「康二ってさ、いっつも俺らに甘えてくるじゃん?」
雑誌の撮影終わり。楽屋のソファでくつろぎながら、深澤が言った。
「わかるー!」「ファンもよく言うけど、子犬みたいだよねー」
佐久間とラウールが同意する。その言葉に、他のメンバーも頷いていた。いつも全力でじゃれてきて、たまに寂しそうな顔をする。そんなところが、放っておけないのだ。
そんな話の流れで、誰かがポツリと呟いた。
「…その子犬の、本気でしょぼくれた顔…見たくない…?」
悪魔の囁きだった。
その場にいた数人が、「うわ、見てみてえ…」と悪い顔になる。しかし、渡辺だけは、少し難しい顔をしていた。
「…じゃあさ、康二のツッコミもボケも…ぜーんぶ俺らでやっちゃったら、あいつ、どうなるんだろうな?」
その悪魔的な提案に、楽屋の空気が一変する。
「うわ、面白そう!」
「自分のポジション、全部奪われるってことでしょ?」
「アイツの焦った顔、絶対おもろいやん…って、あ、俺が言っちゃダメか。」
かくして、Snow Manの万能調味料・向井康二の存在意義を揺るがす、史上最悪(最高?)のドッキリ計画が始動した。
***
作戦決行は、ニセのバラエティ番組収録。メンバーのトーク力だけで盛り上げる、という企画だ。
もちろん、向井は「俺の出番やん!」と、朝から気合十分。楽屋入りするなり、マシンガントークを炸裂させている。
「今日の俺、キレッキレやで!みんな、俺についてきたらええからな!」
その自信満々の笑顔を、8人は生暖かい目で見守っていた。
収録がスタート。司会の深澤が、トークテーマを振る。
「さあ、最初のテーマは『最近、メンバーにキュンとしたこと』!」
(よっしゃ、きた!)
向井が、真っ先に「はい!はい!」と手を挙げる。
しかし、深澤は、その手を華麗にスルー。
「はい、じゃあ…ラウール!」
「え、僕?そうだな…この前、照くんが…」
ラウールが話し始めると、すかさず渡辺が「あー、はいはい、筋肉ね」と茶々を入れる。
それに対し、岩本が「うるせえ、美容バカ」と返す。
そのやり取りを見て、佐久間が「うわー!夫婦喧嘩だー!」と大声で叫び、スタジオは爆笑に包まれた。
完璧な流れ。ボケて、ツッコんで、ガヤを入れて…。
その全てが、向…井がいないところで、完璧に成立していた。
「…あれ?」
向井は、挙げた手をそっと下ろす。
気を取り直して、次のトークテーマで前に出ようとする。
「この前な、俺が楽屋で…」
話し始めた瞬間、宮舘がスッと立ち上がり、
「その話なら、僕がセクシーに再現しよう。」
と、謎の再現VTR(?)を始め、スタジオの注目をかっさらう。
阿部が、的確すぎるテロップのようなツッコミを入れ、目黒が、その状況を見てボソッと呟いた一言が、また大爆笑を呼ぶ。
向井がボケようとすれば、それより面白いボケを誰かがする。
ツッコもうとすれば、それより早く、的確なツッコミが入る。
彼の代名詞である「ゴイゴイスー!」をやろうとした隙間でさえ、深澤に「はい、CMでーす」とバッサリ切られる始末。
(…うそやろ…?俺、今日、一回もウケてへん…)
だんだんと口数が減り、顔から血の気が引いていく向井。
いつもは誰よりも前に出て、大きな口を開けて笑っているはずの彼が、ただ黙って、楽しそうに盛り上がるメンバーたちを、寂しそうな目で見つめている。
そして、収録の最後に、深澤が言った。
「いやー、今日のSnow Man、康二がいなくてもめちゃくちゃ面白いな!」
その、あまりにも無慈悲な一言。
それは、向井の心を折るのに、十分すぎる一撃だった。
俯いて、ぎゅっと拳を握りしめる向井の肩が、小刻みに震え始める。
その瞬間だった。
スタジオのモニターに、デカデカと文字が映し出された。
**『ドッキリ大成功!やっぱり康二がいないと始まらへん! by メンバー一同』**
「…へ…?」
顔を上げた向井は、モニターの文字と、ニヤニヤしながら自分を囲むメンバーたちの顔を、交互に見つめる。
やがて、全てを理解した彼の瞳から、大粒の涙がポロポロとこぼれ落ちた。
「うわあああああ!お前らのアホーーー!!」
その場に座り込み、子どものように泣きじゃくる向井に、8人が一斉に駆け寄る。
「ごめんな、康二!」
「お前がいないと、マジで楽屋静かすぎて無理!」
「お前のツッコミがないと、俺、ただの変なやつなんだって!」
みんなに代わる代わる抱きしめられ、頭を撫でられ、向井は「ほんまに…ほんまに、俺がいらんようになったんかと思った…!」と、しゃくり上げて泣き続ける。
「そんなわけないだろ。お前は、俺らにとって、なくてはならない調味料なんだから。」
岩本が、力強く、そして優しく言うと、メンバー全員が「そーだそーだ!」と頷く。
結局、みんな、向井のことが大好きで、ちょっかいを出したくて、たまらないのだ。
「もう二度とやらへんからな!」
涙と笑顔でぐちゃぐちゃの顔で叫ぶ、Snow Manの万能調味料。
その周りには、世界で一番彼を愛する、最高の仲間たちが笑っているのでした。
コメント
2件
みんなのドッキリと反応良かったです!!

お笑い担当はやっぱりこーじだよねー!みんなもめちゃくちゃおもしろいけど、こーじにはこーじのよさがあるからね! 続き楽しみにしてます!