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雲の向こうには、いつも青空が広がっている。『若草物語』の一説
回想 アカデミー入学後20日目
「お前みたいな貧困層出身の奨学金で全額を賄う生徒と一緒なんてごめんなんだよ。」
アカデミーにもこういうバカげた生徒がいるのか。ある少年に対して2人の生徒が罵詈雑言を浴びせる。そして俺はそのような正義や論理の欠如を放置するような人間じゃない。
「貧困層の学生向け奨学金制度に受かるにはGPA3.5は必要だ。で、君たちは当然4.0あるんだろ?『貧困層出身の最低な奴』をバカにできるならさぞかし素晴らしい成績なんだろうな。だとしたら俺と同じクラスなはずなんだがな?成績でも人間性でも負けている事実を認めて少しは高い成績を得る努力をしたらどうかな?それともアルフレッド・クルーズを敵に回したいのか?」
俺は少年をかばうように正面に立ち、ゾッとするような冷たい視線を2人に向けつつ、明瞭な言い方をする。多くの人がこれの温厚な面を知っている。だからこそこのような言い回しと視線は効き目抜群だ。その2人はあっと言う間に逃げていった。
「人をこき下ろすことで自己肯定感を身につけるような嫌な奴。戦場で真っ先に死ぬタイプだな。ところで、大丈夫かい?」
俺はその少年を見やる。芯の強さを示すような細い瞳、キューバかプエルトリコにルーツがありそうな顔立ち、支給された制服をカッチリと着こなす生真面目な様子。つまり好ましいタイプだ、培養液に浸かった最悪な人間ではない。
「ええ、大丈夫です。助かりました。」
「俺はアルフレッド・クルーズだ。君は?」
「ミゲルです。ミゲル・エスポジート。」
「一緒のクラスだよな?その名前は聞き覚えがある。」
「その通りです、ミスター・クルーズ。」
「その呼び方はやめてくれないか、ミゲル。俺は君と友人になりたいんだ。」