🤍side
えっ?
俺、なんで、渡辺さんと寝てたんだろう?
昨日も夜遅くまで勉強して、寝た。ちゃんと自分のベッドに入って寝たはずなのに。恥ずかしくて顔が熱い。よりによって、なんで渡辺さんの部屋なんかに…。
自分の部屋まで戻って、ひとまず勉強机の前に座る。目の前にはいろんな国の言語を学ぶための参考書がいっぱい重ねて置いてあった。
俺の夢は、世界で活躍するスーパーモデルになること。
阿部先生に思い切って将来の夢を相談したら、それなら語学が堪能な方がいいと言われた。ハーフなのに俺は英語もろくに話せない。もっともだと思った。今はフランス語を中心に勉強している。
アイドルになるのも夢だけど、並行してモデルができたら最高。俺は大胆にもそう思っていた。
子供の頃からコンプレックスだったこの身長を活かして、ファッションの第一線で活躍してみたい。ちなみにモデルの方の夢はめめにも笑われそうで話していない。
俺はただでさえ、人前に立つだけで緊張してしまう性格だ。アイドルに憧れはあったけど、こんなにどもったり、人の目をまっすぐ見れない俺に、グループで活動するアイドル以上に注目を浴びるファッションモデルなんか出来るのだろうか……。そんなふうに自信をなくしてしまう時もあったけど、阿部先生が熱心に話を聞いてくれたから、勇気が出た。高校生活に阿部先生がずっと寄り添っていてくれるなら、俺は頑張れる。
ふと。机の上の、ママの写真に目が留まった。ママが中学に入ったばかりの俺を後ろから抱きしめている写真。
でも、初めて俺の大好きな家族と離れて暮らすのはやっぱり寂しくて。めめという大親友はできたけど、大好きなママのことを思うといつも涙が止まらなくなる。本当はママに会いたいけど、俺は高校に入学する時にママと固い約束を交わした。
『高校を卒業して、立派なアイドルになるまで会いに行かない』って。
ママは優しいけど、頑固で厳しいところもあるから、俺が決意を伝えると、電話にも出てくれなくなった。ママに会いたい、せめて声が聞きたい。ラウール大好きよってまた優しい声で言われたい。
ここだけの話、渡辺さんはちょっとだけ、ママに似ている。そのせいで、俺は渡辺さんの顔をまともに見れないのだった。
🤍「はあ、寝よ……」
二人で抱き合って寝ていたことを思い出すと、変な気分になる。身体が火照る。
俺は、そんな自分を抑えるために、部屋中のカーテンを閉め切って、とにかく睡眠を取ることに集中した。
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