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ズキズキと痛む胸を抑えて涙を拭いながらの帰路は、辛いという言葉だけでは表すことができない。
いつもより遠回りをして家へ帰ろう。
家とは逆方向の道を歩く。
すると、ふと花屋が目に入った。
綺麗に咲き誇る数々の花。
俺の心に何かを訴えかけているような気がした。
自然と俺の足は花屋の方へ向いていた。
「綺麗な花…」
そう俺が思わず言うと、花屋の店員であろう
男性がそばに寄って来た。
『それ、ガーベラって言うんですよ。』
「ガーベラ…」
『一年中咲くんですけど、一応春と秋が旬の花でね。花言葉は“希望”“前進”らしいです。』
「いいですね。花言葉。」
『うん。ほんとに。買われます?ガーベラ』
「買おうかな。」
『ありがとうございます。ガーベラって色々意味があって…色とかでも変わるんですけど。』
「お任せでできますか?」
『はい。かしこまりました。』
感じの良い、朗らかな様子の店員さんだった。
あの人には…未来があるんだろうな。
羨んでも手に入れられない幸せを望んでしまっている。
俺はなんて人なんだ…
そう気分が落ちていると、店の奥の方から声が聞こえた。
『これ、ガーベラです。』
綺麗な白と黄の2本のガーベラ。
「これってどういう意味があるんですか?」
『白は“希望”。黄色は“親しみ”。2本は“2人だけのもの”です。2人だけのものって、告白の意味にも捉えられますけど、特別な友情って言う今でも使えると思うんですよ。 』
「確かに…」
『ここで僕とあなたが出会えたことは奇跡なんだと思うんです。だから、2本。』
「凄く嬉しいです。ありがとうございます。」
『いえいえ。出会って早々なんですけど、友達になりません? 』
「あ…はい。僕なんかでよければ。」
そう簡単に口にしたは良いものの、俺の命はあと少ない。
それを言うか言うまいか…
『この後とか会えますか?』
「この後? 」
『僕後30分で今日終わりなので、それからとか』
「じゃあ…ぜひ」
『じゃあ30分後、この店の前で。』
約30分後、カジュアルなジャケットに身を包んだ彼は花屋から出てきた。
『すみません。お待たせしてしまって』
「大丈夫です。あの…お名前聞いていいですか?」
『ごめんなさい。言ってなかったですね。僕、高地優吾です。 』
「高地さん…俺、森本慎太郎です!」
『森本慎太郎さん。お願いします。』
「こちらこそ…」
『なんか違和感あるな…敬語外しません?』
「全然大丈夫!」
『よろしく!』
病気が悪化してからできないと思っていた友達ができた。
俺は本当に恵まれているな。そう思った。
しかし、体は言うことを聞いてはくれない。
「痛っ…はぁっ」
『え?どうした?』
「痛いっ」
『痛い?どこが…心臓?』
「薬…かばんっ」
『薬?あ…はい。これ』
発作を起こしてしまうなんて、病気の事を言わなければいけなくなってしまうじゃないか。
「ふぅ…ほんとにごめんなさい。」
『全然いいけど…なんか病気?』
「心臓の持病があって、ちょっと悪化しちゃって…もう後永くなくて」
『そうなんだ…じゃあもう目一杯遊ぼうよ!』
「え。いいの?」
『全然いいよ。ほら!行こう!』
『あ、あと、優吾って呼んで!高地でもいいけど…』
「高地の方がしっくりくるかもw高地で」
『おっけ。俺慎太郎ね。行こ!』
俺の気分は、病気が悪化する前よりも上がった気がした。