第1話:ドローンの夜
倉庫の屋根の上、冷えた風がコードを鳴らしていた。
サンタ技術部の青年・大河(たいが)は、ドローンの制御端末を覗き込みながらモニターを調整している。
短く刈り上げた髪に風が当たり、薄いパーカーの上から赤いベストを羽織っていた。瞳は焦げ茶で、少し眠そうな目つき。だが指先は正確に動き、空のイルミネーション配置を整えていく。
背後から、ママさんバイヤーの岸本が顔をのぞかせた。
ふわっとした茶色の髪をニット帽に押し込み、手にはトイザらスの紙袋。頬が寒さでほんのり赤い。
「相変わらず、寒いところでやってるのねえ」
「温かい部屋でプレゼント包む方が羨ましいですよ」
大河は笑いながらも、モニターから目を離さなかった。
「今年はドローン、何台飛ばすの?」
「二十機。新しい型も混ざってる。……ほら、サンタの影、動くでしょ」
岸本は画面をのぞき込み、空を流れる光の群れを見上げた。
トナカイの輪郭がゆっくり描かれ、サンタのソリが滑る。
「ほんとに、夢みたいね。うちの子、あれ見るのがいちばん楽しみなんだから」
その言葉に、大河は小さくうなずく。
「俺も、子どものころ、これを見て信じてたんですよ。サンタって、本当にいるんだって」
夜空の風が止み、
二人は同時に空を見上げた。
赤く瞬く光が一つ、ほかのドローンよりも高く、静かに浮かんでいた。
まるで、本物のソリのように。








