のだわな 指輪
嫉妬する野ニキ。
ヤンデレではない。
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荷物を運び終え、さぁ中身を整理していこうという時に、工藤の携帯が鳴り事務所に呼び戻された為、今は野田が一人で倉庫部屋で荷物の整理をしていた。
先程から胸中に渦巻く苛々を消し去ろうと、ただひたすら黙って手を動かし作業に集中してはいるが、それでもやはり思い出す度に眉間にほ皺が戻り、苛々も倍増する。
ーー子供のままごとだろが…くそっ
和中の指に嵌っていた花の指輪。最初に目にした瞬間、どこのどいつだと焦り嫉妬し、それを普通につけている和中に怒りすら湧いた。しかしそれを贈ったのがかつて組にいたやつの娘だと分かり安堵する。けれど他の指ではなく薬指。しかも左手の。そこに自分以外の他人が触れて、指輪を嵌めたという事実に変わりはなく、やはり怒りと嫉妬でどうにかなってしまいそうだった。
ーーあいつ、そこの指の意味分かってんのか?子供だからって許したんだろうが油断しすぎなんじゃボケぇ
全く持って面白くない。大人気ないと思いはするも、今や怒りと苛立ちの矛先は和中に向いており、チッと舌打ちを一つすると乱暴にファイルを並べ始めた。
暫く作業を続けていると、コンコンというノックと共に「失礼します」という言葉が聞こえた。
和中「手伝いに来ました……ん?一人か?」
野田「あ”?見りゃ分かんだろ」
ラッキーの世話を一通り終えたのだろう。和中が倉庫部屋へとやってきた。その手からは既に指輪は外れており、少しだけ機嫌は良くなるも、何も気づいていないだろう和中へ苛立ちが募る。それでもこんな事で怒りをぶつけるのは幼稚だと頭では分かっている為、野田はぐっと堪え深呼吸する。
暫くの間、重たい沈黙が続いたが、和中によってその沈黙が破られた。
和中「野田、何かあったのか?」
野田「…………」
和中「…野田?」
チラリと和中に視線を向けると心配そうにこちらを覗いていた。
野田「……なんもねぇよ」
和中「…だが」
野田「なんもねぇって。ほっとけ」
その突き放す様な態度に、心配していた和中もさすがにムッとしたようで。
和中「何もない訳ないだろう」
何を怒っているんだ?と、野田の気持ちなど知らず踏み込んでくる和中に、野田の苛立ちが限界を迎えた。
作業を止めこちらを見ていた和中の胸倉を掴むと、思い切り引き上げて立たせ、その勢いのまま壁に叩きつけるように抑え込む。
突然の事についていけず、壁にぶつけた背中の痛みに顔を歪める和中を無視して野田は言葉を続ける。
野田「何を怒ってるってそりゃぁオメェのせいだろうが」
普段より格段に低い声音で怒りを隠すこともせず詰められた和中は驚いているようで、狼狽えているのが分かる。
和中「…俺が何かしたか?」
胸倉を掴まれたままで苦しいのか、宥めようとしているのか、掴むその手の上にそっと和中の手が重ねられる。野田は視界に入ったその左手を手首ごと掴むとギリッと音が聞こえそうなほど強く握る。
和中「ッ! 痛い、離せ」
野田「お前、さっきの指輪どこにつけてたよ」
和中「は?薬指、だが」
野田「左手の、な。この意味分かってんだろ?」
痛みに顔を歪める和中だが、野田の言っている事、そして怒りの理由を漸く理解したようで目を見開くと困惑した表情を浮かべた。
和中「分かっている、が」
野田「じゃあ何普通につけさせてんだよ」
和中「子供のやった事だろう!?」
瞬間、野田の纏う空気がすっと冷え、瞳にギラリと炎が揺れたのが分かった。和中がしまったと慌てるも既に遅く。
和中「野田っ、違__」
何か言い訳をしようとした和中を無視して、野田は乱暴にその唇を塞いだ。
和中「ぅん!?…ッ」
いつもより乱暴なその口付けに、なんとか抵抗しようと身体を捩るも、手首を掴む力も押し込む力もより1層強められるばかりで、和中はただひたすら翻弄されていく。
和中「ッん…ふぅ…いっ…待てッ…っ」
時折唇を噛まれ、その痛みに声を上げるとその瞬間を狙っていたかのように野田の舌が咥内へと侵入し、和中の弱い所を的確に刺激していく。奥で縮こまっていた和中の舌は、見つかった途端そのまま強く野田の咥内へと引き込む勢いで吸い上げられる。
和中「ッ…ふぁ…ん…ンッ」
水音を立てながら絡みつき未だ離されない舌も強く噛まれ、酸欠と痛みと、こんな状況でも関係なく襲ってくる快楽の波に和中は力が抜け、思考を鈍っていくのを感じた。
和中「ンんッ!、ふ……ッはぁ…ッ、は…」
最後にぢゅっと思い切り舌を吸われ漸く解放された和中の呼吸は乱れ、足は震え今にも崩れそうだったが、壁と野田に挟まれている為崩れる事も出来ず、無理矢理立たされ、軽く野田に凭れ掛かっている状態である。
先程まで強く掴まれていた手首も解放され、くいと野田の口元に引かれると、赤く指の跡がついたそこを慈しむようにキスが落とされていく。
和中「野、田…」
ふいに、薬指を咥えられる。
急なその刺激にビクリと和中の身体が跳ねる。それに気付いた野田は今度は和中と視線を合わせながらゆっくりと薬指に舌を這わす。
指先、第一関節から付け根までゆっくりと丁寧に舐めとっていくその擽ったさと、射抜くような野田の視線に和中の性感はジワリジワリと高められ、呼吸が浅くなっていく。
和中「あっ…も…はじ、めぇ…」
熱を孕み、震える声で名前を呼ぶその姿に野田の欲も煽られる。
薬指を解放し、指先にキスを落とす。
顔を赤く染め瞳は潤み、期待と安堵に塗れた複雑な表情を浮かべながらこちらを見つめる和中に、ニヤリと笑みをこぼし、そして。
和中「い゛ッ!?」
ガブリ、と再び咥えた薬指の付け根を思い切り噛んだ。
野田「この場所誰にも渡すんじゃねぇ。俺以外に渡したら指ごと噛みちぎるから」
突然の痛みに思わず声を上げる和中に向かって真剣に、そして半ば脅すように告げる。
カァと更に顔を赤くしコクリと頷く和中を見て、野田は安堵した様に微笑むと、赤く、まるで指輪のように歯型のついた部分にキスを落とした。
… 𝗍𝗁𝖾 𝖾𝗇𝖽
(兄貴、その絆創膏…怪我したんですか!?)
(……噛まれた)
(え゛…ラッキーにですか?)
(…いや、もっと凶暴なやつに)
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