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「このままでいいの?」
重い空気の中、深澤が宮舘に言う。
「…ぇ?」
宮舘はようやく顔をあげる。
「このまま、翔太とすれ違ったままでいいわけ?舘さんは翔太の気持ちを理解してなかった。それは”会話”してなかったからでしょ?実際に、こーじの考えが本当なのかもわかんない。勝手に、決めつけちゃダメだよ…」
深澤が宮舘の目を見て訴えかける。
他のメンバーも頷く。
「しょっぴーは、今めちゃくちゃ辛いんだよ。舘さんは、助けないの?」
目黒も宮舘の背中を押すように言う。
「多分さ、翔太泣いてたよ。」
佐久間も真剣に言う。
「行かないで後悔するよりも、行って後悔した方がいいんじゃない?」
阿部も不敵に笑う。
「ちゃんと、自分の本音言いなよ。」
ラウールも
「隠し事はなしやからな!」
向井も
「行ってきな。」
岩本の最後の一言で、宮舘は駆け出した。
「はぁ、はぁ!翔太!翔太!!」
宮舘は駆け回る。
渡辺を見つけて、引き戻すまで走り続ける。
名前を呼びながら、渡辺が居そうなところを探す。
「翔太!」
何度も名前を呼び続ける。
渡辺に自分の思いを伝えるために。
(宮舘視点)
フランスに行ってわかったんだ。
俺にとって翔太が隣にいることがどれだけ特別だったのか。
~15年前~
フランスに来た俺は、父さんの知り合いのシェフのお店にお世話することになった。
『Ryota ! Je suis tellement content que tu sois venu !(涼太!来てくれて嬉しいよ!)』
「お願い、します!」
フランスに来たのはいいけど、俺はフランス語が分からないし、翻訳イヤホンを使わないと会話もできない。
もうちょっと勉強してくればよかったかな。
実際、高校の英語でいっぱいいっぱいだったし、そんなことやってる暇もなかったけど…
どうしても気がかりだったのは、翔太。
卒業式から1回も会ってない。
先に帰ったらしいけど、翔太がそんなことするのは珍しい。
いつも俺がどれだけ遅くなっても待ってる翔太だ。
何か予定でもできちゃったのかもだし、結局何も聞いてない。
その後も荷造りとかあったし、翔太にもフランスを伝えられなかったから、なんか悪いことをした気分。
『涼太!大学行くんだろ?どこ行く?』
『ここ、とかかな?』
『いいじゃん。俺もそこにしよ。』
『え?』
『涼太と一緒のとこ行きてーもん。』
『…そっか。』
申し訳ないことをしたと思う。
俺がフランスに行くのが決まったのが3年に進級してすぐ。
大学の話をした時にはもう決まってた。
でも、あそこで話してたら…
『フランス?俺も行く。』
『言うのおせーんだよ。準備とかあんじゃん。』
絶対、俺について来る。
翔太はずっとそうだった。
俺がなにかする時はいつも一緒。
俺もそれが嬉しかった。翔太と一緒ならなんでもできる気がしてた。
ただ、ふとした瞬間に思う。
(翔太は、自分のやりたいことができてるの?)
俺は、翔太の夢を聞いたことがない。
翔太のやりたいことってなんだろう?
俺と一緒にいると翔太はやりたいことができないんじゃない?
翔太が自分の道を歩めないのは、俺の夢が叶わないことよりも辛いんだ。
ごめん、翔太。
そんなこと思ってたのに、、
「できた!翔太!!」
フランス語で書かれたレシピを自分でアレンジして作った時。
「翔太、こういうの好きだったよね?」
日本にないような料理を見つけた時。
「翔太、今日さ…」
道を歩いてる時だって
「……」
翔太のことばかり考えてしまう。
俺にとって翔太は当たり前に隣にいる存在だった。
何をするにも一緒だった。
もう隣にいないはずなのに、翔太はフランスにいないはずなのに…
「翔太に、会いたいなぁ…」
そう、願ってしまうんだ。
~数年後~
「….ただいま、日本。」
日本に帰ってきてから、小学から貯め続けた貯金を使って店を開く。
“Royal cafe”
俺のイメージピッタリだ。
最初は客なんてほとんど来なかった。
それはそうだ。
都市部の片隅でひっそりとしてるんだから。
でも、地元の人たちが沢山通ってくれて、今はお金で困ることなんて無くなった。
『本日のゲストは…』
家に帰ってテレビを見てたら、見慣れた顔がいたんだ。
『今話題の渡辺翔太くんです!』
『よろしくお願いします。』
「翔太…!?」
確かにテレビの中に翔太がいる。
面影はある。
だけど、数十年経ってるんだ。
大人の色気って言うのかな?
