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第61話:電波に映る政治
夕方のリビング。
水色のパーカーに短パン姿のまひろは、テーブルの上にヤマホを置いたまま、テレビ画面をじっと見つめていた。
ラベンダー色のブラウスにベージュのスカートを身に着けたミウは、イヤリングを揺らしながら、ふんわり笑顔でソファに座っている。
テレビ画面には濃い緑のスーツを着た大手企業の社長が登場していた。背後には簡素なバーチャル背景が投影されており、現実の建物ではないことがわかる。
「本日より、“未来エネルギー統合法”が施行されます」
社長は低い声でゆっくりと宣言する。
「この法律により、翡翠核エネルギーの分配がより効率的になり、すべての市民が等しく安心を得られます」
画面下部には大きなテロップ。
「協賛社長宣言=政治の動き」
まひろは首をかしげて小声で言った。
「ねぇ……これって、社長さんが政治をしてるの?」
ミウはにっこり笑い、優しく答える。
「え〜♡ そうだよ。大和国では“お偉いさん”や社長さんがテレビで法律を読むの。だから安心できるの」
番組は続き、ナレーションが流れる。
「建物や会議はもう必要ありません。ヒスイネットとヤマホがつながる限り、大和国はここにあるのです」
画面が切り替わり、スーパーの学習映像が流れた。
「スーパー → ニク ヒトツ → カイケイ → ケッサイ → オワリ」
明るい声で「安心の入口と終止符、カナルーンで今日も未来を」と締められる。
まひろは無垢な瞳でヤマホを見つめながら呟いた。
「国って……建物がなくてもあるんだね。テレビで言えば本当にあるんだ」
ミウは笑みを崩さず、まひろの頭を軽く撫でた。
「そうだよ♡ 国はここにあるの。わたしたちの入力と、電波の中にね」
暗い一室。
緑のフーディを羽織ったゼイドが、複数のモニターを前に無言で社長の宣言映像を見ていた。
「社長の言葉で政治が動く……建物も会議も不要。
国とはもう、“映像と入力”にすり替えられた幻想にすぎない」
モニターの中で、市民たちは笑顔でアンズイを唱え続けていた。