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鉱脈の陸海賊

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鉱脈の陸海賊

11 - 第9話「ドリルの音が止まる時」

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2025年06月21日

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第9話「ドリルの音が止まる時」

「……音が、止まった……?」




それはドリルが砕けたわけでも、燃料が切れたわけでもなかった。

確かに回っているのに、“音”がしなかった。


カンナは操縦席で、凍ったように身を固めた。

《吠える爪》は全速で回転している。振動もある。火花も出ている。

なのに、“掘る音”がしない。





数分前――


砂煙の向こうから、**陸海賊団《ザラド部隊》**の重戦車群が現れた。

無人機を先行させ、斜面の鉄鋼層ごと制圧しようとしていた。


キイロは髪を風になびかせ、背後から叫ぶ。


「前、三両!後ろにも回ってる!挟まれる!」


ミレが急いでスパナを投げ、ギアノートの後輪に火花を走らせた。

焦げ茶の一つ結びが、油と熱風でばらける。


「駆動に負荷が集中してる!このままじゃ軸が砕ける!」


「じゃあ、抜ける!下に掘って、逃げる!」


カンナは迷わずドリルを起動。

火花と轟音をまとって、ギアノートごと地面を斜めに削るように突っ込む。


重戦車の砲撃が、尾を引いて後ろから爆ぜる。


「うたってよ、吠える爪……あたしたちを通せって!」


だが――


斜面に突き立てたドリルが、突然“黙った”。





「……なにこれ。動いてるのに、掘れてない……?」


キイロが走ってきて、地面に耳を当てる。

そして、ゾクリと背筋を伸ばした。


「地面の中が、音を拒んでる。振動が、返ってこない……」


「音が、吸い込まれてる……?」


ミレは目を見開き、ギアノートの足元へ飛び降りる。


「反響ゼロ。こんな地層、ありえない!」


敵の砲撃が迫ってくる。

鉄鋼片が空を裂き、火と風が交錯するなか、

カンナはドリルの回転を止めた。


静寂。


爆発音、金属の軋み、仲間の叫びがあっても、心の中心だけが凪いでいた。


……なにも言わない。

地の奥が、黙ってる。

なら、こっちも……黙るしかない。




「ミレ、キイロ。今すぐ全機能、停止して」


「は?」


「ドリルも、電源も。全部止めて、動かない」


「でもそれじゃ……!」


「この“無音”の中にしか、抜け道はない。音を出したら、潰される」





機能停止。沈黙。息をひそめる三人と一匹。


敵の重戦車群が崖の上に到達した時、地中のギアノートはまるで岩の一部のように沈黙していた。


──爆音が遠ざかる。

──機械の気配が離れていく。

──静けさの中、ふいに“ぬるり”と風が吹いた。


ヤスミンが尾を立て、空間の奥をじっと見つめている。


カンナは目を開ける。


……通れって、言われた気がした。




「ここ、ある。通れる道。沈黙の下に、ひとつだけ……通してくれる気配がある」


彼女はドリルに触れたが、まだ起動しない。

代わりに、手で地面をなぞりながら前進した。


無音のなか、ほんの少しだけ、“聴こえない何か”が確かにあった。





地中から抜け出したとき、カンナは深く息を吐いた。

背中のドリルはまだ冷たい。


キイロがぽつりとつぶやいた。


「掘らなかったのに、掘った気がするな」


ミレは笑って、地面に寝転がった。


「こういうのもあるんだね……掘るって」


カンナは何も言わず、沈黙のまま空を見上げた。

そこに、なにもないけど、

“さっきの無音”がまだ残っている気がした。

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