どんなに綺麗なものでも、それらは必ず「毒」がある。
「はじめまして。僕は実験が好きです」
自己紹介から違う彼は、ずっと笑っていた。
『ちょっと…まずは名前から…』
「あぁ、名前は言えません」
綺麗な形をした目元だけ出ている彼は、「かっこいい」ではなく、「美しい」という言葉が似合いそうな空気を纏っていた。
自分の名前が言えない、そう言う彼に、慌てふためく先生。
それに乗じて、少しでも距離を近づけたいのか、近づいていく女子生徒たち。
この教室に在籍している生徒たちは、どうにも「欲」というものを抑えられないらしい。
「まるで猛者やな〜」
教室で堂々とタバコを吸う彼は、転校初日から問題を起こした張本人、「金豚京谷」。
なぜ絡んでくるかは知らないが、彼が問題を起こしたことになぜか僕が含まれたらしく、今では僕も共犯者として扱われるようになってしまっている。
「あ、今日お前の家遊びに行ってええか?」
あの日の一件以来、彼は頻繁に僕の家に押しかけるようになっていた。
それのおかげでかは知らないが、「怖い人達」と認識されたようで、家にいた口うるさいお手伝いさんは会社に頼み、何処か違うところへと配属されたそうだ。
僕はこの男に恩がある。
「…ねえ」
「ん?なんや?」
あれから少し彼のことを調べたら、彼が「寮生活」だということがわかった。
加えて、僕の広い家には、僕しかいない。
「…よければ僕の家に住む?」
「………は?」
頻繁に学校から足を通わせるのも、僕が申し訳なくなってしまう。
かと言って住まわせるのも、両親が帰って来たらどうなってしまうか不安ではあるが…___
「事故に遭われるよりはマシだし…」
無駄にうちは金持ちだし__
「いや、俺はかまへんけど、大丈夫なんか?」
あぁ、彼にはお手伝いさんが出ていったことをまだ話していなかった。
なんせ、「昨日」出ていったのだから。
「お手伝いさんなら「やめたよ」」
僕の顔を見て一瞬、彼の顔が引きつった気がしたのは気の所為だろう。
「…そうか」
転校生が相変わらずに女子たちに囲まれている中、僕たちは引っ越しの話で少し盛り上がっていた。
なんせ僕のとっては初めてのことだし、相手は友達の家に住むなんて発想が無かったものだからと、そこで初めて彼が優しく、暖かい心の持ち主であることに気がついた。
ちゃんと話せば、良いところがわかる。
小さい頃に聞いたこの言葉は、一体誰から聞いたものだっけ___
「…忘れちゃった」
コメント
2件
あぁ、、転校生ってもしかして、、、 今回もいい作品でした!!続き楽しみにしてます
転校生.......実験好きって言ったらあの人なんだろうなぁ🤔