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ガーネットはその日、買い物に出かけていた。オスカーの誕生日が近かったので、プレゼントを買いに行くためだ。


数日前、買い物に行くとガーネットが、オスカーに伝えると、オスカーは


「買い物をしたければ、行商人を呼べばいいじゃないか? 何を買いたいんだ? 私はできる限り君には外に出て欲しくないのだが」


と、難色を示した。それでもガーネットは自分の足でプレゼントを探したかったので


「殿方には言えない、大切な買い物と言うのがレディにはあるのですよ」


と嘯いた。すると、オスカーはため息をついて


「君は、そう言えば私が君に許可を出すと分かって言っているね? 君は自分がどれ程魅力的で、いるだけでも注目を集める存在かわかっているのか? それに私の目の届かないところで何かあったら、私はどうすれば良いのか」


と言った。ガーネットは黙ってオスカーを見つめた。オスカーは根負けしたのか


「わかった、その代わり買い物したその足で王宮の私の執務室に来ること。私もその日は仕事を早く切り上げる。そして、そのまま一緒に帰れば良い。それなら私も愛しい君といる時間が増えるから文句もない。二人で馬車に乗るのは久しぶりだね」


と、顔を綻ばせながら妥協案を出した。ガーネットは


「オスカー、私も嬉しいですわ」


と、オスカーに抱きつき、お互いついばむようにキスをした。それを見ていた執事は、やれやれと言わんばかりにため息をついた。

そんなやり取りを経て、ガーネットは久々の買い物をした。そして、満足の出きるものを手に入れ、王宮に向かった。


王宮には話が通っていると言うことだったので、門番に名前を伝えると、その後はスムースに中へ案内された。

だが、どうやらオスカーの仕事が思いの外長引いてしまっているらしく、庭のガゼボに通された。するとそこにフォルトナム公爵夫人がいた。ガーネットはカーテシーをすると、フォルトナム公爵夫人も慌ててカーテシーをして


「あの、ディスケンス公爵夫人、そのようにかしこまらないでいただけないでしょうか?」


と言った。ガーネットは顔を上げ


「ありがとうございます、そうさせていただきますわね。ところでフォルトナム公爵夫人、ご一緒させていただいても?」


と、訪ねる。フォルトナム公爵夫人は


「あ、えぇもちろんですわ。それに、あの、サファイアと呼んで下さい」


と言った。ガーネットは、サファイア様はなんて可愛らしい方なのだろうと思いながら


「では私のことも、ガーネットと呼んで下さい」


と言った。サファイアは嬉しそうに頷いた。ガーネットはサファイアに


「今日は私は夫と待ち合わせをしていますの、今日はサファイア様は、どうしてこちらに?」


と訊いた。サファイアは少し苦笑いをすると


「私も、夫に呼ばれて……、あの、夫は最近こちらに詰めていたものですから、一秒でも早く会いたいと……」


と言うと頬を染めた。ガーネットは、これはフォルトナム公爵は気苦労が絶えないだろうと思った。そこに


「あら、失礼。こちらで何をしていらっしゃるの?」


と、ルビーがやってきた。ガーネットは


「ルビー様、私たち夫に呼ばれたのです」


と言った。ルビーはディスケンス公爵令嬢で、義弟であるオスカーと結婚したガーネットとは、懇意にさせてもらっていた。勝ち気だが、その実面倒見がよいルビーを、ガーネットは大好きで、義姉として慕っていた。ルビーは


「あら、そうなの」


と、サファイアに目を向けた。サファイアはまたも慌てて立ち上がりカーテシーをした。するとルビーは


「辞めてちょうだい、堅苦しいわ。貴女も|私《わたくし》のことはルビーって呼んでちょうだいね」


と、微笑むと


「私も一緒して良いかしら?」


と訊いた。ガーネットとサファイアは声を揃えて


「もちろんですわ」


と言った。三人揃って座ったところで、ガーネットは我慢できずに


「サイラバの悪役令嬢が勢揃い」


と、呟いた。するとその言葉にルビーとサファイアが反応する。ルビーが


「ガーネット、今貴女サイラバって仰ったわね、もしかしてsilent loverのことではなくて?」


と言い、サファイアは


「それに悪役令嬢とも……」


と言って、ルビーと顔を合わせて頷く。ガーネットは驚きながらも


「もしかして、ここにいる三人とも転生者!?」


と、言った。ルビーもサファイアも興奮気味に頷く。ルビーが


「転生者は私と、ヒロインのパシュート公爵令嬢だけかと思ってましたわ」


と言うとサファイアが


「ルビー様、私もパシュート公爵令嬢のその後の噂を聞いて、そう思ってました。でも、小説のsilent loverには悪役令嬢とはハッキリ明記されていませんでしたわ? なぜ私たちのことを悪役令嬢と?」


