テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
九条から渡された資料
それは、直樹という男が私の人生をどう弄び
いかに冷酷に私の家族を破滅させたかの血塗られた証明書だった。
私はその資料を胸に抱き、再び刑務所の面会室を訪れた。
直樹は、私が過去の弱みを恐れて、命乞いに来たのだと勘違いしているようだった。
「詩織……!分かってくれたか。俺の言う通りに証言すれば、過去のことは俺が墓場まで持って行ってやる。また陽太と三人で、やり直せるチャンスなんだぞ」
アクリル板の向こうで、直樹は醜い笑みを浮かべている。
私は、感情を一切殺した仮面を被り、静かに彼を見つめた。
「そうね、直樹。……あなたが10年前、私を救ってくれた『あの日』のこと、改めて思い出したわ。あの時、あなたが私の前に現れなければ、私はどうなっていたかしら」
「そうだろ? 俺だけがお前を守れるんだ」
「ええ。だから……私から、あなたに『最後のご褒美』をあげることにしたの」
私は、バッグから一通の書類を取り出し、アクリル板に押し当てた。
それは、九条から渡された資料を元に、私が作成した「損害賠償請求の最終通知」……ではない。
直樹の元同僚や、高木常務の隠し口座
そして直樹自身が実家の倒産に関与していた事実を
すべて時系列にまとめた「特報記事」の校正刷りだった。
「……これ、何だ?」
直樹の顔が引きつる。
「明日、この内容が日本中の主要メディアで一斉に報じられるわ。タイトルは『10年越しの罠:エリート社員が演じたマッチポンプ倒産劇』」
「……直樹、あなたは世間から『不倫夫』としてだけでなく、『婚約者の家族を破滅させて結婚した史上最低の詐欺師』として記憶されることになる」
「な……っ!? お前、何を知って……!」
「全部よ、直樹。あなたが1円単位で私の生活を管理していたのは、私の尊厳を奪うためだけじゃなかった」
「私がいつかこの『真実』に気づかないよう、思考能力を奪い、檻に閉じ込めておきたかったからなのね」
私は立ち上がり、アクリル板を指先で弾いた。
「これが私からのご褒美。……あなたはこれから、一生消えない『恥』という名の檻の中で生きるの」
「高木常務も、今頃再逮捕に向けて警察が動いているわ。二人仲良く、地獄の底で10年前の祝杯の続きをあげなさい」
「詩織! 待て! やめろ!それを出したら俺は……俺の人生は!」
狂ったように叫ぶ直樹の声を背に、私は迷わず背を向けた。
出口へ向かう廊下。
私の足取りは、羽が生えたように軽かった。
直樹は私を「救った」つもりでいたかもしれない。
でも、本当に私を救ったのは、あなたへの憎しみさえも糧にして立ち上がった、私自身の意志。
刑務所の外に出ると、九条が車で待っていた。
「……終わったか」
「いいえ。これからが本番です。高木を、逃げ道もなく追い詰めます」
私の家計簿には、まだ回収すべき「負債」が山積みだ。
でも、そのすべてを清算する日は、もうすぐそこまで来ている。
【残り68日】
#ざまあ
#裏切り
#モテテク