「いやー、一時はどうなることかと思ったぜ」
「はぁっ、はぁっ……」
「心配したゾ。突然後方に行くカラ……」
「まっ。シンヤの兄貴なら大丈夫だろうとは思っていたけどよ!」
シンヤ、アーシア、ミレア、レオナード。
4人共、第一の持久力試験は無事に突破していた。
今は体力の回復を待ちながら、談笑している。
もっとも、アーシアだけは会話どころではない様子だが……。
「それにしても、なかなか長いコースだったよな。正直、アーシアはまた脱落するんじゃないかと思ったけど……。凄い根性だった」
「ぜぇ、ぜぇ……。と、当然ですわ! わたくしはこんなところで脱落するわけにはいきませんもの! ぜぇ、ぜぇ……」
「ふぅん。おっと、そんなことを言っている間に次の試験が始まるみたいだぜ」
「ええっ!? も、もうですの……?」
アーシアは慌てて立ち上がる。
そして、試験官が説明を始める。
第二の試験は、攻撃力試験だ。
Cランク冒険者までであれば、さほどの攻撃力がなくとも認定される。
採取能力、危機察知能力、指揮能力、防御力、持久力などの能力に秀でていれば、攻撃力がなくともこなせる依頼はいくらでもあるからだ。
しかし、Bランク冒険者になろうとするのであれば、攻撃力においても高水準の能力が求められる。
「攻撃力試験こそ、魔導師の得意領域ですわ! わたくしの雷魔法を見なさいっ! 【テラサンダー】!!!」
アーシアの杖から放たれたのは、巨大な雷撃である。
それは見事に標的に命中し、粉々に砕いた。
「そこまで! 受験生アーシア、合格だ!!」
「やりましたわ!!」
アーシアが無邪気に喜ぶ。
持久力試験に続いて、攻撃力試験もクリアしたことになる。
彼女はBランク冒険者へ着実に近づいてきていると言っていいだろう。
続いて、レオナードやミレアが試験を受けていく。
「俺もいくぜっ! 【豪腕剣】!!」
「【炎熱煉獄脚】ダ!!!」
「なっ……。魔法も使わずに、魔導師のわたくしと同程度の攻撃をするなんて……」
自信を取り戻しかけていたアーシアであったが、その顔は再び青ざめていく。
レオナードとミレアの実力を感じて、驚嘆したのだ。
他の者たちも試験に臨み、合否を言い渡される。
残すはシンヤのみとなった。
「うーん。どの魔法を使おうかなぁ……」
「ふふふ。それはもちろん、ご自分の得意魔法を使うべきでしょう」
「え? だが、強すぎる魔法で会場が壊れたりしたら……」
「ぷっ……。ご冗談を。シンヤ殿の戦闘センスや身体能力強化魔法の腕はわたくしも認めますが、さすがにこの会場をどうにかするほどの高威力の魔法を放つことはできないでしょう」
「そうか?」
「ええ。遠慮なく全力を出す方がよろしいですわ。この試験の合格ラインは決して低くありませんもの」
「そっか。そうだな。よし、決めた」
シンヤは両手を広げ、魔法陣を展開する。
「行くぞ――【マジック・バースト】」
シンヤの手から光が溢れ出す。
それは、純粋な魔力の奔流であった。
「な、なんだあれは……」
「すげぇ……」
「ま、眩しい……」
「おぉ……」
「綺麗……」
「……美しい」
「…………」
あまりの美しさに、受験者たちは皆、言葉を失う。
そして――
ドゴーン!!!
轟音と共に、シンヤの放った魔法が標的を木端微塵に粉砕した。
それだけではない。
標的付近の地面までもが吹き飛び、大きな穴が空いている。
「「「な、なんじゃこりゃぁあああっ!?」」」
他の受験者や試験官の声が重なる。
会場にいる誰もが予想していなかった事態に、驚き戸惑っているようだ。
「…………や、やっちまったか?」
シンヤの顔に、冷や汗が流れる。
だが、彼にとって幸運なことに、『やり過ぎたから不合格』などということはなかった。
彼は無事に攻撃力試験を突破し、次の試験に進めることになったのだった。
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