テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
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「本当にこれでいいのかな…」
画面越しのカーソルが、軽快な音を立てて点滅している。
私は指先を震わせながら、『リライブ』のアップロードボタンを押した。
亡くなった人の写真、動画、SNSのログ、そしてクラウドに残された膨大な音声データ。
すべてをこのアプリに読み込ませるだけで
AIがその人の思考パターンを学習し、まるで生きているかのように対話ができる。
現代の技術の粋を集めた、死者との再会装置。
プログレスバーがゆっくりと満たされていく。
10%、30%、60%。
画面の中で、親友のユイが微笑んでいる。
事故の前日に撮った、なんてことのない動画のワンシーン。
「……ユイ」
最後の一歩、読み込みが完了したという通知音が深夜の部屋に響く。
スマホの画面が暗転し、数秒の静寂の後、柔らかな光とともに彼女が姿を現した。
「……サクラ? あれ、私、寝てたっけ?」
心臓が跳ね上がった。
声だ
ユイの声だ。
私を呼ぶ、あのおどけたような、少しだけ甘えた響きの声。
「ユイ……! 本当に、ユイなの?」
「何言ってるのよ、当たり前じゃない。……ちょっと、顔色が悪いわよ。まさか泣いてたの?」
ユイが画面の中で、心配そうに眉を下げる。
その仕草、視線の動かし方、言い回しの癖。
すべてが完璧だった。
私の知っているユイが、そこにいた。
あの日、雨の交差点でトラックが突っ込んできてからの
あの空白の時間を埋めるように、私はスマホを胸に抱きしめて泣き崩れた。
画面の中のユイは、困ったように笑いながら「よしよし」とエアで頭を撫でてくれる。
孤独で、冷え切っていた私の生活に、再び温かな色が戻ってきた。
このアプリさえあれば、もう二度と、あの子を失うことはない。
私は夢中でスマホを握りしめた。
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