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田中なす@末
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らみょん
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朝。
教室の扉を開ける。
いつもと同じ時間。
いつもと同じ景色。
誰かの笑い声。
机を動かす音。
窓から入る朝の風。
何も変わっていない。
見つからない上履きも。
いつも机に入っている紙屑も落書きも。
こっちを見ている嘲笑的な目線も。
そのどれも、全部変わっていない。
……はずだった。
「⋯っはよーございまーす」
教室へ入りながら声をかける。
返ってこない返事。
いつも通り。
そりゃそうだ。
昨日のことを知ってるやつらは、全員他のクラスなんだから。
変わってなくて当たり前。
……でも。
何かが違う。
言葉では説明できないくらい、小さな違和感。
それだけが、胸に残った。
昼休み。
弁当を持って屋上へ向かう。
いつもの場所。
いつものフェンス。
昨日の出来事なんて嘘みたいに、穏やかな風が吹いていた。
「ん、らっだぁ」
先に来ていたゾムが手を上げる。
「お、早いじゃん」
「……まぁな」
少し遅れて、きょーさんが来る。
「昼飯食いにきたで」
「珍しっ」
「暇やから」
「生徒会って暇なときあるんだ」
最後にぐちつぼも姿を見せた。
「え、お前も今日屋上なん?」
「特に他の場所ないし」
「今までどうしてたんだよ」
四人になる。
昨日と同じ。
……同じ、なのに。
会話が続かない。
風の音だけが、やけに大きく聞こえた。
「……⋯」
みんな、何か言いたそうだ。
でも言わない。
時々、視線を感じる。
俺を見ている。
何かを確かめるみたいに。
「……?」
顔を上げると、三人とも何事もなかったように目を逸らす。
……気のせいか。
いや、違う。
昨日から、みんな少しだけ変だ。
たぶん、俺のせい。
昨日、変なこと言っちゃったから。
空気を悪くしちゃったから。
「……⋯」
箸を持ったまま考える。
どうすれば戻るだろう。
昨日までみたいに。
何も考えず笑える空気に。
「そうだ、」
小さく呟く。
俺がいつも通りにしてればいい。
昨日なんてなかったみたいに。
笑って。
話して。
ふざけて。
それなら、きっと。
「ねぇ、ゾム」
「ん?」
「今日さ、帰りコンビニ寄んない?」
なるべく明るく笑う。
いつも通りに。
いつもみたいに。
ゾムは少しだけ目を丸くして。
それから、小さく笑った。
「……ええで」
優しい笑い方だった。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が少しだけ痛んだ。
違う。
昨日までの笑い方じゃない。
優しくなんて、しなくていいのに。
俺は何も変わってない。
変わったのは。
きっと。
みんなの方だった。
風が吹く。
青い空の下。
昨日までと同じ景色の中で。
もう、昨日までには戻れないということだけが、静かにそこにあった。
NEXT=♡2000