テラーノベル
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蝉の声が、嫌になるほど響いていた。
都会ではあまり聞くことのない、あまりにも近くて、あまりにも大きな蝉の声。
駅から祖母の家まで続く坂道を歩きながら、俺は額に浮いた汗を手の甲で拭った。
「暑すぎるだろ……」
夏休み、僕は数年ぶりに祖母の暮らす田舎へ来ていた。
特に何か目的があったわけじゃない。
ただ、母に「たまにはおばあちゃんのところに顔を出してきなさい」と言われたからだ。
都会から少し離れただけなのに、ここは時間の流れが違うような気がした。
車の音も少ない。
高い建物もない。
聞こえてくるのは蝉の声と、遠くを走る電車の音くらいだった。
そんな静かな町を、俺はなんとなく散歩していた。
祖母の家にいてもすることがない。
スマホを眺めているのにも飽きた。
だから、知らない道を適当に歩いてみようと思った。
しばらく歩いていると、古い校舎が見えてきた。
田舎の小さな高校らしい。
夏休みだから人の気配はほとんどない。
校門の横を通り過ぎようとした、そのときだった。
――風が吹いた。
校舎の窓から抜けてきたのだろう。
夏の熱気を含んだ風が、俺の横を通り過ぎていく。
そして、その風に乗るように。
一人の少女が、校舎の外に立っていた。
白い服。
肩まで伸びた、綺麗な黒髪。
風に髪が揺れて、彼女はそれを片手で押さえていた。
ただ、それだけだった。
なのに。
俺は、足を止めていた。
少女は遠くを見つめていた。
何を見ているのかは分からない。
どこか寂しそうで、それでいて夏の光の中に溶けてしまいそうなほど綺麗だった。
蝉の声が遠くなる。
時間が一瞬だけ止まったような気がした。
――綺麗だ。
それが、俺が彼女に抱いた最初の感情だった。
名前も知らない。
声すら聞いたことがない。
それなのに、目を離すことができなかった。
少女がこちらを向いた。
目が合う。
心臓が、一度だけ大きく跳ねた。
少女は少しだけ目を細めると、風に揺れる髪を耳にかけた。
そして、そのまま校舎の中へ消えていった。
「……」
俺はしばらく、その場から動けなかった。
たった数秒。
それだけの出来事だった。
なのに、頭の中から彼女の姿が離れない。
夏の日差し。
蝉の声。
風に揺れる黒髪。
そして、あの目。
祖母の家へ戻る道の途中も、俺は何度も後ろを振り返った。
もちろん、そこに彼女の姿はなかった。
コメント
1件
**はる。です!** 読んだよ〜「夏風に揺れる」! 蝉の音と田舎の空気感がすごくリアルで、冒頭から一気にその世界に引き込まれた。主人公がふと立ち止まる瞬間の「風」と「少女」の描写が、めちゃくちゃ綺麗で儚いんだよね。何気ないひとときなのに、心臓が跳ねる感じ、すごくわかる。 たった数秒の出会いなのに、ずっと心に残る感じがして、続きがすごく気になる! この先どうなるの? 楽しみにしてる🔥
なみ
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ハルヽ(‘ ∇‘ )ノ。
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