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「亜佑美さん」
「何?」
「改めて……これからもよろしくお願いします」
「それは私の台詞だよ」
「え?」
「私ね、これまでそれなりに男の人と付き合ってきたけど……朝陽くん以上の人に出会えたことはなかったし、こうして同棲するのも朝陽くんが初めてだもん」
「え!? 俺が初めて?」
「うん。言ったと思うけど、部屋に入れたのだって朝陽くんが初めてだったし。まあ、そもそも一人の人とそんなに長く付き合うこと自体があまりなかったんだけどね」
「でも……俺たちも、まだそんなに長いわけじゃないし……」
朝陽がそう言うと亜佑美は少し考えるように目を細めた。
「そうだよね。そういえば私たちもうすぐ半年なんだよね」
改めて考えてみれば付き合い始めてからまだ半年も経っていない。
それなのに、亜佑美にはもっとずっと長い時間を朝陽と過ごしてきたような感覚があった。
「なんか朝陽くんとはいつも一緒にいるような感覚だったから……まだそれだけしか経ってないのが嘘みたい」
「言われてみればそうかも。一緒に出掛けるようになってから毎週のように会ってたから、それがいつの間にか当たり前になってたのかもしれない」
「うん。私もそう思う……私はね……朝陽くんとは、この先もずっと一緒にいたいって思ってる……朝陽くんなしじゃ……無理なの」
「亜佑美さん……」
自分が大切に思っている女性からこれほど真っ直ぐな気持ちを伝えられることが嬉しくて、朝陽は思わず亜佑美の手を握った。
「俺もです。俺も亜佑美さんがいないと嫌だから……」
「朝陽くん……」
「正直、同棲の話も迷いました」
「え?」
「まだ半年も経ってないのに、こんなに早く一緒に暮らしていいのかなって。でも……あんなことがあったし、亜佑美さんのことが心配で……できるだけ近くにいたいって思ったんです」
「私は嬉しかったよ」
「……本当ですか?」
「うん。私だって朝陽くんと一緒にいたいって思ってた。でもね、私から『同棲したい』って言っていいのかなって迷ってたの」
「亜佑美さんも?」
「そうだよ。だから朝陽くんから同棲しようって言ってくれた時は……本当に嬉しかった」
まだ付き合って半年。
けれど、二人にとっては時間の長さなど関係なかった。
いつの間にか隣にいることが当たり前になっていたから。
あの日、合コンで出逢った二人。
亜佑美にとって恋愛対象はいつだってハイスペックな男性で、恋愛経験のない年下の朝陽のことは眼中になかった。
けれど、風邪をひいた亜佑美が間違い電話をかけたことをきっかけに二人は少しずつ言葉を交わすようになった。
何気ない会話を重ね一緒に過ごす時間が増えていき最初は意識していなかったはずなのに、いつしか亜佑美にとって朝陽と過ごす時間は何よりも大切なものへと変わっていた。
それに気づけて良かった。
朝陽と付き合えて良かった。
亜佑美はいつもそう思っていた。
ふと亜佑美は朝陽を見上げる。
「朝陽くん、私のこと、好き?」
突然の問いかけに朝陽は目を丸くした。
「え!? す、好き……だけど、どうしたんです、突然」
「聞きたくなったの」
「……その、亜佑美さんは?」
「私も好きだよ。これからも一緒にいられるの、凄く凄く嬉しい」
「……俺もです」
朝陽の返答に笑みを浮かべた亜佑美は少しだけ悪戯っぽく彼を見つめる。
「……キス、して?」
「…………何か、今日の亜佑美さん意地悪じゃないですか?」
「……だって……また敬語に戻ってるんだもん……」
「あ……ご、ごめん……」
「嘘。怒ってないよ」
そして、もう一度上目遣いで朝陽を見る。
「でも、キスはして欲しい」
まっすぐに向けられたその瞳に朝陽の心臓が大きく跳ねた。
「……亜佑美さん」
名前を口にしながらそっと肩を抱き寄せた朝陽に亜佑美が身体を預けると、朝陽の顔がゆっくりと近づいてくる。
そして――
「……っん……」
唇がそっと重なった。
触れるだけの優しい口づけ。
ほんの一瞬だったはずなのに離れたあとも二人は言葉を発することができなかった。
亜佑美は頬を赤くしたまま俯き、朝陽も照れを隠すように視線を逸らす。
けれどキスの間に繋いだ手だけは離れず、寧ろ先程よりも強く握り合う。
「……何でだろ」
「え?」
「何回もキスしてるのに……今日のは、いつもよりドキドキした」
その言葉に朝陽は照れくさそうに笑った。
「……俺も」
「ほんと?」
「うん。何でだか分からないけど、凄くドキドキしました」
「ふふ、何だかおかしいね。もうすぐ半年経つのに」
「でも、こういう気持ちって大切な気がするから……感じられて、嬉しいかも……」
「……そうだね。これはこれで私たちらしいのかも」
「ですね」
交際期間がどうとか、関係ない。
初々しさは二人にとって大切な感情で、二人の愛の形の一つなのだから。
「さてと、そろそろ寝よっか」
「そうだね」
同棲を開始した二人の愛のストーリーは新たな幕を開けてこれからも続いていく――。
-END-
管野アリオ
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#大人ロマンス
桃下結衣
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重田💋(omoda)
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コメント
1件
ああ…完結、おめでとうございます…(´;ω;`)💧 亜佑美さんが「朝陽くんなしじゃ無理」って言ったところ、すごく響きました。半年って期間の短さなんて関係なくて、お互いにとって隣が当たり前になってる感じが伝わってきて…。 それでいてキスの後に「今日のはいつもよりドキドキした」って照れる二人、めちゃくちゃ尊いです。初々しさを失わない大人の恋愛、すごく素敵でした。最後まで温かい気持ちで読めました、ありがとうございます🥀🤍