とガーネットに訊く。ガーネットはサファイアを見て


「あら、もしかしてサファイア様はゲーム化されたのをご存じないのですか?」


と言った。サファイアは


「ゲーム化されましたの? 私たぶん、その前にこちらに転生してしまったみたいですわ」


と言った。ルビーが次いで


「そうなんですの、あの小説かなり人気がでて、乙女ゲームとして発売されましたの。私たちは、その中でライバル兼悪役令嬢で“ざまぁ”される役でしたのよ?」


と言ってお茶を口にして、落ち着きを取り戻し


「それにしても、こんな話が出きる相手ができるなんて、私とっても嬉しいですわ」


と言った。ガーネットも大きく頷くと


「パシュート公爵令嬢は、楽しく一緒にお話をできそうな方ではありませんでしたものね」


と言うと、三人で大きく頷いた。ガーネットはハッとして


「今度からこの三人で、定期的にお茶会をしませんこと?」


と、提案した。ルビーもサファイアもそれに同意した。ルビーは


「ところで、サイラバには追加のディスクがあって……」


とサファイアをチラリと見ると、ガーネットを見た。ガーネットもサファイアをチラリと見るとルビーを見て頷き


「後から追加発売されたディスクですわね。サイラバは乙女ゲームだから、本編に入れられなかったって言うストーリーですわよね」


ルビーは頷くと


「そうですわ。ガーネットはおやりになりまして?」


ガーネットは首を振って答える


「実はやってませんの、あんまりハリー様には興味ありませんでしたし」


と言うとルビーも


「実は私も実際にはプレイしていませんの、妹が、あの、前世での妹の話ですけれど、妹が凄くはまっていたのを、横で見ていただけですけれど」


と、苦笑した。そして、続けて


「じゃあオスカー様のルートもプレイしていらっしゃらないのね」


と言った。ガーネットが首をかしげるとルビーはそんなガーネットに向かって


「ちゃんとハリー様のライバルルートを攻略すると、オスカー様のルートが解禁でしたのよ?」


と言った。ガーネットはショックを受けた。やっておけば良かった。そう思うと同時に、ハッと我に返りサファイアへ向き直り


「ごめんなさい、サファイア様を抜きに会話してしまって」


と謝る。サファイアは首を振ると


「そんな、私はゲームをやっていませんから、仕方ありませんわ」


と笑顔になった。するとルビーはサファイアを見て頷き、申し訳なさそうな顔で


「ゲームをやっていないからこそ、話しておいた方が良いことがありますの」


と言った。そして


「所詮ゲーム内のお話ですし、私たちのように現実が全く違ってしまうこともあると言うことが、大前提での話でしてよ?」


と前置きして


「サイラバにはもう一人攻略対象がいますの。それはオスカー様のお兄様のハリー様ですわ。通常、攻略対象には一人ライバル兼悪役令嬢がいますのよ、ところが通常盤だけをやっているとハリー様にだけライバルがいませんの。そのままクリアもできますけれど、その後に“乙女ゲームだから、入れられなかった”と言う曰く付きのディスクが発売されましたわ。そこには追加として隠し攻略対象のオスカー様ルートも入っていたのですけれど、その、ハリー様のライバルキャラが出てくるルートも追加されましたわ」


と言うと、一息おいて


「ところで、私たちには共通点がございますわね?」


とサファイアに質問する。サファイアは少し考え


「名前……でしょうか。宝石の名前ですわ」


と言うと、ルビーは頷き


「私たちの近くに、もう一人宝石の名前の人物がいますわね」


と言ってサファイアの返事を待つ。サファイアは一瞬動きを止め、目を大きく見開くと


「私のお兄様のオニキス?」


と言った。ガーネットとルビーは同時に頷く。サファイアは少し考え


「いえ、でもお兄様はそんな……」


と戸惑った様子になった。ガーネットはサファイアを安心させようと


「サファイア様、でも|私《わたくし》たちのこともそうですけど、現実はきっと違っていると思いますわ」


と言った。が、サファイアは首を振ると


「お兄様は、いつも影でこっそり結婚するつもりはないから、お前の子供を養子に取ることになるかもしれないって、言ってましたわ。私は、お父様がきっと相手を見つけてくるから、そんな心配はいらないと言っていたのですが、それでも俺は結婚できないんだって……それはもしかして自分が同性しか愛せないからかもしれません」


と言った。ガーネットとルビーは顔を見合わせガーネットは目を輝かせながら


「サファイア様のお兄様とハリー様に接点はありますの?」


と訊く。ガーネットは少し考え


「そう言われれば、お兄様が何度かハリー様のことを口にしていたことがありましたわ。でも、ただのお友達ですわ」


と言った。そこでルビーが爆弾発言をする。


「あら、でも、私一度だけ舞踏会でハリー様がじっとオニキス様を見つめているのを見たことがありますわ。最初は軟派なハリー様が、次のターゲットを物色しているのかと思ったんですけど」


