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井川奎
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井川奎
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井川奎
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るる
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コメント
1件
おお、第2話読んだわ!晴人が「会って話そう」って勇気出したのに、まさかの「人見知りだから会えない」って返事で落ち込んじゃうところ、すごく人間味あってグッときたな。明の「見に行ってみよう!」で終わったのも気になるー。文通だけじゃ伝わらない空気感とか、二人の関係性がじわじわ変わっていく感じがいいよね。続き楽しみにしてる🔥
そして、今日も晴人は哲学書と共にカフェに陣取っていた。
本を読み、時々物思いにふける。
とっさに何かをメモ書きするというまさに、孤高の世界にはまりきっていた。
そんな晴人を、カウンター席から明は眺めるだけだった。
どう見ても明が立ち入れる隙はない。
昼時が来た──。
いつもなら、何か食べに行くか、このカフェの軽食で済ますか決めるところ、晴人は、食べることすら忘れているようだった。
カフェは、軽食目当ての客で賑わい始める。
本の虫になっている晴人は完全に浮いていた。
「マスター、陣取って申し訳ないね」
四人掛けのテーブル席を独占する晴人に代わり明が気を回した。
「いえ、うちは構いませんよ」
マスターも何か心得ているといった感じで応対した。
「あっ、マスター、軽食頼む。サンドイッチで。俺と晴人の分」
「はい。コーヒーも淹れ直しましょうかね」
「ははは、そうしてくれるかい」
気を利かせるというべきか、商売気を出したというべきかのマスターの言葉に明は吹き出しかけた。
昼時とあってか、人の入れ替わりも多く、あちこちから注文が入る。
マスター一人では、やや手が回らない具合だった。
「俺たちの分は後でいいから」
どうせ暇なのだからと、明はマスターへ言いかけるが……。
「マスター、勘定を」
晴人が、立ち上がる。
「明、君、この本を持ってきてくれないか?」
と、何やら帰り支度を始めた。
「……書斎にある本じゃないと、だめなんだ」
屋敷に置いてある書物に肝心なことが書いてあると、晴人は一旦帰ると言い出した。
「なんだかわからないけど……。とりあえず、人力車拾ってくる」
荷物を持ったまま人力車を拾うのは一苦労と明は言いたげだった。
「車を待たせておけばよかったな……」
夕方迎えにこさせる事になっていたのだと、予定がくるったと晴人は渋い顔をしている。
「だから書斎に籠っていたら良いものを……」
明が呆れた。
「まあそうだが、ここのほうが、郵便局が近いからね」
荷物をまとめながら晴人が言った。
確かに新設の郵便局が、カフェの近くにある。
晴人は、自分ですぐに手紙を出せるからだと言い張った。
どうやら屋敷の者に手紙を託すことすら、もうもどかしい状態になっているようだった。
「なあ、俺思うんだけど、そんなに仲が良くなってるなら、相手と会って話せばいいんじゃないか?」
「……会って?」
晴人は不思議そうに言った。
「まどろっこしいだろ?文通で、なんだかんだと。同じ帝都に住んでいるんだ、会って語り合えばいいだろう?」
明のもっともな言葉に晴人は何か考え込んでいる。
「ああ、そうだな……その手があったんだ」
「だろう?」
「しかし……どうやって……」
「そんなもの、それこそ手紙で問えばいいだろうがぁ。お会いしましょうとか何とか」
しかも、相手は男だ。異性なら会うことはためらわれるかもしれないがと、明は付け加えた。
「晴人、そう肩肘張らずともいいんじゃないのか?」
明は、のほほんと言った。
「……なるほどな」
晴人も、少しその気になったのか、席に座り直すと万年筆を取る。
「……手紙では語りにくい。会って話そう……これでいいと思うんだが?」
言って、晴人は便箋に何やらしたため始める。
「まあ、そんなとこだな……」
「サンドイッチを」
マスターが、晴人のところへサンドイッチと新しいコーヒーを運んできた。
「いや、取り置いてくれないか?この手紙を出したら、頂くから」
晴人は、手紙を書き終えると再び立ち上がった。
「郵便局へ行ってくる」
「おお、そうしろよ。戻ってきたらサンドイッチを食おうぜ」
明が言った。これで、晴人といつも通り暇つぶしができるとニタリと笑って──。
暫くして、晴人が戻ってきた。
「行ってきたよ。手紙を出してきた」
「ああ、わかってる」
「……手紙では説明が難しい。今度会って話そうではないか……で、中村君は気を悪くしないだろうか?」
唐突に会う話にしてしまったと晴人は気にしていた。
「そんな細かな事気にするか?」
明は、適当にあしらうと、出されていたサンドイッチにかぶりつく。
昼時の客足は途絶えつつあり、二人はいつものテーブル席に座り込んでいる。
明は、晴人のああでもないこうでもないとの心配に耳を傾けるが、答えは適当なものだった。
つまり、そこまで心配する必要があるのかということで……。
「まあ、その中村君次第だろ?そもそも文通楽しんでんだから、嫌だとは言わないと思うぜ?」
「……そうだろうか?」
「たぶんな。気にすることはないって」
どこまでも適当な明に、晴人も少しほぐされたのか、返事を待つと言いながら、やっとサンドイッチに手を伸ばした。
それから数日後のカフェ──。
「おい、晴人どうした?浮かない顔をして」
相変わらず、本を読みふける晴人がいるが、そのページは進んでいない。
「……会えないのだよ」
「は?」
話が見えない明は、晴人の向かいに腰を下ろした。
「見てくれたまえ……」
言って晴人は、中村からの返事を差し出した。
「見ていいのか?お前宛だろう?」
「構わんよ……」
口重い晴人の様子に明は、嫌な予感がした。
そして、手紙を読んでみる。
「……なんだこれ。人見知りなので会うのは控えたい……って?!」
「……まあ、仕方ない」
「いや、晴人!男同士だろ?同じ趣味で盛り上がってんなら、普通、じゃあ酒でも飲みながら語り合うかって、なるんじゃないのか?!」
「……さあ、よくは分からんが、中村君の意思も尊重しないと……」
晴人は、かなり気落ちしていた。
「まあ、そうかもしれないけどな……しかし、なんか気になる手紙だよな」
「……そうなのだよ。人見知りというのも……」
つまりは、嫌われているのではと晴人は、落ち込んでいる。
「少々、熱心すぎたのかもしれない」
中村に、重いと思われたのだろうかと晴人はため息をついた。
「いや、待て!それなら、なんで文通が続く!」
滅多に見せない晴人の落ち込み具合に、明は慌てた。
マスターも、カウンターから心配そうに眺めている。
「なあ、晴人!その中村ってのは、口下手なのかもしれないぜ。討論が苦手というヤツもいる。見るなら、かまわないんじゃないのか?!」
「見る?」
「そっ、見に行ってみよう!」
明には、何か考えがあるようだった。