玄関の扉に手をかける。
「らっだぁ坊ちゃま!」
玄関に足を踏み入れようとした片足が、空気中に放り出されたまま固まる。
あぁ、見つかってしまった…__
「学校側から連絡がありました。貴方、一体何を考えていらっしゃるのですか!?」
怒られるのは貴方なのですよと、自分も叱られるのですよと、自分のためなのか人のためなのか、一体誰のために怒っているのかわからないお手伝いさんの前に佇む。
そんな何もできない自分に、いつまでも、いつまでも、散々嫌気が差してくる。
『意気地なし』
黄色い、彼の言葉を思い出す。
「…ごめんなさい」
何を考えているのかわからないのは、そっちの方だろ。
「…今日の夕飯は抜きですからね」
今日、今日「も」、
「今日のって、いつもでしょ__w」
目の前の顔が、みるみるうちに赤くなっていくのがわかる。
もうどうなったっていい、もういい。
「貴方はだから…!」
手を振りかぶると同時に、ゆっくりと瞼を落とす。
何も感じないように、痛く、無いように。
パシッ!
音と同時に感じたのは、無、そのものだった。
違和感を感じ目を開けると、視界に飛び込んできたのは黄色だった。
「何してんねん、お前」
黄色い瞳が鋭く、お手伝いさんを睨む。
「ヒッ」
「何してたんかって聞いてんねんこっちは」
彼の掴んだお手伝いさんの片手から、ギリギリと鳴ってはいけない音が聞こえる。
「や、やめ…」
「お前もお前で、なんでやり返さんのや」
お手伝いさんの片手を離し、前にいた僕へと足が進んで来る。
彼の後ろで慌てた様子の彼女が、家を出ていくのがわかった。
「お前、もっと自分の身を大事にしたらどうや?」
身長が、彼の方が少し高いせいか、黄色い瞳に見下されたような、
「なんとか言ってみい」
自分が、なにか悪いことをしたような気分にさせられてしまう。
「ご、めんなs」
「謝れとは言ってへんやろ」
こちらへと、一本の伸びてくる腕が視界を塞ぐ。
ポンッ
「え」
「別にええんや」
優しい、黄色い瞳。
温かく、柔く頭に置かれた一本の腕。
それが優しく、不器用に頭を撫でる。
「お前の好きなようにすればええ。……でも…__」
『自分から死ぬような真似は、絶対にすんな。』
優しくも強い、そんな視線。
暖かい何かが心を締め付け、頬を何かが伝う。
「…う、ん」
柔く、頭に置かれたままの手から感じるぬくもりを、僕は小さい頃から求めていたのかもしれない。
ずっと、ずっと、誰かからの、この言葉を待っていたのかもしれない。
「ごめんなざい…」
「おおおお!?w泣くな泣くな…大丈夫か?」
暖かい気持ちを、誰かから、欲しかったのかもしれないと、そう分かった瞬間だった。
コメント
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うひょぉーーいっけめぇん!!私もこんなふうに支えられる人間になりたいよ😮💨 支えられる人間におれはなる!!!
いいねたくさんしておきました!この作品大好きです!!