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第3話 「すれ違いの影」
再開からしばらくたった春の日々、美月と蒼は頻繁に会い、幼いころの思い出を語り合いながら、新たな夢を
未来ノートに描き始めていた。二人の間にはかつてと同じ温かな空気が流れていたが、それぞれに違う環境で過ごしてきた
年月は、少しずつ隙間を生み出し始めていた。
ある日、美月は蒼と小さなカフェでお茶をしていた。その日は蒼が新しい仕事を始めるため、忙しい日々を迎えることを
打ち明けた。蒼の目は輝き、やる気に満ちていたが、美月の胸には不安がよぎった。
「忙しくなると、会える時間が減るのかな?」 美月がそう言うと、蒼は少し困った顔をした。 「そんなことないさ。でも、目の前のことに集中しなきゃならない時もあると思う。」 その一言が、美月の心に小さな棘のように刺さった。
その夜、美月は公園のベンチに一人で座り、風に揺れる桜を見つめていた。蒼がどれほど努力しているのか理解していたが、どこか自分が置いていかれるような気持ちが拭えなかった。そのとき、蒼からメッセージが届いた。
「ごめん、今日は急な仕事が入ってしまって…また明日話そう。」
美月は携帯を見つめたまま、返事を打つこともせず、胸が苦しくなるのを感じた。
数日後、二人は再び公園で会ったが、美月の不安な態度は蒼にも伝わっていた。 「最近、何か悩んでるのか?」 蒼がそう尋ねると、美月は目を伏せたまま言った。 「…蒼が遠くに感じる時があるの。忙しいのはわかるけど、私たちの時間を忘れてほしくない。」
その言葉に蒼は少し苛立ちを見せた。 「そんな風に言われると困るよ。俺だって頑張っているんだ。どうして応援してくれないんだ?」
言葉のすれ違いが次第に感情をぶつけ合う形になり、二人はその夜、険悪な雰囲気のまま別れてしまった。
二人が初めて経験するこの衝突は、互いの気持ちをさらに深く見つめ直すきっかけとなる。美月も蒼も、それぞれが抱える不安や葛藤にどう向き合うのか。この出来事が、物語の新たな波を呼び込むのだった。
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