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#一次創作
なべたろう🩵🐧推し
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もな
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「まずは、俺が店に来た理由ですが……」
クライヴさんはテーブルの上に布が被せられたバスケットを置いた。全員の視線が一斉にそちらに集中する。
「これ知り合いに頂いたんですけど、俺じゃ調理できませんので……先生にお譲りして皆で食べて貰おうかと思いまして」
「なになに? わあ、凄い!! 立派な栗だね」
掛布が取り払われ、そこから登場したのは大きくて艶々した栗だった。なんでもご近所から大量に譲り受けたらしい。クライヴさんはマダムたちに大人気なので、よくこのようなお裾分けを貰っているのだ。有り難いと思いつつも自分だけでは消費できず、腐らせるよりはと私たちにも分けて下さることがしばしばある。今回の訪問もそのパターンだったようだ。
「ありがとう、クライヴ君。遠慮なく頂戴します。どうやって食べようかなぁ。セディがいたらクッキーで一択なんだけど……今留守にしてるからね。パウンドケーキにでもしようか。それとも……」
先生の興味は頂いた栗の方に完全に移ってしまった。栗をどう調理しようかで頭が一杯になっている。ラリーさんもそんな先生の様子を察したようで、小さく溜息を吐いた。話が逸れてしまうのを防ぐため、ラリーさんは先生に代わってクライヴさんへの質問を続けた。
「それでこちらの御令嬢とクライヴさんは店の入り口で鉢合わせたのですね?」
「はい。本来なら裏口の方からお邪魔する予定だったのですが、この少女が店の前でうろうろしているのが目に入ったもので……。不審に思って声をかけようとしたところだったのです」
「なるほど……」
ラリーさんたちの目線が再び少女の方へと向けられた。少女は体はびくりと震わせる。レモンパイのおかげで緊張が緩んでいたであろうところに、また一斉に注目を浴びたから驚いたのだろう。
「ああ、驚かせてごめんなさい。食べながらでいいので、私たちの質問に答えて頂けますか?」
ラリーさんが優しく話しかけると、少女は静かに頷いた。ラリーさんの笑顔に当てられたのか、少女の頬がみるみる赤く染まっていく。もう彼女の表情から怯えは感じられない。
「私の名前は『コニー・プラット』といいます。本当に……お店の方々にご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした。改めて謝罪致します」
「プラットというと……プラット男爵家ですか?」
「はい、私はプラット家の長女になります。東部の田舎貴族ですのによくご存知ですね」
貴族名鑑を記憶しておいて良かった。身なりや振る舞いから貴族家の令嬢であると予想してたけど当たりだったな。
「プラット男爵家なら、次男がうちの隊に在籍しているはずだ。『ハリソン・プラット』じゃないですか? 貴女のお兄様の名前」
「えっ!? 兄を知って……いや、それよりうちの隊って……」
「コニー嬢、こちらの男性は王宮警備隊三番隊の隊長でクライヴ・アークライトさんです」
「あっ、あなたがアークライト隊長!? 兄からお話だけは伺っていました。お会いできて光栄です」
クライヴさんの肩書きを聞いたコニー嬢は相当驚いたようで、ここにきて一番の大声で叫んでいた。そういえば、今日はクライヴさんは隊服を着ていなかったな。コニー嬢は隊長の名前は知っていたみたいだけど面識はなさそうなので、これで気づけという方が難しいだろう。
「クライヴ君はこの店の従業員でもあるんだよ。俺はルーイ。よろしくね、コニーさん」
「私はルーイ様の助手のラリーです」
「リズ・ラサーニュと申します。従業員ではありませんが、ご縁があって時々お店を手伝わせて頂いております」
先生は貰った栗をテーブルの端に移動させながら自己紹介を行った。栗の調理方法が決まったようで、先生は私たちの方へ意識を戻してくれた。彼の自己紹介に続いてラリーさんと私も、コニー嬢へ名前を名乗る。
クライヴさんだけでもこんなに驚いているのだ……ラリーさんの正体が分かったら、コニー嬢はどうなってしまうだろう。ついそんなことを考えてしまう。でも、コニー嬢がここにきた目的などがはっきりしていない今の段階では、ラリーさんの正体は伏せたまま対応をするのが安全だろう。
「さっきから話を聞いていると、コニーさんもイタズラをするような子には見えないんだよね。ウチの店の扉をあんなに連打していたのには何か理由があったのかな?」
先生もコニー嬢に対して同じ印象を抱いている。
彼女が扉を叩いていた理由……普通に考えたら店の人間に自分の存在を認識させるためである。たまにある『イタズラ』だって目的は同じだ。しかし、後者の場合はどうにかして従業員に一目会おうと試みた、困ったお客さんが犯人である場合が殆どらしい。休業中であっても誰かしら出て来てくれるのではないかという、淡い期待を抱いているのだとか。
『とまり木』の従業員は揃いも揃って目見麗しい。これも店の名物のひとつであるので、それを目当てに通っている客が大勢いる。その中の所謂過激派と呼ばれる人たちがこういったイタズラ……もとい迷惑行為をしてしまうのだ。
コニー嬢は今までの言動からして、そのような困ったお客様には見えない。先生も仰っているが、のっぴきならない事情がありそうである。
「イタズラだなんて……そんなつもりは決してありませんでした。でも、結果的に迷惑をかけてしまったことに変わりはありませんので同じですよね……」
コニー嬢は落胆して頭を下げた。先生とラリーさんも……そしてクライヴさんと私も、この少女がなぜあのような事をしたのか興味津々である。
コニー嬢はゆっくりと息を吸って吐き出す。気持ちが固まったようだ。下げていた頭を上げて、コニー嬢は話を続けた。