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ズキズキと痛む胸を抑えて涙を拭いながらの帰路は、辛いという言葉だけでは表すことができない。
いつもより遠回りをして家へ帰ろう。
家とは逆方向の道を歩く。
すると、ふと花屋が目に入った。
“The Cat Among Flowers”。
花の中にいる猫。
とてもおしゃれな店名だな。そんな感想だった。
綺麗に咲き誇る数々の花。
俺の心に何かを訴えかけているような気がした。
自然と俺の足は花屋の方へ向いていた。
美しい花の所々には猫のオブジェや写真が飾られていた。
「綺麗な花…」
そう俺が思わず言うと、花屋の店員であろう
男性がそばに寄って来た。
『それ、ガーベラって言うんですよ。』
「ガーベラ…」
『一年中咲くんですけど、一応春と秋が旬の花でね。花言葉は“希望”“前進”らしいです。』
「いいですね。花言葉。」
『うん。ほんとに。買われます?ガーベラ』
「買おうかな。」
『ありがとうございます。ガーベラって色々意味があって…色とかでも変わるんですけど。』
「お任せでできますか?」
『はい。かしこまりました。』
感じの良い、朗らかな様子の店員さんだった。
あの人には…未来があるんだろうな。
羨んでも手に入れられない幸せを望んでしまっている。
俺はなんて人なんだ…
そう気分が落ちていると、店の奥の方から声が聞こえた。
『これ、ガーベラです。』
綺麗な白と黄の2本のガーベラ。
「これってどういう意味があるんですか?」
『白は“希望”。黄色は“親しみ”。2本は“2人だけのもの”です。2人だけのものって、告白の意味にも捉えられますけど、特別な友情って言う今でも使えると思うんですよ。 』
「確かに…」
『ここで僕とあなたが出会えたことは奇跡なんだと思うんです。だから、2本。』
「凄く嬉しいです。ありがとうございます。あ、あの、猫。お好きなんですか?」
そう不意に聞いてみると、店員さんは快く答えてくれた。
『あ、分かります?好きなんです。猫。昔うちで飼ってたんです。辛い時とか、悩みがある時とかは、その飼ってた猫に癒されて、救われたんです。だから今の自分があるってゆうか。』
確かに、この店員さんの朗らかさやくしゃっと笑った顔は、猫に似ているような気もする。
『出会って早々なんですけど、友達になりません? 』
彼は何か思いついたようにそう言った。
「あ…はい。僕なんかでよければ。」
そう簡単に口にしたは良いものの、俺の命はあと少ない。
それを言うか言うまいか…
『この後とか会えますか?』
「この後? 」
『僕後30分で今日終わりなので、それからとか』
「じゃあ…ぜひ」
『じゃあ30分後、この店の前で。』
約30分後、カジュアルなジャケットに身を包んだ彼は花屋から出てきた。
『すみません。お待たせしてしまって』
「大丈夫です。あの…お名前聞いていいですか?」
『ごめんなさい。言ってなかったですね。僕、高地優吾です。 』
「高地さん…俺、森本慎太郎です!」
『森本慎太郎さん。お願いします。』
「こちらこそ…」
『なんか違和感あるな…敬語外しません?』
「全然大丈夫!」
『よろしく!』
病気が悪化してからできないと思っていた友達ができた。
俺は本当に恵まれているな。そう思った。
しかし、体は言うことを聞いてはくれない。
「痛っ…はぁっ」
『痛い?どこが…心臓?』
「薬…かばんっ」
『薬?あ…はい。これ』
発作を起こしてしまうなんて、病気の事を言わなければいけなくなってしまうじゃないか。
「ふぅ…ほんとにごめんなさい。」
『全然いいけど…なんか病気?』
「心臓の持病があって、ちょっと悪化しちゃって…もう後永くなくて」
『そうなんだ…じゃあもう目一杯遊ぼうよ!』
「え。いいの?」
『全然いいよ。ほら!行こう!』
俺の気分は、病気が悪化する前よりも上がった気がした。
※色々変えました。
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