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#恋愛
ばたっちゅ
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meyu0530
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コメント
1件
伊織さんの視点めっちゃ良かったです…!!「本当はずっと触れたくて」とか、二十年前から覚えてたとか、もう胸がきゅんきゅんします😭💕緋真ちゃんを大事に想う気持ちが伝わってきて、でもお互い遠慮し合ってるもどかしさに泣ける…。白鷹さんも気になるし、続き待ってます🔥
目が覚めると、薄暗い部屋の中、すぐそばに緋真の寝顔があった。いつも彼女のほうが先に起きて朝食を用意してくれているから、こうしてまじまじと寝顔を見るのは初めてかもしれない。そして、手を伸ばせばすぐに触れられる距離で眠ったのも初めてだ。
昨夜緋真は「抱いてほしい」と告げた。一瞬聞き間違えかと思ったが、彼女は本気だった。真っ直ぐな気持ちが嬉しいと思う反面、恥ずかしいことを言わせてしまって申し訳なく思う。
それでも抱かなかった理由は、緋真の体が岩のように硬く小刻みに震えていたことと、微かに「頑張らなきゃ」と必死さが伝わってきたから。その上はじめてだと言われてしまえば、勢いで済ませてしまうのは据え膳を食わぬことよりも最低なことに思えた。
同時に、まだ少し緋真の本心がわからなかった。見合い結婚という形で一緒に暮らし始め、完璧な妻であることを演じる彼女は、夜の営みも義務的なものに感じているのではないのか、と。だからこそ今まで、彼女の気持ちも汲んで様子を見ていたのだ。まさか不安にさせていたとは夢にも思わず、いたく反省したのだけれど。
本当はずっと触れたくて、すぐにでも抱きしめて、身も心も自分だけのものにしたかった。最近では気持ちが抑えられず、触れてしまうこともあったが。
ちなみにそう思い始めたのはもうずっと前から。ホテルで顔を合わせた日には、すでに心惹かれていた。
緋真に初めて出会ったのはもう二十年以上も前のことで、もちろん彼女は覚えていなかったが、俺はあの日のことを一度も忘れたことがない。それもあって、緋真に再会したときに、あまりに美しい女性になっていたから一瞬で心を奪われた。彼女と結婚”しなきゃいけない”とか、そういう”使命感”などはどこかにいってしまうほどだ。
対して緋真は、心から俺のことを想ってくれているのだろうか。親に言われた結婚だから受け入れようとしてくれているのかもしれない。見合いを申し込んだ時点で、悩むことはわかりきっていたのに今更だ。
それならば彼女が俺に夢中になるように仕向ければいい、ただそれだけ。今度の旅行で緋真のすべてを確実に手に入れなくては。
「…………」
息をしているかもわからないほど、静かに眠る女性(ひと)だ。化粧をしていない顔はどこかあどけなくて、暗がりでもわかるほど肌が透き通っている。こんなに綺麗なのに――
そっと身を寄せ、緋真の頬にキスを落とす。彼女はくすぐったそうに身を捩った。
純粋無垢な寝顔をずっと眺めていたい。穏やかな時間をずっと過ごしていきたい。そのためにも、二人を脅かすものはひとつ残らず取り除いておく必要があった。
緋真から聞いた、昨夜のことを思い出す。
――白鷹さんか。少々厄介だな。
昨夜緋真には、白鷹さんに関する最低限の情報を伝えたが、彼女には他人より“過剰”な面がある。
朝から白鷹さんのことを考えるのは億劫で、休日のひとときに、しばしの間現実逃避をすることにした。
◇
緋真とゆっくり過ごそうと思った日曜日は、午後一で病院から呼び出され、別々に過ごすことになった。仕事だから仕方はないのだが、もう少し緋真との時間を作れたらいいのに。
東梨医科大学病院での勤務は、基本的に週に四日。他一、二日は外勤に出ることが多い。医師というのは世間一般的に高給取りだと思われがちだが、労働時間を考えれば見合っているかどうかは怪しい。それでも自分が選んだ道ではあるため後悔はしていないのだけれど。
さすがに疲れが抜けきれないまま迎えた月曜日。今日はとくに手術の予定もなく、午前中最後の外来患者の診察を行っていた。
「……経過もいいですね。おそらくもう数カ月で傷跡も消えると思います。通院は今日までで大丈夫ですよ」
「はぁ、よかった……一生治らなかったらどうしようと思っていたので。本当に神花先生のおかげです」
患者は半年ほど前に自転車事故で顔面に受傷し、頬にひどい擦り傷と、額に十針縫うほどの切り傷を負った二十代女性。はじめこそ見るに堪えない状態で、彼女自身も俯いて目を合わせてくれないほどだったが、今では気にならない程度まで回復し、今では潤んだ瞳を真っ直ぐにこちらへ向けていた。
「お力になれてよかったです。また気になることがあれば、いつでも相談してくださいね」
「はい、ありがとうございました」
何度も頭を下げて、患者が診察室をあとにする。こうしてまた一人、患者を送り出すことができたことに安堵した。
形成外科では外傷や先天異常など、体の表面に起こる異常に対して治療を行っている。比較的新しい分野であり一般的な知名度は高くなく、整形外科や美容外科などと混同する人が多くいるのが現状だ。そのため進路を選択する際にも、将来的に開業も視野に入れているのなら形成外科は患者数も少なくおすすめしないと、助言をくれる人もいた。しかしながら、この道を進むことに迷いはなかったし、自らの手で患者の人生をより”生きやすくする”ことに誇りを持っている。そういう意味でも、今の自分の選択には何一つ後悔はないのだ。