今の翔太、いや、ずっとそうだったんだ。
「綺麗、だな…」
すごい、綺麗だと思った。
でも、もう会えないんだろうな。
すごい有名になっちゃったんだ。忙しいんだろうな。
胸の中の寂しさとモヤモヤを閉まって、自分の気持ちに鍵をかけようとしていたら、手紙が来て、俺と翔太を再会させた。
「翔太!!」
やっと、見つけた。
「翔太。やっぱり、ここにいたんだね…」
宮舘が来たのは住宅の密集から少し離れた静かな場所。
渡辺は芝生に座り込んでいた。
「なん、で…、お前がここにい、んっだよ…!」
渡辺は急いで目元を腕で擦り、宮舘を睨みつける。
「昔、ここで一緒に星見てたね。母さんたちに内緒で夜の散歩に来たり、秘密基地なんて言ってずっとここにいたよね。」
宮舘は微笑みながら、渡辺に近づく。
「なんだよ…!来んなよ!!」
渡辺は近づいてくる宮舘から何とか逃げようとする。
だが、必死に走った反動が今、脚にきているため動けない。
「翔太。聞いて。」
宮舘は渡辺に目線を合わせるためにしゃがみこむ。
「…っ…!」
渡辺は目を合わせようとしない。
それでいいよ、と宮舘は微笑む。
「翔太は今、自分のやりたいことができてるんだよね?翔太のこと見てて思うよ。イキイキしてる。」
「…だから、なんだよ…」
「俺、ずっと翔太のこと縛り付けてると思ってたんだ。」
「…ぇ?」
「俺と一緒にいるせいで、翔太は自分のやりたいことができてないって。だから、俺は1人でフランスに行ったんだよ。」
「そんな、こと…」
反論しようとする渡辺に宮舘は唇に人差し指を添えて、
「聞いてて。フランスに行って、気づいたことがあったんだ。」
宮舘は、一呼吸置いて口を開く。
「俺、”翔太が隣にいるから”今まで料理を楽しめてたんだ。」
「….っ」
その言葉を聞いて、渡辺は目を見開く。
「俺が料理を続けてたのは、翔太が美味しいって笑ってくれたからなんだ。」
「…ぁ….」
『翔太!これ、もしよかったら…』
『何これ?』
『タコのマリネ!父さんから教えてもらったんだ。』
『マリネ…?まぁ、名前なんて別にいいか。いただきまーす。』
『どうかな…?』
『うわっ!!めっちゃうまい!!!』
『…!』
「俺が初めて作ったときの翔太の笑顔が見たくて、俺は料理が好きになったんだよ…」
蘇る幼い頃の記憶。
堪えきれなくなった宮舘が渡辺を抱きしめる。
「翔太…本当に、ごめん…翔太の気持ち、勝手に理解したつもりでいたんだ…勝手に決めて離れたのに、結局俺は…!」
「…っ…ぅ…ぅあ…りょ、たぁ…」
抑えきれずに、渡辺も宮舘にしがみつく。
「なん、だよ…きいてねぇ、よぉ…ばか…りよーたのばかぁ…!」
弱い力で宮舘の背中をポカポカ殴る渡辺。
「…っ…翔太…これからも、俺と一緒に、居てくれる…?」
「あたりめぇ、だろーが…っ…うああああああ…!!」
宮舘と渡辺はしばらくの間抱き合い、子供のように泣きじゃくっていた。
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