《会社で大きなミスをしてしまって、落ち込んでます》
そんなLINEが届いた。これはチャンスじゃないか?
〈それはきっと、僕のことを考えてくれてるから?なんて思うのは、思い上がりかな?〉
ちょっとずつ、恋愛感情のようなものを出していく。
《もしかしてそうかもしれません。いけませんよね、仕事はちゃんとしないと》
〈そうだね。でも僕もミハルのことを考えてしまって、仕事に穴をあけそうになってしまうよ。どうしてだろうね?〉
こちらからは、具体的には“好き”と言わない、それはまだ後のことだ。
《そんな…。でもだとしたらうれしいです。こんな私のことを考えてくれるなんて》
〈不思議だよ、文字だけのやり取りなのに。そうだ!もっと近くに感じられるように写真を交換しない?〉
ここでふと思う、とんでもない女だったらどうしようか?と。夫にも子どもにも“女として終わってる”なんて言われたと言っていたけど。
《写真、ですか?そんな、翔馬さんに見せられるようなものじゃないです》
___普通はそう言うよね?
〈じゃあ、こっちから先に送るから、ミハルは写真の準備ができたら送って!〉
しばらくして、 写真フォルダから特別爽やかに撮れている写真を探して送っておいた。
《うそ!これ本当に翔馬さんですか?雑誌のモデルみたい、イケメンですね!》
その返事を見てほくそ笑んだ。
___これで、会いたいと言ってくるだろう
〈そうかな?でも、そう言ってもらえるとうれしいよ。だから、ミハルの写真も待ってるからね〉
〈思ってた感じと違って、カッコいいです!びっくりです〉
《そう?嘘でもうれしいなぁ。どう会いたいと思ってくれた?》
少し遅れて返信が届く。
〈私なんか翔馬さんから見たら、みすぼらしい女です。会えません〉
《やっぱりダメか。俺は全然ダメな男ってことだね》
〈そうじゃなくて、私がとても翔馬さんと釣り合う女じゃないということです〉
《釣り合う?会うだけなのに?まぁ、そう言うなら仕方ないね。ミハルとなら楽しい時間を過ごせそうだったんだけど残念だ。もういいよ》
なかなか思う通りに反応しないミハルに、イライラしてきた俺は、その後のミハルからのLINEを全部無視した。既読が付かなければ、それなりに焦ってなんとかしようとするだろう。
優しくしておいて突き放す、そうやって感情をこちらに向けさせる。
まるでゲームの作戦のように、ミハルを取り込むことを考えていた。