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国王様は異世界から人を召喚せよと勅令を出された
私も含めほとんどの臣下が不可能だと思っていた。まず異世界すら存在しないと思っていた
だが、国王様の勅令を無視することは出来ない。私は自ら街に潜り込み異世界にまつわるものを探した。教会や書店にはなかったが、ある冒険者が持っていた。その冒険者の名前も知らない
どこで拾ったのか?何故焼け焦げたように真っ黒なのか?
疑問に思うことはあるが問い詰める気はなかった
本には異世界について、人を召喚する方法等が記されていた。召喚する際の詳しいことは分からないため聖職者主導で召喚の儀を執り行った
異世界から人を召喚するのは誰もが不可能だと思っていた。だが、結果は成功だった
異世界から人を召喚できたのだ。国王様の勅令は果たせたのだが……
召喚された者たちは全員異常な強さをしている。私たちが束でかかっても勝てないだろう
この者たちを野放しにしてはいけない
「その服では動きづらいでしょう。お召し物を用意します」
「いやいや帰してくれよ」
「私たち授業受けるところだったよね。早く元の世界に戻してよ」
「でも数学じゃなかったけ?」
「あれ?そうだっけ?なら、帰りたくない」
「訳の分からない場所に呼び出されるなんてな………知らない場所でサバイバルなんてできるわけねぇじゃん」
「あなた方はこの国を救うために現れたのです。あなた方は国を救う英雄なのです」
「英雄って言われてもな……」
「もちろん。国を救って頂ければ元の世界へお返しします」
救世主を納得させるために無茶苦茶なデタラメを言うとは……嘘だとバレたらどうする気だ
「本当?なら頑張ろうかな」
「えぇ。本当です」
「勝手に呼び出しといてそれはねぇだろ。知らない国のために英雄になんねぇといけねぇんだ」
「でもさ梨本、私たち帰れるんだよ?」
「英雄になるってことは誰かのために犠牲になる覚悟があるやつのことだ」
「犠牲になるなんて俺は嫌だぜ。早く帰してくれ」
「犠牲など……滅相もない。そんなことはありません」
「言ったな?」
「天に誓いましょう」
どれだけ嘘を積み重ねる気だ……
だが、そうでもしないとこの者たちは納得しない。この者たちはかなり警戒心が高い。しかし、ここで納得させられなければ国王様の勅令は果たせなかったも同然。救世主として役割を全うしてもらわなければならない
「皆様の役割が果たされれば元の世界に必ずお帰しいたします」
「お召し物をご用意いたします」
「最近学校で疲れたんだよね~ちょうど休みたいって思ってたんだ~」
「あ、ちょっと友香!?」
「だって今ごねたって元の世界に戻れないんでしょ?なら、言う事聞くしかなくない?」
「……でも」
「確かに成宮の言う通りだわ」
「亜樹もかよ!?」
「今俺らにできることはないんだし、ゆっくりしようぜ」
納得したみたいだ。この者たちは自分たちの力に気づいていないのか?それとも隠しているだけか?
どちらにしろ警戒を解いてはいけない
その後召喚された者たちは王城を見て周り用意した部屋でくつろいでいる。報告するなら今しかない
私は急ぎ足でノツの部屋に向かった
コンコンコンコン「はい。どうぞ」
「どうされました?何か異常でも?」
「異常です。奴らは異常です」
「なぜです?普通の方々ではありませんか」
「彼らの強さは我々を遥かに超えている。まともにやり合えば勝ち目はありません。何故あのような者たちを呼んだのですか?国王様は一体何を考えていらっしゃるのですか?」
「この前も言ったでしょう?この国の救世主だと。国王様は彼らに期待しているのですよ」
「救世主とは言いますが、この国に何の問題があるんですか?救世主を呼ぶ程追い込まれてはいないと感じています」
「それなのに異常な力を持った人間を召喚したのでしょう?国を壊滅させられることが出来る人間を味方につけて何をするおつもりですか?」
私は自分の思っていることを全てぶちまけた。建前など存在しない。全て心の中で思っていたことだ
この国は救世主を呼ぶ程の問題を抱えていないこと、異常な力を持った者たちを呼んだところで何をする気なのか?全てを知りたい。国王様は一体を何を考えておられるのか
「味方?それは違いますね」
「はい?」
「彼らを呼んだ理由はマラ王国周辺にいる魔物を駆除してもらう為ですよ」
「国王様は魔物による人民の被害を問題視されています。魔物たちを王国騎士団ではなく彼らの手で倒してもらいたいと思っているんです」
「つまり自分たちは危険な目に遭わずに魔物を倒すということですか?」
「そういうことです。国王様は魔物によって王国騎士団に被害が出るのを嫌っているんです」
「魔物を倒すためだけに彼らを呼んだと?」
「……そういうことですね」
何だ今の間は?まだ何かあるのか?
