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クム
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#狂愛
柏木さくら
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「……やっぱ、おかしいだろ」
帰宅した陸は、ベッドに座ったままスマホを眺めていた。
14番が消えた。
17番も消えた。
そして。
誰も、そのことについて話そうとしない。
グループには何事もなかったようにメッセージが流れている。
【次回案件について】
【報酬は60,000円です】
「……6万?」
陸の目が止まった。
昨日まで5万円だった。
今日は6万円。
一日で6万円。
普通のバイトなら、何日も働かなければならない金額だ。
陸はスマホを置いた。
「いや……やめとくか」
口に出してみる。
でも。
頭の中には、6万円という数字が残った。
家賃。
食費。
支払い。
全部合わせても、かなり助かる。
陸はもう一度スマホを手に取った。
【参加します】
送信。
数秒後。
【確認しました、23番】
「……」
返信が早すぎる。
陸は画面を閉じた。
翌朝。
集合場所に着くと、昨日より人が少なかった。
陸は部屋を見回した。
「……あれ?」
8番。
11番。
21番。
そして陸。
昨日までいた人数とは明らかに違う。
「他の人は?」
陸が聞く。
誰も答えない。
少しして、8番が小さな声で言った。
「知らないほうがいい」
「なんで?」
「そういう決まりだから」
「でも、昨日まで一緒にいたじゃん」
8番は陸を見た。
笑っていなかった。
「だからだよ」
その一言で、陸は黙った。
午前9時。
モニターがつく。
【本日の案件を開始します】
いつもの画面。
いつもの指示。
ただ。
今日は最後に、一つだけ追加されていた。
【禁止事項】
【他参加者との接触】
【案件内容に関する質問】
【指定時間以外の連絡】
【参加者の所在を確認する行為】
陸は画面を見つめた。
「……所在を確認?」
そんな項目。
昨日まではなかった。
そのとき。
11番が小さく呟いた。
「増えてる……」
「え?」
「禁止事項」
11番は画面から目を離さなかった。
「最初は、こんなに多くなかった」
陸は背筋が冷たくなった。
参加者が消えるたびに。
ルールが増えている。
まるで。
何かを知ろうとする人間が出ることを、最初から想定しているみたいだった。
その日の案件が終わった。
陸のスマホに通知が届く。
【報酬60,000円を送金しました】
陸は金額を確認した。
本当に振り込まれている。
指示に従うだけ。
それだけで6万円。
「……やっぱり、辞めるの無理だな」
自分でも驚くほど自然に、その言葉が出た。
でも。
その直後だった。
別の通知が届いた。
【23番】
【明日の案件について】
陸は画面を開いた。
【参加を辞退する場合は、理由を記載してください】
陸は少し考えた。
そして入力する。
【都合が悪いので辞めたいです】
送信。
既読。
すぐに返信が来た。
【理由を確認しました】
ここまでは普通だった。
でも。
次のメッセージを見て、陸の指が止まった。
【23番】
【あなたは、これまで何円受け取りましたか?】
「……は?」
陸は画面を見つめた。
そんなこと。
わざわざ聞く必要があるのか。
さらに通知が届く。
【5万円】
【6万円】
【合計11万円】
陸の顔から血の気が引いた。
知っている。
全部。
自分が受け取った金額を。
一円単位まで。
陸は慌てて返信した。
【それが何か?】
既読。
しばらく返信は来なかった。
やがて。
【明日の案件も、よろしくお願いします】
それだけだった。
陸はスマホを握ったまま動けなかった。
辞めたい。
そう思っただけだった。
なのに。
まるで。
辞めることすら、最初から許されていないような気がした。
その夜。
陸は布団に入っても眠れなかった。
スマホを伏せる。
目を閉じる。
しばらくして。
――ピロン。
また通知。
陸は見たくなかった。
それでも。
手を伸ばした。
画面には、一行だけ。
【23番】
【明日は、必ず来てください】
コメント
1件
うわっ…やっぱこの話、部屋の空気が変わるやつだ🥀 「禁止事項が増えてる」って気づいた瞬間、背筋が冷えた。しかも陸がいくら受け取ったか先方に全部バレてて、「辞められない」ってじわじわ閉じ込められていく感覚が本当に怖い…。 明日は絶対来いって最後の一文、もう逃げ場がない感じがして苦しいけど、続きが気になって仕方ないです。