朝。
夏らしい熱気の籠った風が頬を擽る。
そんな中私に伝えられたのは
『………舞踏会…?』
舞踏会の誘いだった。
「はい。そうなんです…」
少し下を向いて話すベリアン。
私もかなり急な伝えに思わず眉を寄せてしまう。
『まぁ私は踊れるからそう心配せんでも良いが…』
一つ問題があった。
そう。
私の耳をどうやって隠すか。
神だから何でもできるというわけではない。
流石に妖狐の特徴の耳を隠すという発想は思いつかないだろうからな。
「耳…ですよね…」
ベリアンも心配して言ってくれる。
「そうか?俺はこの耳があったほうが安心するが…」
そう言って耳を撫でるのは
バスティン・ケリーという執事だ。
ロノから
“あいつめちゃくちゃメシ食うんすよ!昨日だって茶碗10杯は食べてるし…”
そう一言加えられた事を思い出す。
『バスティン…あまり耳を触るなと言うておるじゃろ…』
「!そうだった…すまない…」
すぐに離してくれた。
結構いい子である。
『次からは気をつけろよ…耳は敏感じゃからの…』
「そうなんですね…」
分かっていないのか耳を触ってくるベリアン。
『んぁっ!?…だから触るなと言うておるじゃろ!』
「わっ!?すみませんつい触ってしまって…」
ベリアンもすぐ反省してくれるのでいい人だ。
「主様そんなに耳弱いんですか?」
頬ずえをつきながら質問をするロノ。
このことは流石に執事達に知って欲しいと思い
どうしてそうなったのか話すことにした。
『……昔…ある気に入られた人間にそれは大層気に入られての…そやつは私の耳の感触を気に入ったのか毎日毎日触りよって…』
最初の本題を忘れて聞く三人。
いつの間にか私も忘れていた。
『そうしていくうちに反応するようになってしまったのじゃ…』
わけを話すと
「なるほど…そんな事があったんですね…」
「昔か…」
「より一層気をつけなきゃな…」
そう真剣に悩んでいる姿が見えた。
「……あの…主様のお耳をどうするかで話していたんじゃないんですか?」
「あ、あぁそうだったね…ありがとうラト君」
ベリアン達の後ろの方で話すのは
ラト・バッカという執事と
ミヤジ・オルディアという執事だ。
「!そうでした…」
『まぁそれだけ楽しめたのなら良かった』
そう話して本題に入る。
「帽子で隠すのはどうですか?シロさんもあの特徴的な耳を隠すために帽子を着けているでしょう?」
「お!ラトさんそれいいですね!」
「そうだなそうしようか」
「ふふ、フルーレ君に言っておきましょうか」
「あぁそうだねベリアン」
和気あいあいと話すその様子を見て微笑んでしまった。
舞踏会3日前の事であった。
そして当日。
昨日は舞踏会に使う食材の調達やダンスを練習したりと大変な一日だった。
いつもの洋服ではなく藍色のドレスを着て…頭に帽子をかぶり屋敷を出た。
「馬車での移動お疲れ様です主様」
そうフルーレが言う。
手を差し出して丁寧にエスコートをする。
ふと見たフルーレの顔は綺麗な笑顔だった。
それを見てこちらも笑顔になるのだった。
会場は眩しいくらいに煌びやかで酔いそうだった。
沢山いる人の中には悪魔執事も数人いて少し安心する。
『……よし!頑張るとするか!』
そう意気込んだ。
「……あれがボクの主様か〜!すっごくかわい〜」
「そうだねそんな方に出会えるなんて俺ってラッキー!」
「はぁ…全く…」
「…………ふん」
舞踏会はまだ始まったばかりである。
コメント
4件
ドレスがきになりすぎる。かわいい。ぜったい