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どこまでも永遠と続くような時間の中で、どこまでも冷ややかな空気が肺に積もる。
兄さんが砕けたあの日から、幾らか時間が経った。
俺の部屋にある唯一のカレンダーは、1922年で止まっていた。
まだ兄さんの温かさを忘れられないこの体には永遠の冷たさだけが残っている。
どうやら俺は俺自身の能力で自分が凍って死ぬ事はできないらしい。
家具も何もかも凍ったくせに、俺だけは凍らない。
きっと、それが俺への罰なのだろう。
目の前にあるドアは、内側からも、外側からも、完全に凍りついている。
氷柱も無造作にできている。
そんなドアの反対側にある、家の門が見える窓を目をやる。
そこは今日一日触れていないせいか、南を向いているその窓は朝日で既に氷は溶けていた。
窓のすぐ隣にある氷に覆われた木の椅子。
それにそっと腰を下ろした。
冷たく凍った、硬い椅子の感覚がすぐに伝わってくる。
窓の外に目をやると、黒い車からソ連さんが誰かを抱えて出てくるのが見えた。
見た目的には、どこかの国の化身だろう。
正直、俺にはどうでもよかった。
兄貴が戦争が終わったとか言ってたから、きっと、捕虜かなんかだ。俺には関係ない。
それから数分後、また、奥から黒い車が走ってきた。
今度は、兄貴が誰かを両の手で抱えて出てきた。
昔、兄さんが兄貴の事をあんなふうに、お姫様抱っこ?をしてた事があった。
兄貴は兄さんにその日1日口を利かないぐらい怒ってたが、俺と兄さんは馬鹿みたいに笑っていたのを憶えている。
楽しかったなぁ。
辛い、なぁ。
そんな感情が脳裏から離れない。
苦しくなって、また息が詰まりそうだった。
肺が凍り、喉まで冷たく凍ったような錯覚をおこす。
こういう時は決まって、部屋にある物を更に氷漬けにしてしまう。
楽しさや喜びが忘れられないから、より今の苦しみが表立ってしまう。
そんな事をしていたら、もう、外に兄貴は居なかった。