今回はキヨ猫が出てきます。
つまり!kyrtです。
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rt side
運動がてら近所を散歩していた時、公園のベンチに黒猫が乗っているのが見えた。
ここら辺じゃ野良は珍しいと思い、興味本位で近づく。
黒猫は近づいてくる俺に気が付いたのか、こちらを振り返る。
───逃げられる、と思ったが猫はそんな気配もないし、逃げるどころかじっとこちらを見つめている。
人慣れしてるのかな、と思い、そのまま撫でてみる。それでも猫は逃げる素振りを見せなかった。
「…なんかよく見たら君、あんま可愛くないな」
『何だと!?お前目に泥塗ってんのか!?』
「!?」
猫が、喋った…!?
驚きのあまり硬直する。
猫が喋るなんて有り得ない───でも目の前でめっちゃ喋ってる───しかも達者。
「化け猫…?」
『失礼な人間だな。俺は普通の猫だよ』
「いやいやいや、どこをどう見て普通なんだよ。喋る猫なんてこの世に存在しねぇよ」
『でも実際俺は喋ってるぞ?なんで他の猫は喋んねぇんだ?』
「そんなこと俺に聞かれても…」
こんなにスムーズに猫と会話を交わしていることに、我ながら内心驚く。
『なぁ人間よ』
『人間て…───俺はレトルト』
猫に名前を教えるのもな…と思ったが、『人間』呼ばわりされるのも嫌だったので、渋々名乗った。
『なぁレトルト、お前食いもん持ってねぇか?』
「持ってないけど。何?お腹すいたの?」
『それ以外ねぇだろ馬鹿』
「そうですか…」
なんて生意気な猫なんだ…。
「てか君首輪してない?飼い猫?なら飼い主にご飯貰ったら?」
『うちの飼い主カリカリしか出してこねぇんだ』
「いや、それが当たり前じゃ…───はぁ、もういいよ、家来る?」
『いいのか!?』
「大したもんねぇけどな」
何故か放っておけなくて、ついそう言ってしまった。
猫と並んで、家まで歩く。
「君の飼い主の名前、なんて言うの?」
『”キヨ”だけど、そんなこと聞いてどうすんの?』
「別にいいだろ。どんな人?」
『うーん、女優好きでうるせぇ』
「ふーん…てかこんな勝手に彷徨いてていいの?」
『さっきから質問攻めだな…別にアイツは俺の事気にかけちゃいねぇよ』
───と、猫が少し寂しそうな顔を見せる。
結構飼い主に対して辛辣だけど、やっぱり好きなのかな。
そうこうしてるうちに家に着き、猫と共に中に入ろうとした時、
「あの!」
背後から声がした。
振り返ると、長身の男が呆れたような、焦っているような表情を浮かべて立っていた。
「えと…その猫、多分うちの子じゃ…?」
「あ…てことは、キヨさんですか?」
おずおずと聞いてきた男にそう言うと、あからさまに驚いた顔をしていた。
「え、なんで名前知っ…まさか…!」
キヨが睨むように猫を見る。
よく分からないが、取り敢えず猫を渡し返す。
「お前、人前で喋るなって言っただろ!?」
『つい…別にいいだろ!』
「良くねぇよ、もし何かあったら…」
『え、まさか俺の事心配してくれてるのか』
「…違ぇよ、俺が面倒臭いんだよ」
───あれは照れ隠し、だろうか。
そう思うと、なんだか微笑ましくて、思わず頬が緩む。
「仲良いなぁ…」
ついポロッと心の声が零れる。
キヨと猫が顔を合わせる。そして今度は俺を見つめてきた。
「あの、もし良かったら、名前とか聞いても…?」
「あ、レトルトです!」
「レトルトさん!」
名前を呼ばれただけなのに、何故かドキッとしてしまう。凄い笑顔だったから、尚更。
よく見たらこの人かっこいいな…って、初対面の人に何考えてんだ俺!てか相手男だろ!
勝手にドキドキして、勝手に恥ずかしくなる。
猫が俺とキヨの顔を交互に見合わせる。
「もしかして、お前キヨのこと───」
猫の言葉を察知して、慌てて口を塞ぐ。
「余計なこと言うな」と、目で伝える。伝わったのか、猫はその言葉の続きを言うことはなかった。
「どうかしました?」
「あいえ、すみません、突然変なこと…」
誤魔化すように笑うと、何故か相手は少し驚いたような顔をしていた。
「……ぃ」
「え?」
「あ、いやなんでもないです!!」
何か言ったような気がしたけど、よく聞こえなかったし、物凄い勢いで訂正されて少しビックリする。
「じゃあ、俺はこれで!失礼しました!」
「え、あ、はい…」
そう言ってキヨは足早に去っていった。
なんか俺、失礼なことしちゃったかな…。
また会えたらな〜、なんて…───
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ky side
やってしまったと頭を抱える。
あの時、あの人───レトルトに笑顔を向けられた時、思わず「可愛い」なんて言っちゃったけど、聞かれたかな…。
「はぁ〜…」
『キヨ、アイツのこと好きなの?』
一緒に歩いていた猫がどストレートに聞いてくる。
「悪いか」
『初対面なのに?』
「…一目惚れ、ってやつだよ」
『ふーん?俺には分かんないや』
「いいよ、分からなくて」
───この感情に整理はまだつかない。けど、恋愛下手な俺でも分かる、これは恋かもしれない。
『そんな落ち込むことねぇだろ』
『(多分あっちも惚れてたし)』
「うるせぇ、分からねぇくせに」
『(てことは二人を会わせた俺はキューピッドってやつ!?)』
急に横から変な笑い声が聞こえてくる。
『おいキヨ!褒めろ!!』
「はぁ?なんだよ急に」
『ったく、恩知らずだなぁ。高級おやつ贈呈しろよ!』
「はぁ…?」
なんなんだコイツ…恩知らずって、一体なんのことやら。
「…また会えないかな…」
『家行きゃいいじゃん』
「ヤベェ奴じゃんそれ」
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続くかもしれない(高確率で続かない)
案外キヨが恋愛下手で逆に照れ屋だったりしたら好きです。
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