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そうして、数日が過ぎた。
カエデ「今日は、これで終わりよ。」
そう言って楓はナイフを置く。
「また明日」そう言って部屋を出た。
どうやら、一日に部屋にいる時間は3時間程らしい。
それが終われば食事が出るし、腕が痛いが寝ることも出来る。
慣れればどうということもないな。
だが、傷がそのままなのは痛いな。
寒さで傷口はすぐに固まるが痛みはある。
どうするか。
カエデ「今日も来たわよ。」
自分「なぁ、一つ、勝負をしないか?」
カエデ「何かしら?」
自分「僕はそろそろ限界だ。だから今日で終わらせよう。」
自分「僕は意地でも言わない。だからなんとか吐かせてみろ?」
挑発するように、提案するように、僕は言った。
カエデ「いいわよ。遊んであげる。」
そうして、楓はナイフをとりだした。
痛い、いつもならばもう終わっているはずの時間。
今は続いている。それに普段はナイフを抜くが、今は刺したまま次のナイフを刺すか、ねじるかしている。
吐いてしまいたい。
楽になりたい。
だが、僕はそれをしない。してはいけない。
勝たなくてはいけないから。
僕の中の何かが僕を突き動かす。
自分「足りないな?俺に吐かせたいなら、もっと本気でしろよ?」
カエデ「まだ、言わないつもり?」
カエデ「そろそろ、本当に死ぬわよ?」
俺は、笑みを浮かべる。
自分「死なないな。俺は絶対に。」
理由なんてない。だけど、何故か感じる。
俺は負けない。この女に勝てる、と。
楓はやけになっている。
乱暴な刺し方だ。
余裕の無い証拠。
後少し、もう少しだ。
視界が暗くなる。
なかなか吐かない。
この男に何度ナイフを刺したことだろう?
常人ならば死んでいる。
だが、彼は生きている。
笑っているのだ。
余裕そうに。
(腹が立つ。いい加減に。)
彼は笑っている、嘲笑うかのように。
イラつきが増す。
どんどんとナイフを突き立てる。
(死ね死ね死ね!)
いつしか、私の思考は、
吐かせる。から殺す。に変わっていた。
そうしてしばらくして、彼はピクリとも動かなくなった。
死んだのだ。彼は死んだ。私が殺した。
自分「え?」
死んでいない、彼は生きている。
そうでないと私は、
ふと、我に返る。
私はボスに吐かせろと言われた。何があっても殺すな、そう言われていた。
なのに、殺してしまった。
どうしよう?
どうすればいい?
渦巻く思考の中で出た答えは、
「医者を呼んできて!」
その一言だった。
そうして、1人の医者が来た。
緋彩(ヒイロ)うちの組織で1番の医者だ。
ヒイロ「……楓。」
ヒイロ「これはもう、死んでるわ。」
自分「何を言ってるの?そいつは生きてるわよ。」
ヒイロの言葉を否定する。
ヒイロは呆れながら手錠を外す。
と、彼は倒れた。
死んでいる、そんなはずは無い。
だけど、正しく、彼の体は死んでいる。
部屋は静かになっていた。
が、ひとつの声が響いた。
「俺の………勝ち…だ、」 と。
「………え?」
と、声を上げたのは緋彩だった。
ヒイロ「どうなってるの!確かに死んでたわ。確認もした。なんで生きてるの?」
緋彩は声を荒らげる。
カエデ「だから、言ったでしょう?生きてるって。」
ヒイロ「けど、」
カエデ「とりあえず、治療して。」
そういうと、緋彩はブツブツと文句を言いながら、医務室に彼を連れていった。
私は1人、血に染った個室で
「…私の……負けね。」
と、呟いた。