と言ったあと、ガーネットに向かって


「貴女の義兄だったわね、失礼な言い方をしてごめんなさいね」


と謝った。ガーネットは首を振ると


「いいえ、私も軟派な方と思ってましたので。それより続きを」


と返した。ルビーは苦笑すると話を続ける。


「ハリー様があまりにも熱のこもった視線で見てらっしゃるから、思わずその視線の先を見たら」


そこでサファイアが話を次いで


「お兄様だったのですね?」


と言った。ルビーは頷くと


「その時、私はまだ前世の記憶を思い出していませんでしたから、その視線の意味がわかりませんでしたけど」


と言った。サファイアは頷くと


「お兄様が誰を愛し結ばれようと、真実の愛ならば私は応援したいですわ」


と言った。そこへ背後から声がかかる。


「レディたちは何をそんなに難しそうに話しているのかな?」


振り向くと王太子殿下が立っていた。サファイアとガーネットは慌てて立ち上がり、カーテシーをする。王太子殿下は片手をあげそれを制し


「堅苦しいのは無しだ。逆に僕の愛しの君が楽しく過ごせている礼をする」


と、言うとルビーに見たことのないような微笑みを向けると


「仕事が終わった、君に用事がある。お茶会はもういいね」


と言って、ルビーを強引に立たせて抱き寄せた。そして


「すまないね、そう言う訳でルビーはつれていく。君たちはこの後もゆっくりくつろいでくれ」


と言った。ルビーは顔を真っ赤にして


「ジェシー様、あの女子会、ちょっとお茶会が!」


と混乱しながらもお茶会をしていることを説明したが、そんなルビーに王太子殿下はキスをし


「そう、でも僕は君自身に用事があってね、仕事が忙しかったから、これ以上は待てない」


と、こちらを一瞥すると、強引にそのままルビーを抱きかかえて去っていった。

サファイアとガーネットは呆気にとられた。ガーネットが


「王太子殿下がルビー様にメロメロって、本当でしたのね……」


と呟く。サファイアも頷く。ガーネットはサファイアに向き直り


「今後のお茶会で、サファイア様のお兄様のこと教えてぐださいましね!」


と言った、サファイアは頷いたが、首をかしげ


「でも、オスカー様と一緒にいればハリー様の情報が入るので、ガーネット様の方が詳しくなられるのでは?」


と言った。それもそうかも、と思い


「では情報交換をしませんこと?」


と言った。サファイアは瞳を輝かせながら


「それ、楽しそうですわね」


と言った。そこにまた一人、人がやってきた。フォルトナム公爵だった。


「サファイア、楽しそうだね」


そう言ったあと、こちらに目を向けた。ガーネットは慌てて立ち上がるが、フォルトナム公爵は


「いいよ、座っていて」


と言ったあと、突然サファイアを立たせて抱き寄せると、サファイアに深いキスをした。そして、うっとりとサファイアを見つめると


「会いたかったよ、本当は君と一時も離れていたくないのに。君は特になにも変わりはないか?」


とサファイアに訊く。サファイアは顔を真っ赤にしてひたすら頷き


「あの、ガーネット様が見てらっしゃるので」


と言った。フォルトナム公爵はこちらを見ると


「あぁ、ディスケンス公爵夫人、申し訳ない、妻に会うのが久しぶりで我慢できなかった」


と苦笑した。ガーネットは微笑み


「なら、しょうがありませんわね。お二人でごゆっくりなさっては?」


と返した。フォルトナム公爵は


「すまない、そう言っていただけると助かるよ」


と、サファイアの頭に散々キスをすると


「失礼する」


と、サファイアを縦だきにして連れ去って行った。ガーネットは結局悪役令嬢はみんな幸せになったのね、良かった。と思いながら茶菓子に手を伸ばした。と、後ろからオスカーに声をかけられる。


「ガーネット、待たせてすまない。話し合いが思いの外長引いてしまった」


と言うとテーブルのお茶を見て


「どれ、私もお茶をいただこうかな」


と言った。ガーネットは


「どうぞ」


と向いの席に座るように促した。するとオスカーは微笑み


「では失礼して」


と、ガーネットを抱き上げると、椅子に座りガーネットを自身の膝の上に横抱きにして座らせた。ガーネットは流石に恥ずかしくなり、頬を両手で押さえると、恐る恐る


「オスカー、本当にこのままお茶を飲みますの?」


と訊いた。オスカーは微笑むと


「もちろん、何か問題でも? そうか、君はこのままだとお茶を飲みにくいね。私が飲ませようか?」


と言った。ガーネットは首をブンブン振ると


「何を仰ってますの、そんな……」


と言ったが、その隙に軽くお茶を口に含んだオスカーに口を塞がれる。無理やり喉に注がれる紅茶はとても甘かった。恥ずかしくて、オスカーの胸に顔を埋めると、オスカーはガーネットの耳をなめる。


「ひゃ!」


とガーネットが叫ぶと、オスカーは


「この続きは馬車の中でかな。時間もあることだし」


と、ガーネットを横抱きにしたまま馬車へと向かって行った。


こうしてかつて、ゲームの中では悪役令嬢と呼ばれた娘たちは、己の努力や、その持ち前の明るさ、素直さから旦那様に溺愛されてその生涯を終えることができたのでした。

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