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今日は、バイトが休み。
とにかく私は、言われた通りに数日分の荷物を準備した。バッグに必要最低限の物を詰めながら、本当にこれでいいのかと疑問がよぎる。
「樹さんと一緒に暮らすんだよね……。全然、実感わかないよ……」
あんな超イケメンの樹と、毎日同じ部屋にいるなんて……
「ううん、ルームシェアだよね、ただのルームシェア」
ずっと自分に何度も言い聞かせてるけど、気持ちはかなり複雑だった。
それでも、とにかく部屋を片付けて、掃除もして、しばらく留守にするから、戸締りも全部確認した。
まだお昼前か……
私は、時間まで買い物に行くことにした。
毎日、スエットの上下で寝ていたから、パジャマと靴下を買いたいと思った。
あまりにも可愛げのない姿は、樹には見せられない。
私は、今まで女性としての努力を怠っていたのかもしれない。そう思うと、急に自分が恥ずかしくなった。
反省……
たとえ彼氏じゃないにしても、樹さんはとってもオシャレだから、一緒にいても恥ずかしくないような可愛いパジャマを買いたい。
そんな思いで、久しぶりにやってきたショッピングモール。そこで私は誰かに声をかけられた。
「あなた、この前の……」
目の前に、見覚えのある人が立っていた。
「あっ! あの時の」
その人は、最後のデートの時にばったり会った……柊君の彼女だった。
見た目が派手な、気の強そうな彼女。
ちょっと、気まずい。
「この前は、柊のことでいろいろ言って悪かったわね」
え……
意外にも、優しい口調で謝ってくれた。
「いえ、そんな……。こちらこそすみません」
なぜか、私もつられて謝ってしまった。
「柊、元気にしてる? 同じ会社なんでしょ?」
「柊君とは、もう会ってないんですか?」
「あの時、気が動転して、あんな風に別れるなんて言っちゃったけど、やっぱり寂しくてね。1度だけ連絡したんだ。そしたら……」
「……?」
「……柊、何か全然元気なくて。もう、今は仕事ひとすじだから、私とは会えないって」
「柊君がそんなことを?」
「もちろん、私も……もう、柊とは会うつもりはないんだけど。でも、やっぱり好きだった人には元気でいてほしいしから」
「もう会わないつもりですか? それで……いいんですか?」
「会わないわよ。私、柊にはあなたがいるって知って、キッパリ忘れたから。今は新しい彼氏できたしね」
そうなんだ……
「だから、私のことは気にしないで。柊と結婚するんでしょ?」
そっか、それは聞いてないんだ。
「私、柊君とはお別れしたんです。結婚も破談になりました」
「え! そうなの? だから仕事ひとすじって言ったんだ」
「私は、今でも柊君は他の女性と会ってるのかなって思ってました」