コメント
0件
そうして、数日が過ぎた。
カエデ「今日は、これで終わりよ。」
そう言って楓はナイフを置く。
「また明日」そう言って部屋を出た。
どうやら、一日に部屋にいる時間は3時間程らしい。
それが終われば食事が出るし、腕が痛いが寝ることも出来る。
慣れればどうということもないな。
だが、傷がそのままなのは痛いな。
寒さで傷口はすぐに固まるが痛みはある。
どうするか。
カエデ「今日も来たわよ。」
自分「なぁ、一つ、勝負をしないか?」
カエデ「何かしら?」
自分「僕はそろそろ限界だ。だから今日で終わらせよう。」
自分「僕は意地でも言わない。だからなんとか吐かせてみろ?」
挑発するように、提案するように、僕は言った。
カエデ「いいわよ。遊んであげる。」
そうして、楓はナイフをとりだした。
痛い、いつもならばもう終わっているはずの時間。
今は続いている。それに普段はナイフを抜くが、今は刺したまま次のナイフを刺すか、ねじるかしている。
吐いてしまいたい。
楽になりたい。
だが、僕はそれをしない。してはいけない。
勝たなくてはいけないから。
僕の中の何かが僕を突き動かす。
自分「足りないな?俺に吐かせたいなら、もっと本気でしろよ?」
カエデ「まだ、言わないつもり?」
カエデ「そろそろ、本当に死ぬわよ?」
俺は、笑みを浮かべる。
自分「死なないな。俺は絶対に。」
理由なんてない。だけど、何故か感じる。
俺は負けない。この女に勝てる、と。
楓はやけになっている。
乱暴な刺し方だ。
余裕の無い証拠。
後少し、もう少しだ。
視界が暗くなる。
なかなか吐かない。
この男に何度ナイフを刺したことだろう?
常人ならば死んでいる。
だが、彼は生きている。
笑っているのだ。
余裕そうに。
(腹が立つ。いい加減に。)
彼は笑っている、嘲笑うかのように。
イラつきが増す。
どんどんとナイフを突き立てる。
(死ね死ね死ね!)
いつしか、私の思考は、
吐かせる。から殺す。に変わっていた。
そうしてしばらくして、彼はピクリとも動かなくなった。
死んだのだ。彼は死んだ。私が殺した。
自分「え?」
死んでいない、彼は生きている。
そうでないと私は、
ふと、我に返る。
私はボスに吐かせろと言われた。何があっても殺すな、そう言われていた。
なのに、殺してしまった。
どうしよう?
どうすればいい?
渦巻く思考の中で出た答えは、
「医者を呼んできて!」
その一言だった。
そうして、1人の医者が来た。
緋彩(ヒイロ)うちの組織で1番の医者だ。
ヒイロ「……楓。」
ヒイロ「これはもう、死んでるわ。」
自分「何を言ってるの?そいつは生きてるわよ。」
ヒイロの言葉を否定する。
ヒイロは呆れながら手錠を外す。
と、彼は倒れた。
死んでいる、そんなはずは無い。
だけど、正しく、彼の体は死んでいる。
部屋は静かになっていた。
が、ひとつの声が響いた。
「俺の………勝ち…だ、」 と。
「………え?」
と、声を上げたのは緋彩だった。
ヒイロ「どうなってるの!確かに死んでたわ。確認もした。なんで生きてるの?」
緋彩は声を荒らげる。
カエデ「だから、言ったでしょう?生きてるって。」
ヒイロ「けど、」
カエデ「とりあえず、治療して。」
そういうと、緋彩はブツブツと文句を言いながら、医務室に彼を連れていった。
私は1人、血に染った個室で
「…私の……負けね。」
と、呟いた。