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海洋高校−物語は波のように−

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21 - 第17話「『あの人と話すと、自分の声が変になる』」

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2025年08月14日

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第17話「『あの人と話すと、自分の声が変になる』」
登場人物:ウラメ=ギルス(波属性・教員)/シオ=コショー(潮属性・非常勤)




ウラメ=ギルスは、波属性のバトル演習教官。

背は高く、くせ毛が波打つように肩まで垂れている。

ふだんは無表情だが、話すときの声は強くよく通る。

生徒には人気がある。“怒られることが安心”と言われるほど。


けれど。


職員通路の曲がり角で、シオ=コショーとすれ違うときだけ。

「……ああ」と言いかけた言葉が、必ず水に濁った。




かつて、シオは常勤の教師だった。

掃除をしているのも、好きでやっているのではなく、

**「出勤できなくなったからだ」**ということを、ウラメは知っている。


原因は、自分だとも。




その日、午前の講義が終わったあと、

ふと、生徒にこう聞かれた。


「先生は、共鳴がうまくいかなかったこと、ある?」


ウラメは答えかけて、やめた。


そして放課後、使われていない水草水槽の前に立った。

シオ=コショーは、ホースで水面をゆっくり撫でていた。




「……ここに、来るんですね」


「……来てる。けど、別にあなたに会いに来たわけじゃ、ないから」


そのとき、ウラメの声が――いつもと違う、

**「薄くて、高くて、にごった」**音になった。


「……その声、昔の波じゃない」


「昔の……?」


「“先生”になる前の波のまま喋ってる。あなたは、わかってないかもしれないけど」




ウラメは答えなかった。

でも、彼女の声が揺れていたことは、きっと水面が一番よく知っていた。



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