コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
班長の石田さんは、長年蓄えてきた白いお髭を触りながら、はじめは困ったような顔をしていたけれど、しきりに謝っているお母さまにやさしい口調で言った。お顔もどこか、白ヤギさんに似ている。
「いえいえ、美島さん。そんなに謝らんでくださいな。子どもたちだって、いきなりこんな状況に追い込まれたんじゃ我慢の仕様もないでしょうに」
「ご迷惑をおかけして、なんと言ったら良いか…せめて、せめて…何処かの集落までは連れて行ってもらえませんでしょうか、後のことは…」
お母さまが言い切るのを待たずに、石田さんは大きな声で笑った。
「美島さん、私は、いやいや、私たちは同じ日本人なんだ。見捨てたりはしませんよ。港まで行きましょう。そして日本へ戻るんです!この草っ原の先にね、開拓団が残したちいさな町がある。私の知り合いも暮らしているから、そこで燃料や食べ物を調達しようじゃありませんか。何よりも、情報がほしい。ねえ、皆さん!」
石田さんの提案に、お母さまをはじめ、大人たちも安心した顔でうなずいていた。
わたしは心の中で、石田さんを白ヤギさんのおじいさまと呼ぶことにした。