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「あ!皆見てー、優勝したよー!」
誇らしげな顔をしたミリアが、店の中心に立っていた。
「〝なにやってんのあいつ!?〟」
「第24回大食い大会優勝者は!赤髪のお嬢ちゃんだぁぁぁあ!」
「わぁぁぁ!」
店内は歓声に包まれた。
ミリアが壇上を降りて賞金を片手にこちらに向かってきた。
「まったく、こんなに口の周りを汚して」
メレナが屈んで、ミリアの口元をハンカチで拭いた。
「えへへ、美味しそうだったからつい」
「食いしん坊なんだから〜」
するとミリアは賞金の入った白い紙袋を、メレナに差し出した。
「はい、これ」
「どうしたのミリア?」
「いつもお世話になってるから」
ミリアは顔を赤らめながら顔をそらした。
メレナはきょとんとしていた。
いつも天真爛漫な子が、お礼をしてくれたからだ。
「まったく、この子は〜」
「あー、わしゃわしゃしないで〜!」
二人は微笑みあっている。
そんな二人を見て俺たちも幸せだった。
「あー!なにそのもってるやつ!」
ミリアが俺たちの持ってる串焼きを指さした。
「串焼きだよ。向こうの屋台で買ってきた」
孝典は振り向き、屋台を指さした。
「メレナ、食べに行こー!」
メレナの手を引き、グイグイ進んでいくミリア。
「僕らも甘いもの食べますか」
「そうだな」
「はい!」
俺たちはデザートを探しに、屋台を探索した。
―――その頃
道場の真ん中に、藁で作られたカカシが置いてあった。その前でマートンは、険しい表情をしている。
「スキルは使うんじゃねぇぞ」
「….あぁ」
「始めろ」
ドグラスの一声でマートンは動き出した。
「はぁぁあ!」
バシィィン…
部屋全体に衝撃音が響いた。
「….なってねぇな」
「…….」
「おめぇ、いつからそんなんになっちまった」
俯くマートンの迷いを、ドグラスは見逃さなかった。
「焦ってんのか?」
マートンの目が開かれ、動揺の色が浮かんだ。
「おめぇがまだ駆け出しの頃は、何も考えずに盾を使い、柔軟にこなしてた。だが今はどうだ、なにかに追われるように萎縮してる。違うか?」
「……」
マートンは重苦しい空気の中、口を開いた。
「…パーティーは全員才能を持ったやつばかりだ。どんどん離されていくのに危機感が募ってくばかりだった….」
「そんで、その戦闘スタイルに落ち着いたってわけか。」
ドグラスがマートンの胸に拳を当てた。
「悪ぃがなマートン、時間は待っちゃくれないぜ。
悩む暇があんなら、今すぐその面洗って出直してきな」
ガチャ…
「二人ともー、お茶入れてきたよー」
マートンの妹が入ってきた。
妹に無様な姿は見せられまいと、すれ違いざまに道場を出ていった。
「ちょっと、またお兄ちゃんをいじめたの〜?」
「ったく、グジグジしたやつに育てた覚えはねぇぞ」
ドグラスは目を閉じ、駆け出しの頃の、楽しそうに話をするマートンを思い出していた。
「(そのままでいいんだ、マートン)」
バシャ…
タライに入れた水を、頭からかぶり、俯くマートンがいた。
「あら、ここにいたの」
「….母さん」
隣にマートンの母が座った。
「なにか…思い詰めてるのね」
「…..」
「あのねマートン、少しずつでいいの。今日ちょっと進んだら、明日もちょっと進む。それでいいの」
母はマートンの肩に手を置いて、戻って行った。
マートンはもう一度水をかぶり、道場に戻った。
「遅かったじゃねぇか、水が出なかっ…」
マートンの眼に、鋭さが宿っていた。
「ふっ…やっとか」
「…俺はもう自分から逃げない、自分の為にも、何よりもパーティーの為に…!」
「いいんじゃねぇか?」
ドグラスは道場の物置から、紅黒い塊を運んできた。
ガタンッ…
「これがなんだか分かるか?」
「いや…」
「これは、昔の知り合いから譲り受けたS級の魔物の外殻だ」
その外殻からは禍々しいオーラが漂っていた。
ゴクッ…
マートンは圧迫感から唾を飲み込んだ。
「てめぇにはこいつを叩き割ってもらう。」
「……」
マートンの額には汗が滲んでいた。
ドグラスがそこから離れ、マートンが盾を拾った。
「うぉおおお!」
カンッ…
割るどころか、傷一つつかなかった。
「はぁぁあ!」
それから何十分、何時間経ったのだろう。
月明かりだけが二人を照らしていた。
マートンの手には、未だに盾が握られていた。
―――みんな!
俺は難しいことはわからない、だから〝雷龍の鉤爪〟の皆の事だけは、俺の命にかけても守る!
―――――――
ドクンッ
マートンの眼はいつになく落ち着いていた。
静かに盾を構える。
次の瞬間―――
すべての力を盾に乗せた。
「うらぁぁあ!」
ガンッ…
「だめ……か……」
マートンは地面に崩れた。
ドグラスが眉を細めながら、外殻を見つめる。
ピシッ…
「やりやがった…!」
外殻にヒビが入ったのだった。
「ハハハッ、まさかほんとにやっちまうとはなぁ、大したもんだぜマートン」
ドグラスは誇らしげに月を見上げた。
(つづく)
《ステータス》
・三田 孝典 (みた たかのり)
・レベル2
・F級冒険者
・【固有職業:きのこマスター】
・【一般級:霧吹き】
【一般級:ゴム手袋(薄手・ピンク)】
・【ウィンドウ】【マップ:レベル1】
【会話:レベル1】
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最後まで読んで頂きありがとうございます!
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〝ドグラスの試練を無事達成できたマートン。仲間の為に振るう盾は何よりも強靱だった〟
次回お楽しみに!
(*・ω・)*_ _)ペコリ
コメント
1件
おお、第8話!ミリアの大食い優勝は可愛かったし、メレナとのやり取りもほっこりしたわ〜。でも何よりマートンの修行パートが熱かった!「自分から逃げない」って決意して、あのS級の外殻をヒビ入れるまでやり抜く姿にグッときたよ。ドグラスの厳しくも愛情ある指導も良い味出してるね。次回も楽しみ!🔥