相変わらず綺麗だねとか、ずっと前から好きなんだとか。
さっきから脳内を埋めつくしている言葉は未だ口にできないまま、気づけば飲み始めて1時間ちょいは経っただろうか。
少しずつアルコールに溺れつつある目の前の彼女は、楽しそうに昔話を続けている。
『ロボロ、今活動いい感じ?』
「まぁ、ありがたいことにね。コラボとかも結構させてもらってる。」
『そっかそっか。私も今度見てみるね、動画』
「今見せたろうか?」
『大丈夫、自分で見るから』
「はは、そう言うと思ってた」
ふふ、と笑ってまた1口、彼女はアルコールを喉に流す。
頬を少しだけ赤くして、いつもより少し水分が多めの瞳。最後に会った時から特に変わってなくて安心していると、突然引き寄せられたかのように目があって驚く。
すぐに逸らそうかと思ったけど、大きく綺麗な目に目線が絡めとられて離れられなかった。
彼女は目尻を下げて柔らかい笑みを見せた後、恥ずかしそうに呟いた。
『ロボロ、昔から変わってなくて安心した。
私の周りの人、みんな変わっていっちゃうから。』
「俺だって、〇〇が変わってなくて安心したで」
『そう。ならよかった』
そう言ってくしゃりと笑った後に、でもね、とひと言付け足す。
なにかを思い出すかのような表情に、なんだか嫌な予感。
「でも、何?」
恐る恐る聞いてみると、彼女が幸せそうに笑うもんだから、やっぱり聞かなければよかったかも、と少し後悔した。
だってもう、その口から紡ぎ出される言葉を予想出来てしまったから。
『でもね、私だって変わったところ、あるんだよ』
「…どこ?」
『あのね、私彼氏ができたの。』
あぁ、変わってないのは俺だけか。
何年もずっとこの恋心を抱えてきて、ずっと彼女一筋で生きてきたのに、もう既に彼女は特別な人を見つけてるなんて。
もう、俺の知ってる彼女はこの世界にはいない気がした。
前まで、こんなに幸せそうに笑うこともしらなかった。こんなに嬉しそうな声色、知らなかったのに。
「おぉ、おめでとう。よかったじゃん」
『ありがとう、ロボロも彼女とかいないの?YouTuberってすぐ彼女出来そうなイメージ。』
「お前さ、YouTuberにどんな偏見持ってんの。いないよ、彼女なんて」
『そっか。でも恋人がいるっていいよ。帰ってきたら好きな人が家に既にいるの。もう疲れなんて秒でとんじゃうの。それでね___』
少しずつ呂律が柔らかくなってきた彼女は、目をとろんとさせながら饒舌に話し始める。
いつもこうだ。酔ってる時に口数が多くなるのは。
でもきっと、彼女の彼氏はこんなことよりもっとたくさんの彼女を知ってるはずで、そんなことを考える度に胸が苦しくなり泣きたくなる。
『わたし、すごく好きなんだと思う。あの人のこと。』
甘い声でそんなことを言われて、もう何も言葉が出なくなる。
言おうとしていた言葉を飲み込んだのは、もういつのことだっただろうか。
”ずっと好きだったんだけど”