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第16話「二属性者の食卓」
登場人物:ナミネ=レド(潮+熱)・混波域/2年/料理班)




 ナミネ=レドは、髪の半分が濡れている。

 もう片方は乾いてふわふわしている。

 左目は火のように濁った赤、右目は潮を含んだ灰色。


 混波域の生徒たちの中でも、彼女は特に“混じって”いた。

 潮属性の「ひんやりした共鳴」と、熱属性の「衝動的な共鳴」が交互にぶつかる。




 そんな彼女の得意科目は――調理実習。


 ただし、問題がある。


 海藻も、貝も、“どちらか”の属性しか反応しない。


 潮の波で育った海藻に、熱の味覚がうまく届かない。

 火で開いた貝に、潮の香りがつかめない。




 「今日も“味”が二つある」

 調理実習後、ナミネはつぶやいた。

 先生は「個性だよ」と笑った。

 けど、ナミネは笑えなかった。




 「どっちで食べても、“どっちかの自分”が置いてかれる」




 その日、同じ混波域の1年生、**ソヨ=ナズ(塩+波)**が声をかけてきた。

 彼は共鳴調整のために、日々“片耳だけイヤホン”をつけていた。

 「ぼくさ、片耳だけで音楽聴くの、最初は嫌だったんだ」

 「でも、2つの波の真ん中を“自分の鼓膜”でつなげたとき、ちょっとだけ、自分が自分に戻れる気がした」




 ナミネはその晩、ふたつの皿を出した。

 一皿には、冷たい海藻の和え物。もう一皿には、香ばしく焼いたホタテ。

 どちらにも、自分の片側が応えた。


 そして、初めて両手で、それぞれのスプーンを握った。

 **「どっちも“わたし”だ」**と、心の波がゆっくり重なった。



海洋高校−物語は波のように−

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