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ごきげんよう、シャーリィ=アーキハクトです。あの戦いから半年が経ち私も10歳となりました。ついに2桁です。幼女から少女へとランクアップしたと言えるでしょう。開花の時です。えっへん。

さて、私はあの日から変わらぬ日常を過ごしています。変化があるとするなら、シスターに戦い方を学んでいることくらいでしょうか。あの日は地の利がありましたから勝てましたが、子供が大人を相手にするには正しい技術が必要なのは明白。渋るシスターを口説き落としてお稽古の毎日です。

シスターの教えは型などなくより実戦に適したものであり、体術から剣などの近接武器、銃などの飛び道具まで多岐にわたります。実戦向けな所は、お母様との日々を思い出します。つまり、身体中が痛い。シスターはお母様と同じ手加減知らずなスパルタでした。親近感が湧きますね。ふぁっく。

そんな秋の日。

「ねぇ、シャーリィ。なにこれ?」

「さて、何ですかね?」

遊びに来ていたルミと、大人の数倍の高さはあるであろう大木を見上げています。さて何があったか。昨日の話です。

マーサさんからシスターに買って頂いた苗も順調に育ち、苗木と呼ぶに相応しい大きさになりました。木の苗だったみたいですね。

こうなると、鉢植えでは限界が来るので教会の裏手にある開けた場所に植えてみました。ここなら周りに成長を妨げるものはありませんし、成長しても邪魔になりません。どんな木になるか分かりませんが、これからゆっくりと育ってくれればと思っていたのですが。

「ルミは農家の出身でしたね。一日でこんなに育つ木があるのですか?」

「いや、聞いたこともないんだけど。普通十数年かけて成長するものだし。一日でこんなに成長する木があったら、森なんて直ぐに出来ちゃうよ」

「私の知識と常識に違いがなくて安心しました。環境対策が叫ばれている昨今を見れば一目瞭然でしたね。では、これは何でしょうか」

「分かんないよ、マーサさんに聞いてみたら?売ってたのはマーサさんなんでしょ?」

「それもそうですね、ちょうど来ているので聞いてみましょうか」

都合が良いことに、マーサさんは本日教会に来てくれています。早速話してみて、見て貰いましょう。

「なにこれ?」

マーサよ。今日は休暇でカテリナやシャーリィと会うために教会へ遊びに来ていたのだけど、シャーリィに以前売った苗が成長したから見てほしいと言われたの。大切にしているみたいだし、その後が気になって裏手に来たのだけれど……なにこれ?確かに生命力が溢れていたけど、これは予想外だったわ。

「昨日植木鉢から植え替えたらこうなりました」

「なるわけ無いでしょう、非常識にもほどがあるわ」

本当、この子は見てて飽きないわね。またやらかしてくれたんだから。

「うーん、これが何なのかは分からないけど……ん、この木は周りに生命力を振り撒いているわね。それもかなり強力なくらい。森の御神木を思い出すわ」

「つまり?」

「つまり、周りの土地が豊かになるってことよ。それも、環境が変わるくらいにね」

「ほう、豊かになるのですか。それは良いことを聞けました」

ほら見なさい。何か考え込んでるわ。この子から何が飛び出すか、今から楽しみね。

シャーリィです。結局何の木か分かりませんでしたが、周囲の土地を豊かにするのだとか。これを利用しない手はありません。

私がこれから成すことを考えれば、先立つものは必要不可欠。いつまでもシスターに甘えるわけにはいきません。

その為にも資金が必要であり、それを用いた組織の設立が必須。復讐を成すためにも、生き延びるためにも避けては通れません。まあ、取り敢えずは。

「土壌が豊からしいので、耕して野菜でも植えてみますか」

「そうだね。いきなり難しいのは避けて、取り敢えず簡単なものから作ろっか」

「選択はルミに任せます。私は農具を借りてきますね」

農家出身で知識もあるルミと一緒に大樹の周りに農地を設営してみるのでした。野菜の売買でも小さな利益にはなるでしょう。

ちなみにルミは相変わらず白いケープコートを羽織っています。同じ十歳なのに、またお胸が成長している様子。じぇらしー。いや、成長期に期待します。私はこの一年でほとんど成長していませんが。

時は流れて一ヶ月後、農作業に従事していると、収穫できました。

「いやいや、いくらなんでも早いよ!?しかも丸々と成長してるし!たくさん採れるし!なにこれ!怖いんだけど!」

「ついでに美味しいです。もう普通のお野菜は食べたくありません」

「食べちゃったよ。シャーリィは勇気があるなぁ。無謀と言うか」

無謀とは失礼な、食べられそうだから食べただけです。

取り敢えず植えてみたニンジン、大根、キャベツ等の野菜はわずか一月で、それも通常より多量かつ大柄なものに成長しました。それに味がどれもこれも美味しい。貴族令嬢として良いものを食べてきた経験から見ても、明らかに味の良さが際立ちます。美味しく大柄で短期間に収穫できる。大樹効果恐るべし。拝んでおきましょうか。

「これ、絶対に売れるよね」

「売れますね。試しにマーサさんのところへ持ち込んでみますか」

早速ルミと一緒に収穫物の一部をターラン商会へと売り込んでみると。

「シャーリィ、うちで独占させてくれない?その代わり分け前には期待して良いわよ」

流石はマーサさん、真っ先に食いついてきました。ブランドなどの付加価値をつけるためには独占が一番なのだとか。まあ、商売は分かりませんから丸投げです。こうして私は非常識な農業から資金調達を始めるのでした。

暗黒街のお嬢様~全てを失った伯爵令嬢は復讐を果たすため裏社会で最強の組織を作り上げる~

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