魔物を倒すために呼んだと言うなら納得はいくが、オーバーパワーではないだろうか?
この周辺な魔物だけなら我々だけでも十分だ。彼らを呼んだことは我々の被害を抑えるためだと言っていたが、彼らに頼ることは我々の力は必要ないとも受け取れる。国王様自らが考案したというのに………
「彼らが味方ではないというのは?」
「この際ですから話しましょう。彼らは味方ではなく我々の駒として行動してもらいます」
「駒?何故ですか?」
「彼らは異常な力を持っている。それを野放しにしておけばどうなるか想像がつきません。ですから我々の手で制御するんです」
「どうやって制御するんです?」
「これです」
私はノツから正二十面体の物体を渡される。手を触れた瞬間、嫌な気を感じた。死者のように冷たく、重くもなく軽くもない。不思議なものだ
しかし、これは色が不気味である。塗りつぶされたように黒く、見ているだけで禍々しさがある
「これはなんです?」
「それは[リオオン]。禁じられた呪物です」
「!?何故そんなものを!?」
「彼らを制御するためですよ」
「呪いを使うのですか!?」
「呪いを使わないで制御できるんですか?」
「それは……」
私は言い返せなかった。何か強大な力に頼らなければ彼らは制御出来ないと心のどこかで思っていたんだろう。その強大な力が呪い。呪いは禁忌だ。人を簡単に苦しめることが出来る。だが、見られてしまえば自分に返ってくる。呪いは簡単に人の命を奪えるものだとして全ての国が禁止にした
「どうやって手に入れたんですか?」
「それは知らなくてもいいことです」
「失礼しました……
これでどうやって制御するのです?」
「それだけでは制御はできません。それの呪いを何かにかける必要があります」
「何か?」
「今日の夜、救世主誕生祭として盛大にパーティーを行います。そこで彼らに国王様から頂いた栄誉賞を贈呈します」
「栄誉賞と一緒に彼らに首輪をつけます。呪いのかかったものを」
救世主と言われたが、力か強大すぎるが故に我々の駒になる。力の余るものは警戒され裏切られる。これは定めなのか?
