テラーノベル
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深夜になると。
人形たちはそっと動き出す。主人に見つからないように。俺は、愛する主人にそっと口付けたーーーーー
街を歩いていたら、目についたアンティークショップの雰囲気に誘われて、俺はふらふらとその中へと入って行った。ショーケース越しに見える、タキシードを着たすらりとした猫の人形に、懐かしいアニメの面影を感じたからだ。
💙「いらっしゃい」
奥から若い店員の声がした。
姿を見せると、色白の美しい青年で、パーマのかかった柔らかい髪の毛に左耳にはピアスが光っている。笑顔を作るのは苦手な性格らしく、照れたように笑って、俺を出迎えた。
💙「好きなの見てってよ。と、言っても俺は単なるバイトなんだけど」
💚「ああ……はい」
それにしても、外から見た印象と違って、店の中はがらくた小屋みたいに雑多だった。照明のシャンデリアは綺麗なのに、それにくっつきそうな背の高い人形は某プロダクションの怪獣の着ぐるみだったり、新旧国内外の品物がぐちゃぐちゃに織り交ぜて売られている。アメコミやアニメのものもある。それとは別に、渋い陶器や、年代物の家電なんかも飾ってあった。
💚「あ……」
店の一角に、俺は気になるコーナーを見つけた。
人形がまとめて、並べられている。その中の、美しい黒髪の人形に俺は目を奪われた。畏まったタキシードを着ている。隣りにはウェディングドレスを着た花嫁の人形があり、2体は対になっていた。セルロイド製で、どちらもとても可愛らしい顔立ちをしている。
💚「これください」
俺は迷わず、タキシードの人形を指差した。
💙「はいよ。彼女の方は?」
💚「あ、これペア売りなんだ。2つ一緒だといくらですか?」
💙「1万円」
困った。今日はそこまで持ち合わせていない。
💚「コレひとつだと?」
💙「ごひゃく…いや、1000円でいいよ」
流石に安すぎると思ったのだろう、店員は、今その場で思いついたような金額を言った。
💚「あ。じゃあ男の方だけで…。それじゃダメですか?」
💙「あ、いいよ別に。聞いてみただけ」
そう言うと、店番の青年は、ぐるぐるっと人形を乱暴に紙に包み、手渡してくれた。
💙「可愛がってやってくださいね」
💚「あ、はい」
特に深い意味はなかっただろう。
それでもなんだか俺は照れて、頭を掻いた。こうして、その人形はその日から俺の大切な宝物になった。
コメント
4件
めめが人形ってことか!面白そうすぎる😊
え!ヤバい! 黒髪?タキシード?好きだわ💖 また、今度は何させる気なんですか? 楽しみすぎるじゃないですか〜😆😆