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「あの…アリア?」

ライラに話しかけられ、はっと意識が戻って来る。

「もう、アリアったら、聞いてるの?」

「あ、ごめんね、もう一回言ってちょうだい」

あのねーとライラは無邪気に笑った。

「じゃあ、そろそろ帰ろっかな」

私がそう言うと、ライラは少し寂しそうに頷く。

「それじゃあ、また今度ね、ライラ」

「…うん。元気でね」

私が少し心配しているのがわかったのか、ライラはにこっと笑ってみせた。

「おやすみ」

日が暮れる直前まで話していたからか、あたりはもう真っ暗だ。

きっと家に帰ったら先生に叱られる。

それは当たり前だ。だって授業を逃げ出したんだもの。

「ねぇ!アリアー!」

遠い後ろの方から、ライラがこちらに向かって叫んでいる。

「大好きっ!」

思わず笑みが零れる。 なんて優しいいい子なんだろう。

「私もっ!」

ぶんぶんと全力で両手を振るライラに対し、私は片手で優しく手を振った。

それが、私とライラがまともに話せた最後だった。

「アリアさんっ!!」

もう外は真っ暗で、肌寒くなってきたところで、屋敷の廊下を歩いていた私に先生が後ろから声をかけた。

「もうっ!あなたという人は、また授業を逃げ出して!!まともにやる気はないのですか!?」

「ないですよ」

それだけ言って、私はまた自分の部屋に向かって歩き出す。

「ふざけないで下さい!ちょっと、アリアさん!」

後ろで煩く叫んでいる先生を無視して、部屋の中に入って扉を閉じる。

暫くダンダンと扉を叩いていた先生は、もう諦めたのかやがて静かになった。

こつこつと足音をさせて自分のベッドに歩いていく。

「今日はご飯あるんだ…」

小さなパンとチーズがぽつん、とベッドの上に雑に乗っている。

そっとそれを取ると、近くの机の引き出しの中に入れた。

もしかしたら、明日時間があればライラに渡せるかもしれないと思ったからだ。

どさっ、とベッドに横になり、目を閉じる。

沢山喋ったせいで疲れていたのか、すぐに眠気が押し寄せてきて、どぷんっ、と私を飲み込んでいった。

もはや、ちかちかと山小屋で光る眩しい光になど、目もくれていなかった。

「お母さん!」

ライラの声が聞こえる。

「今度はどこに遊びに行こうかなぁ?」

ゆっくりと目を開けて、私は眩い光を目にする。

「ライラ…?」

「ねぇお母さん!」

今までにないくらい楽しそうな声。

ライラの隣にはライラに似た綺麗な女性がいる。

「ライラ」

優しく、愛情に満ちた声で、女性はライラの名を呼ぶ。

「ライラ」

ふわりと笑って、とても、幸せそうに。

「ライラ」

段々と、怒気のこもった、刺々しく、痛々しく、何より、憎しみが強い、

「…ライラ!」

ぐぐぐ、と女性は拳を握りしめる。

今にもライラに襲い掛からんとばかりに、女性は顔を歪めた。

「…お母さん……?」

「逃げてライラっ…!!」

不味い、とそう思った私は、思わずライラに向かって叫んでいた。

それと同時にライラに向かって走って行く。

「アリア…?」

ぐしゃっ、と肉の潰れる音がする。

血飛沫が目の前に散って、宙を舞う。

「ラ、イラ…」

どさっ、とライラが崩れ落ちる。

「ライラ!!!!」

がばっと、私は自分の声で目覚めた。

「夢…」

はぁ、はぁ、と浅い呼吸を繰り返す。

「なんて夢よ…」

最悪だ、と思いながら、さっき見ていた夢を思い返す。

「無駄にリアルね」

ライラを失うだなんて、絶対にあってはならない。

私の唯一の大切な人で、友達だから。

ふと、私は窓から山小屋を見る。 閉じてあるはずの小屋の扉が、開いていた。

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