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クム
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#狂愛
柏木さくら
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翌朝。
陸はスマホの通知音で目を覚ました。
【23番】
【本日の案件に参加しますか?】
昨日と同じ画面だった。
陸は迷わず、
【参加する】
を押した。
昨日と同じ場所。
昨日と同じ時間。
ただ一つ違ったのは。
「……人、増えてる」
部屋には、昨日より多くの人がいた。
知らない顔ばかりだった。
「23番?」
後ろから声を掛けられる。
振り返ると、昨日はいなかった男が立っていた。
「そうだけど」
「俺、21番」
「よろしく」
「……よろしく」
21番は軽く笑った。
それだけだった。
陸も特に気にしなかった。
参加者が増える。
それくらいにしか思わなかった。
午前9時。
モニターがついた。
【本日の案件を開始します】
昨日と同じように、全員へ指示が送られる。
陸は自分のスマホを確認した。
すると。
昨日とは違う文章が表示されていた。
【本日の案件は個別に行ってください】
「個別?」
陸が呟く。
隣にいた11番が画面を覗き込んだ。
「そっちも?」
「うん」
「私も同じ」
8番が口を挟む。
「じゃあ、今日はみんな別行動ってことか」
誰も何も言わなかった。
それぞれがスマホを見ながら部屋を出ていく。
陸もその後に続いた。
その日の仕事も、問題なく終わった。
そして。
報酬も振り込まれた。
5万円。
「……また入った」
陸はスマホを見ながら笑った。
やっぱり簡単だ。
昨日よりも、その気持ちは強くなっていた。
その夜。
陸は参加者用のグループを眺めていた。
メンバーは十人以上いる。
知らない番号ばかりだった。
【8番】
【11番】
【14番】
【21番】
【23番】
その中に、一つだけ気になる番号があった。
【17番】
名前は表示されていない。
アイコンも設定されていない。
ただ、番号だけ。
陸は何となくメッセージを送った。
【23番です】
しばらく待った。
既読はつかない。
「寝てんのかな」
そう思ってスマホを置こうとしたとき。
通知が届いた。
【23番】
【誰に聞きましたか?】
陸は固まった。
「……え?」
誰に聞いた。
その意味が分からなかった。
ただ、自分の番号を名乗っただけだ。
陸は返信する。
【別に誰にも聞いてないけど】
既読がついた。
それから、少し時間が経って。
【17番】
【なら、もう聞かないでください】
そこで会話は終わった。
陸はスマホを見つめた。
なんだよ、それ。
妙に嫌な感じがした。
翌朝。
集合場所へ行くと、14番がいなかった。
「14番は?」
陸が聞くと、21番が答えた。
「知らない」
「昨日いたよな?」
「いたけど」
「連絡は?」
21番は首を横に振った。
「ない」
陸はスマホを確認した。
昨日まであった14番とのグループ履歴が消えている。
個別のメッセージもない。
まるで。
最初から存在していなかったみたいだった。
「運営に聞いてみる?」
陸が言った。
その瞬間。
全員のスマホが鳴った。
――ピロン。
【参加者の皆様へ】
【他参加者について調べる行為は禁止です】
部屋の空気が変わった。
誰も喋らない。
陸は画面を見つめたまま動けなかった。
さっきまで。
14番がいた。
それなのに。
今は、そのことを聞くことすら許されない。
そして。
もう一つ。
陸は気づいた。
昨日まで表示されていた17番が。
グループから消えていた。
「……17番?」
小さく呟いた。
誰にも聞こえない声だった。
すると。
ポケットの中でスマホが震えた。
個別メッセージだった。
【23番】
【あなたは、何も知らないままでいてください】
陸は画面を閉じた。
昨日までは。
5万円が魅力的だった。
今日は。
その5万円が、少しだけ怖く見えた。
コメント
1件
いやあ、これ、じわじわ来ますね……。14番が消えて、その痕跡すら消される感じ、そして17番からのあのメッセージ。「何も知らないままでいてください」って、むしろ知りたくなってしまうじゃないですか(笑)。5万円の重みが変わって見える最後の一文、すごく好きです。るしゅさんのこういう不穏な空気の出し方、本当に上手いなあ。