同情する訳では無い。私としてもこれで国が壊滅する危険性は無くなったのだ
「呪いのかかった首輪をつけた者は、呪いの根源であるリオオンの所有者の言うことに逆らえば死なない程度に苦しみ悶えます」
「私がこれを所有するのですか?」
「王国騎士団に彼らの管理を任せます。我々の言うことを忠実に聞くようにしておいて下さい」
「あと、くれぐれも殺すことのないように。
彼らの力は有効に使いたいんです。死にかけていたら回復術者でも呼んで必ず生かしてください」
「承知…しました」
私はノツからリオオンを受け取り、誰にも気づかれないように隠し持った。大広間では救世主の誕生を祝うパーティーの準備が進められていた
パーティーの準備も整い臣下たちや王国騎士団、救世主たちが大広間に集まった
誕生祭だと言うのに国王様はいらっしゃらない。一体どこにおられるのか?私も全く顔を見たことは無い。王国騎士団の発足式で会ったことはあるが、緊張していたため何があったのか覚えていない。私の中の国王様は顔も分からずどのような姿をしているのかすら分からない
「国王様は多忙につき出席されておりませんが、予定通り誕生祭を始めたいと思います」
国王様がいなくてもノツは当たり前のようにパーティーを仕切る。国王様から最も信頼されているだけはある。それゆえ我々の知らない国王様の1面を知っているのだろう
「今日という日を盛大に祝おうではありませんか」
ノツが締めくくると会場は盛り上がった。そのあとは皆が好きなように過ごした。酒を飲んだり、豪勢な食事を食べたり自由に過ごしていた
私とノツだけがパーティーに参加せず見ているだけだった
「イケメンさんも一緒に盛り上がろうよぉ」
「私は見ているだけで結構です」
「え~そんな固いこと言わずにさぁ~」
「ちょっと友香!!あんた何杯飲んだのよ!?」
「そんな飲んでないよぉ~」
「すいません!!すぐ消えます!!!」
彼らはほとんどが16歳であるため飲酒が可能。異世界ではまだ飲酒は禁止されているそうだ。初めての酒が進み、泥酔しているのだろう
だが、それも今日で最後だろう……
「皆様盛り上がっているところ失礼いたします。救世主の皆様に国王様から栄誉賞が届いておりますので、前にお願いします」
「栄誉賞?なんだそれ?」
「国民栄誉賞みたいなものでしょ」
「とりあえず前に行くか」
彼らは警戒することも無く前に向かっていく。それに合わせて私も前へと歩き出す
彼らがステージに上がると裏から鎧を着た兵士たちが賞状ではなく首輪を持って1人1人の前に現れる
「なんで首輪持ってんの?」
「賞状とかじゃないの?」
「やってください」パチン
ノツが指を鳴らすと兵士たちが彼らを取り押さえ、首輪を強引に嵌める。抵抗する者もいたが2人がかりで首輪を嵌め全員に首輪が装着された
「なにこれ!?なんで押さえつけたりなんかするのよ!!」
「なんだよこれ!?外せよ!!!」
「地下に連れて行け」
「地下ってなんだよ!!!離せ!!!」
「何すんのよ!!!」
兵士たちは彼らを担ぐとそのまま地下へと連行した。地下には鉄格子で出来た個室がある。地下なら何をしているのかすぐに分かる
ドスン「痛ってぇ!」
ドスン「ひゃぁぁ!!」
「何すんだよ!!!救世主って言ってたじゃないか!!」
「そうよ!!なんでこんな目に遭わなきゃいけないのよ!!」
「お前たちは救世主だ。だが、首輪がなければ救世主とは言えない」
「はぁ!?何言ってんだ!!いいから外せ!!」
「救世主なんて嘘じゃない!!!最低っ!!!」
「黙れ」
「これ外せよ!!……ウッ……あぁぁぁぁぁ!!!!」
「くる……しい……!!」
私の手に持っているリオオンが赤黒い輝きを放つ
さっきまで叫んでいた男と女が苦しみ悶えている。これが呪いの力…!!
リオオンの力が私にも流れてきているのを感じる!!!
これさえがあればこいつらはただの犬だ。我々の言うことを忠実に聞くように躾ればいい
「亜樹!?大丈夫か!!!」
「友香!?大丈夫!!!」
「亜樹に何すんだよ!!!」
「友香は何もしてないじゃない!!!」
「私に逆らった
私に逆らうとどうなるか今見ただろう?こうなりたくなければ私に逆らうな」
彼らの顔が恐怖で引きつっている。目の前で同じ人間が苦しみ悶えているのを間近で見たせいだ
あんな風にはなりたくない。そう思っているはずだ
苦しみたくないなら逆らわなければいい
「脅そうってか??」
「脅しでは無い。命令だ」
「安心しろ。殺す訳では無い。命令さえ聞いていればいい」
「悪魔ね…!!」
悪魔でも何とでも言えばいい。この力がある限り、逆らうことなどできない。悪魔になって国を守れると言うなら安いものだ