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#普通
野々さくら
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ありあ
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翌日。5月1日。午前9時。
一同は前日と同じように、茶畑で摘採作業を始め、終わりの時間が近づいていた。
2日目ということもあり、昨日より手つきは格段に慣れている。
信愛も迷うことなく新芽を摘み取り、リズムよくカゴへ入れていく。
やがて、カゴいっぱいに茶葉が積み重なった。
「よし!」
満足そうに頷くと、信愛はカゴを持ち上げる。
「カゴが一杯になった!秋穂さんに渡さなきゃ!」
近くで作業していた朝陽の方へ目を向ける。
「朝陽くん?どんな感じ?」
朝陽は自分のカゴを見下ろしながら答えた。
「僕のももうすぐで一杯になります」
信愛は優しく微笑む。
「なら手伝うよ」
朝陽は少し恐縮したように頭を下げた。
「あ、すいません、ありがとうございます」
その時だった。
朝陽の視線が信愛の背後へ向く。
「あっちを──」
言葉が途中で途切れた。
「!!!!!!」
顔色を変えた朝陽が叫ぶ。
「あ!先輩危ない!」
「え?」
何が起きたのか分からないまま、信愛が振り返ろうとした瞬間。
朝陽はとっさに飛び出し、その勢いのまま信愛へ体当たりした。
「いったっ!」
突然押し飛ばされた信愛は地面へ倒れ込む。
「ちょっと朝陽くん!?いきなり何するの!」
朝陽は息を切らしながら必死に首を振った。
「すいません先輩、でも
菅生先輩の様子が明らかにおかしくて」
「え? 茜が?」
信愛が茜へ視線を向ける。
そこには、鎌を握り締めたまま微動だにせず立ち尽くす茜の姿があった。
俯いたまま、顔は見えない。
異様な静けさだけが、その場を包み込む。
信愛は戸惑いながら声を掛けた。
「あ、茜?」
朝陽は震える声で続ける。
「今、菅生先輩・・白縫先輩を
鎌で斬りつけようとしてたんです」
「え!?茜が!?」
返事はない。
茜はただ黙ったまま立ち尽くしている。
「茜?どうかした?」
ゆっくりと顔を上げた茜の口から漏れたのは、天虎村に来た日の夕方、信愛が見た不気味な夢の中で、子供が口ずさんでいたあの歌だった。
「オジロクオバサガ喉リ泣ク・・・」
信愛の表情が凍り付く。
「え?」
続けて、低く掠れた声が響く。
「重イ鎖ガコノ地ニ響ク」
茜はニヤリと口元を歪めた。
その笑みには、いつもの明るさは一切なかった。
鎌を握り締めたまま、ゆっくりと信愛へ歩み寄る。
「ちょっと茜!」
しかし茜は止まらない。
「子供ヲ縛ル鎖ガ響ク」
そう呟くと同時に、頭上高く鎌を振りかぶった。
鋭い刃が、信愛へ向けて振り下ろされる。
「菅生先輩!」
朝陽が叫び、すぐさま茜へ飛びついた。
そのまま背中へ覆い被さり、鎌の軌道を逸らそうとする。
「何やってんですか!バカな真似はやめて下さいよ!」
だが茜は耳を貸さない。
「ジャラジャラ・・・ガシャガシャ鎖ヲ鳴ラシ」
不気味な言葉を繰り返しながら、朝陽を背負ったまま力任せに身体を振る。
「オジロクオバサガ・・来ルヨ・・来ルヨ」
次の瞬間。
茜は信じられないほどの怪力で朝陽を振り解いた。
その力は、とても女子高校生とは思えないほど強く、朝陽は軽々と投げ飛ばされ宙を舞う。
「うわぁ!」
朝陽が投げ飛ばされた光景を目の当たりにした信愛は、愕然としながら茜へ叫んだ。
「茜!どうしちゃったの!茜ったら! ねえ!」
茜はゆっくりと顔を上げる。
その瞳には、もういつもの明るい光は宿っていなかった。
震える唇から漏れたのは、悲痛な声だった。
「僕たちは・・恨んで無いのに
なんで・・なんで・・なんで!」
「え?」
信愛が問い返そうとした、その時だった。
「それってどういう──」
言葉の途中で、駆け寄ってくる足音が響く。
焔垂とさくらが血相を変えて現れた。
「何やってんだお前!」
焔垂が怒鳴り声を上げる。
「何バカな事してんのよ!」
さくらも叫びながら茜へ飛びついた。
二人は力を合わせ、暴れる茜の腕を押さえ込む。
「何があったんだ!?」
焔垂の問いに、信愛は険しい表情で答えた。
「多分茜は・・・霊に取り憑かれてる」
茜は苦しそうに唸る。
「う・・うう・・・」
まるで獣のような低いうめき声が喉の奥から漏れ、身体が激しく震えた。
信愛は決意を固める。
「とりあえず除霊しなきゃ」
さくらは必死に茜を押さえながら叫んだ。
「お願い!信愛!茜を助けて!」
信愛は静かに頷く。
「分かった!」
ゆっくりと両手を胸の前で合わせ、深く息を吸う。
辺りの空気が張り詰める。
信愛は澄んだ声で経を唱え始めた。
「霊堂霊冥霊界遊鬼──
霊障消滅安寧祈願──
浄化清明合掌礼拝──
体を解放せよ──
離脱を願いて──
霊魂退散」
その言葉が茶畑に響き渡ると同時に、茜の身体から力が抜けた。
糸が切れた人形のように、その場へゆっくりと崩れ落ちる。
「茜? 大丈夫? 茜?茜?」
さくらが慌てて肩を揺する。
信愛は安堵の息を漏らしながら言った。
「とりあえず家の中に連れて行こう」
焔垂も頷く。
「ああ、そうだな」
コメント
1件
いやー、今回もゾクッときたわ…!茜が突然おかしくなって、あの不気味な歌を口ずさみながら鎌振りかざすシーン、マジで鳥肌立った。朝陽くんの咄嗟の体当たりも熱かったし、信愛の除霊シーンはまさに「来た!」って感じ。連載97話、まだまだ核心に迫ってる感あって続きが気になりすぎる🔥 作者さん、今回も面白かったです!