言い切ることができる品だ。隣の領地に持っていけば予約までいける。
「ふむ…これだけではそこまで売れないだろう…」
主様は奥の扉へと戻りすぐに大きな箱2つを持ってきた。中を開けると
「これは…回復薬」
「主様!」
「これを売れば足しになるだろう」
「…いいのですか」
この商売は必ず成功させるが確実な証拠がない。ましてや、こんな子供の戯言にも関わらず信じてくれるとは…
(やはり…優しい人だ)
なんだかんだ言って誰かを助ける優しさを秘めている。
「ふん…失敗作を渡すだけだ」
「それは…職人としてどうですか。ふふふ」
失敗作…この人にはそれこそ難しい話だ。
「人手はどうする…心当たりはあるのか」
「そうですね…職人を何人か声をかけようと思います。後は…護衛と働き手を何人か引き取ろうと考えています」
私の考えが伝わったのか主様のお顔は怒っているようにも見える
「それが…一番効率の良い考えか」
「はい」
「護衛を付けるか…出るなら今すぐ護衛がいるんじゃないか」
「大丈夫です」
「安全とは限らんぞ」
「主様の護衛は絶対ですから」
「……」
納得していないようだ。
「それにこの地に立派な騎士はカルト様だけですよ」
「…そうか」
「ほんとうに大丈夫なのか」
「フェムル様ご心配なく」
この人までもが心配してくれる。ありがたい
「王都や隣の領地まで時間がかかる…これを使え」
主様は奥から銀色の装飾をしたベルを2つ取り出した。真ん中には小さなタンポポが描かれている
「これは…」
「転移することができる魔導具だ。一つで2回移動することができる」
転移魔導具…それは最高峰の魔導具の一つだ。この世でそう多くはない…
「これ…いいのですか」
「使え…宝の持ち腐れだ」
「ありがとうございます。素晴らしい人材を連れて帰りますので期待していてください」
「ふん…さっさと行ってこい」
「いってきます」
次の日私は住民の皆に店を休むことを伝えた。休むことを残念がられたが大勢の人が私を応援してくれた。また、宿屋の夫婦から服をもらった。街を一部だけど綺麗にしてくれたお礼と応援だそうだ。私が好みな色で持っているのと似た服だ。髪飾りとしてリボンを付ける。荷物と魔導具、相棒を連れて
「アイビー行こう…いってきます」
ニャー…
目指すは隣の領地と王都へ
そこはジメジメとしており、奥からは腐った匂いが広がっていた。
「………ねむい」
「………さみ…しい」
そんな声が響く。そこにあるのは静けさ、喉元や手首にある冷たく重いものそれがより自由を奪っている。目の前には鉄格子…
一人選ばれた。もうその者は帰ってくることはない。選ばれてもそれが楽園なのかはわからない。選ばれない方がいいのかもしれない。
ここはどこなのだろうか…どこへ行けば救われるのだろうか
「……………にげたい」
「さむ…い……」
「だれか…」
たすけて…そう2つの声が聞こえる
「今日も失敗か…」
無事商人になった。商会を立ち上げるためには金がいる。勉強の為に資金稼ぎの為に有名な店で下働きから始まったが一向に出世への道は繋がらない。資金も溜まりそうにない。
商会を作るという夢も終わりそうだ。
約束無理だな…